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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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無題1
新潮社・刊 舞城王太郎・著
2015年5月30日初版発行

舞城先生、さすがです・・・!
心理描写の細やかな青春系純文学であり、人間にとって悪とはなにかを考察する哲学の書であり、ぞっとするホラーであり、謎を解くミステリでもあり、そんなくくりでは表現できない舞城ワールド全開の本でもある。
「ディスコ探偵水曜日」こそが舞城先生の畢生の大作、代表作かと思っていましたが、この「淵の王」は見た目こそ軽やかだけど、読んだあとの充足感・満足感ではひけを取りません。一見ホラー系ミステリに思えて取っ付きが良く、しかも読みだしたら止まらない面白本です。舞城王太郎の新たな代表作と言っていいかも。
グロ要素もバカミス要素もないので、今までの舞城と比べると格段に、誰が読んでも読みやすいし、底知れぬ恐ろしさは読む人を虜にします。

3編の中編からなる連作集。
「さおり」「果歩」「悟堂」という3人の若い男女の成長を、一人称でも三人称でもなく、主人公のそばにいる不思議な意識体(最初、彼ら彼女らの「魂」なのかと思いましたが違う模様)の言葉で語っていくのですが、そもそもこの意識体の正体が謎。霊魂?
で、最後まで読んでも結局これが何なのか分からないのですが、あまりそれは気になりません。
謎と言えば、主人公たちの周囲に時としてあらわれる真っ黒い穴も、結局何なのかは不明です。
しかし、この暗闇の穴はおそろしく邪悪なイメージを発散しており、村上春樹の小説にも良く出てくる絶対悪の存在や、ル・グインの「ゲド戦記」における「影」をも思い起こさせ、何か人間の原罪とでもいったようなものに繋がっている、存在の根源にかかわる「何か」です。

3人の主人公たちはそれぞれ、懸命に生きているのですが、黒い穴にかかわる邪悪な力が、彼らの生を妨害してくる。
具体的には、サイコパスじみた人物に友人を奪われたり、仕事の上での霊障だったり、猟奇殺人に巻き込まれたり。
そのすべてに、何とも不気味な化け物やもののけたちが関わっている気配がある。
舞城先生の、普段の日常に突然、この世ならぬものが割り込んでくるときの描写は「短編五亡線」所収の「あうだうだう」あたりからよく見かるようになりましたが、本当に、ゾッと鳥肌が立つほど恐ろしいです。

そしてこの本は、3人の主人公それぞれが、将来の夢や地元の友人たちとの人間関係に悩みながら、精一杯に人として誠実にありたいと思う姿が描かれていて、ただそれだけを読んでも感動的です。理不尽な不幸に見舞われる主人公もいますが、後味が悪くないのは、それぞれが自分に正直に、力の限り生きたということがストレートに伝わってくるからだと思います。

それにしても・・・。
第一話の「中島さおり」の章に出てくる、メンヘラだかサイコパスだか分からない美季という女の子が怖い。
「可哀想な自分」「被害者の自分」をさりげなくアピールして、友人の心の優しさに付け込んで、結果その友人を精神的に支配してしまうような・・・。
読んでいて、なぜか尼崎連続変死事件を思い出しました。どうして、そんな変な女に洗脳されてしまうの? という疑問がね・・・。一歩離れたところからだと言えるんだけど、当事者になってしまうと、自分が洗脳されていることにすら気づけないんだろうね・・・。
でもって、この「被害者である可哀想な自分」をアピールして、周囲の、関わった人をみんなクズ人間にしてしまう恐るべき腐れっぷり、こんな人物像を想像・創造できるということは、舞城先生の御親戚とか近しい人とかに、このようなタイプの人間、敢えて言えばそのような血筋の人がいるのかなあ・・・と思ったり。
だとしても、それをこのような面白い小説に仕立ててしまえる舞城先生には、ますますもって尊敬の念が湧くのみ、なんですけどね。

第3章「中村悟堂」の悟堂くんが、心の広さや優しさと同時に、男性ならではの馬鹿っぽさも持ち合わせていて実に魅力的。
この人の章が最後にあるおかげで、本全体の印象が爽やかなのかな? よく考えるととんでもなく陰惨な本なのですが(笑)
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ウルトラジャンプ 2014年 11月号 [雑誌]ウルトラジャンプ 2014年 11月号 [雑誌]
(2014/10/18)
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ウルトラジャンプ11月号を買ったらなんと・・・!
(この表紙がフミホだか松カゲだか分からない。っていうか最初はホサだと思ったw)

バイトリ
付録で、舞城王太郎の「バイオーグ・トリニティ」の小説版の文庫本がついてキター!
160pと薄い本ですが奥付もちゃんとあり、それなりに装丁もきちんとしていて、本屋さんに置いてあっても違和感ありません。すごい得した気分♪
ウルジャン2月号に掲載されていた「呼ぶ声日子」と、書下ろしの「箱運ぶ鳥」の2編がおさめられています。2編の短編というよりは、一つの話を上下に分けたような、連作です。

さて、内容は・・・。
本編のコミックス版「バイオーグ・トリニティ」は調布を舞台にした近未来パンクSFですが、この小説版は、ご存知、福井県西暁町を舞台にした、モロ舞城ワールドの話です。
毛色としては、「山ん中の獅見朋成雄」とか、「短編五芒星」に収録されていた「あうだうだう」とかの、異世界もののけ譚。
コミックス版の主役たち、藤井やフミホなどは全く登場しません。

16歳の秀夫の両親が、突然離婚することになり、秀夫は伯父の家で暮らすことになる。
両親はもともと仲が良くなかったが、母親が秀夫を妊娠したために結婚し、そして秀夫がいたために今まで離婚せずに暮らしてきていたのだった。
周囲の世界が激変するのと時を同じくして、秀夫の両手に穴があき、秀夫はバグラーとなるが、普通の田舎の高校生である秀夫には、その穴で何を吸い込むべきなのかも分からない。
心の整理がつかない秀夫は、あてもなく山に入り、ぶらぶらしているうちに神の結界の中に足を踏み入れてしまい、神さまやもののけたちの世界へと入っていく・・・

「親の離婚」という、16歳の少年にとってはまさに、世界がひっくり返るような出来事を境に、普通の日常とはまったく違う世界に入っていく感じが相変わらず舞城っぽくてすごく良いです。
バグ穴は、あんまり使われていなくて、バイトリ番外編というよりは、普通の西暁モノという感じ。
歪んだ世界と自分を取り戻すために奮闘する秀夫は、やがて新しい世界と新しい自分を得ることになる。バグ穴の力やもののけたちの力で、時間や空間がグシャグシャ乱れる、舞城展開もありますが、全体としては16歳の少年が両親の離婚を機に、自分でものを考え、自分で行動する大人に成長していく姿を描いたジュブナイル小説です。

個人的には、秀夫が山で結界に入ってしまう時の描写が好き。
携帯に向かって意識せずに「もう出たわ」と言ってしまったり、縄がいきなり上空に登っていったりする所。
「あうだうだう」も、夜の道であうだうだうに突然出会ってしまう場面がすごく怖かったんですが、こういう、人間が神さまやもののけたちの領域に入るときの描写が毎回すごく良いです。

九十九十九 (講談社文庫)九十九十九 (講談社文庫)
(2007/01/12)
舞城 王太郎

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舞城ファンになりたての頃、読もうとして冒頭からエログロ度の激しさに圧倒され、「これは無理だわ」と断念していた本。
あれから数年、「ディスコ探偵水曜日」や「ジョージ・ジョースター」を経験してきた今なら読めるんじゃないか? っていうより、そうだ! 舞城先生の未読の本がまだあったんじゃないかああ勿体ない勿体ない、と思いついて急いで読んでみました~!

美しさのあまり、生まれ落ちた瞬間から、その顔を見た人が全員気を失ってしまうという、超絶美貌名探偵、九十九十九(ツクモジューク)。
もともと、清涼院流水のミステリシリーズ「JDCシリーズ」に登場するキャラクターだそうです。清涼院流水の本は未読だったのですが、こんなキャラがぞくぞく登場するんならちょっと面白そう。
ちなみに、西尾維新先生の「ダブルダウン勘繰郎」のシリーズもJDOの二次創作(JDCトリビュート、と言うらしい)だそうで、ますます興味を引かれました。
九十九十九は、最近では「ジョージ・ジョースター」に登場したおかげですっかり有名になりましたが、もともと清涼院流水のキャラだったことを考えると、それを更に荒木先生のジョジョワールドにブチ込む舞城先生の荒業にはほとほと感服します。

(この先ややネタばれ気味)
さて、「ジョージ・ジョースター」の九十九十九(以下、「ツクモ」と略)は割と普通の美少年探偵でしたが、この本のツクモはあまりの美貌ゆえに産院にて殺されそうになる所を看護婦によって拉致され虐待され(グロい)、外に出してもらえず田舎屋の地下室に閉じ込められ、そこで美貌の双子兄妹(セシルとセリカ)の性的玩具になる(エロい)、という・・・
最初の30ページくらいでこの勢いですからね、耐性の無かった過去の私が本を閉じてしまったのも無理はありませんでした。
しかし今は何の抵抗もなく読めちゃうんだなこれが(笑) 人間、歳をとるのも悪くはない、って事ですね(笑)
さて、ある殺人事件をきっかけに地下室を出たツクモは、明晰な頭脳を生かしその事件を名探偵的に解決してしまう。そして自分を追い続ける元看護婦の手を逃れるために調布に移り住み、女の子の部屋で暮らすようになる。そんな中、「幻影城」と呼ばれる建物の内部で、奇妙な連続殺人事件が始まる。そしてツクモの元には、作家である清涼院流水から、「第一話」「第二話」「第三話」・・・とタイトルのついた原稿が(いろんな方法で)送られてくる。それらは、この本のツクモのことを描いた原稿。
つまり、第三話のツクモ(栄美子という女の子と暮らしている)が読んでいるのは第二話で、第二話(泉と梓とネコという三人の女の子と暮らしている)のツクモが読んでいるのは第一話(産院で生まれてから事件をきっかけに田舎町を出る所までが描かれている)、といった具合。全部で七話あります。
本の中の本の中の本の中の・・・、という具合に、この調子で現実を否定し続けメタにメタを重ねて、もう途中から何が何やら、です。
私は意味が分からなくても気にならないタイプの読者なのですが、キチッとしてなきゃ嫌だ、という人には辛いかも(笑)
この、現実がグシャグシャしていく感じはやはりストレートな初期作品の中では異色で、「ディスコ探偵」や「ジョージ・ジョースター」に近いです。「ジョージ・ジョースター」に、荒木先生の世界に対する全力の尊敬と、愛ゆえの世界の破壊(と再構築)が感じられるように、この本もおそらく清涼院流水の世界の破壊と再構築を目論んでいるのではないでしょうか。未読なのでわかんないんですけど。
そして清涼院流水へのリスペクトから書かれているわりに、当人の扱いがヒドイ(笑)
「この清涼院流水。マジで死んで欲しいの。」なんて言われちゃったり(笑)
キリスト像の代わりに磔刑になってたり(笑)

そして幾重にもかさなった作中作中作・・・の中で繰り返し語られるのは、ツクモが得た恋人と、彼女との間にできた三つ子の男の子への愛、そしてささやかだけれど安らぎに満ちた生活の幸福。
それらがすべて、メタメタメタに否定されていく時、僕(ツクモ)とは一体何者なのか。

ストーリー的には、申し訳ないくらいまったく分からなかったし附いて行けなかったのですが、エロやグロと同じテンションと分量で語られる、そんな舞城ワールドの「愛」が切なくて、他の誰の本でも得られない「舞城だ~!」という深い満足と共に読み終えることができました。
いろんな意味で過剰な本ですが、結局のところ、若い「僕」の、「自分」をめぐる物語なのかなあ、と。

あと、清涼院へのリスペクトなのか、頻出するミステリ的な「見立て」が可笑しい。
聖書の見立てはおそらくテーマに直結してるんだろうけど意味がわからなくてスミマセン。
笑ったのは、「公園のトイレが綺麗だから<御手洗潔>」という見立て。「杉の木のちょっと上を走りえた。<木>の<一寸><上>だから村上(春樹)」とか(笑)
全編、そういう言葉遊びというか無理やりな見立てに満ちていて、バカミスとして読んでも楽しさ満点です!

多分、私にはこの本の成分の30%くらいしか味わえていないんだろうけど、それでも好きだからこんな感想で勘弁してください(苦笑)

キミトピアキミトピア
(2013/01/31)
舞城 王太郎

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「ジョージ・ジョースター」以来の舞城王太郎の新刊本。
このタイトルは英語表記すると「YOUTOPIA」になる、という事からも分かるように、「好き好き大好き超愛してる」の系列(?)につらなる、好きだという気持ちとか、恋愛とか結婚とか、人と人が互いに分かり合うとか、そんな、非常に狭い意味での心理小説ばかり集めた短編集です。でも、「キミトピア」という言葉から連想されるような、甘い幸せな恋愛模様はこの本にはありません。全部で7編の短編が収められていますが、厳しさや険しさがあって、正直、読み進むのが苦しいです。恋愛も結婚も、継続していくのって実はシビア・・・。
でも、舞城先生のあの文章(特に会話文!)の上手さと、「今までちゃんと考えた事はなかったけど、ここで言われているのはたぶん本当のことだ。誰も言葉にしなかっただけだ。凄い。何でこんな事に気付く事ができるんだろう」という驚きとで、グイグイ読まされてしまいます。印象としては、「短編五芒星」に収録されていた、「美しい馬の地」や「バーベル・ザ・バーバリアン」がもっとヘヴィになったような感じ。 
優しさって何だろう、他人を思いやるとは、自分らしく生きるとは、真剣に生きるとは!
・・・そんな、びっくりするほどストレートで重く青臭い問いかけがどの短編にも漲っていて、舞城先生にとって書くことは生きる事であり生きることは自分に問い続けることなのだと思わずにはいられませんでした。
読んでいて、「自分はここまで物事や他人に真剣になったことがないし、この先もなれないで適当に生きていくんだろうな」と思わずにいられませんでした。それは、「ちゃんと生きていない」という事なのですが・・・。
どの話も面白く、そして重い(笑)のですが、身体の一部が麻痺する病気の女の子と、その友達の男の子が、一緒に成長してそして、・・・というジュブナイル小説っぽい爽やかさに似た何か(「爽やか」じゃないんですよ残念ながらw)が感じられる「添木添太郎」が一番好きです。 

必読!・・・とは言いませんが、舞城先生の一つの極点、という気がしますし、何か色々、自分についても他人についても気づかされる事が多いと思います。

それにしても、こんなのを読むと「ジョージ・ジョースター」がいかに楽しんで書かれたものかが良くわかります。まあ、あれはあれで大きいデーマを持っているとは思うけど。
何かを書きだすと必ず真剣になっちゃうのは舞城先生の悪い癖と言ってもいいかもしんない(笑)
「好き好き大好き~」のアダムとイブの話みたいな、異世界SFみたいなのをもっと無責任な感じで書いてくれないかな? 日常的な話ばかり書きたがるけど、舞城先生のイメージ喚起力は半端ないからなあ。
でなきゃ何かのノベライズ。ジョジョはもうやりつくしちゃってるだろうから、映画「スパイダーマン」とかどうでしょう(サム・ライミ版のあの切ない青春物語を、舞城語りで読んでみたい気がする)。

あと、この本の舞台の多くが東京の調布なのですが、舞城先生といえば福井県西暁町だったのに(笑)、ご自身、お引越しなさったんでしょうかね?


今年も押し迫ってまいりました。
大掃除も年賀状も、まったく手を付けていません(T.T)

それはそれとして、今年もいろいろ面白い本や映画がありました。
イザク的に「今年の一冊」は・・・舞城王太郎の「ジョージ・ジョースター」に決定!
円城塔の「屍者の帝国」とどちらを取るか迷いましたが(そして奥泉光「黄色い水着の謎」も捨てがたいw)、円城作品としては個人的に「バナナ剥きには最適の日々」みたいなお笑い系の方が好きなのよね・・・。
なので円城さんには、代わりに今年の「友情大賞」を授与します・・・え? いらない? ア、ソウ・・・

「ジョージ・ジョースター」に関しては、9月に発刊になってすぐ読んだ時には、正直あまりの内容についていけず、やや過小評価していたように思います。先日、読み返してみたんですけど、内容のハチャメチャさに対する覚悟が出来ていたせいか、破天荒な展開や登場キャラの多彩さも、1度目よりずっと単純に楽しめたし、ストレートに作者の思いが伝わってくる感じがしました。

【以下はネタバレ気味・ご注意】
再読してみて、この本のテーマって結局、
「君もジョジョになれる」
って事じゃないかと思いました。
波紋やスタンドが使えなくたって、ジョースター家の血筋じゃなくたって、ジョジョとして邪悪なものたちと戦い、世界を救うことができるんだよ、と。
物語の最後、日本人少年ジョージが自分の名前の漢字表記を考える時に、「城」の字を使おうとするのも、舞城先生ご自身が「俺だってジョジョになりたいんだ/なれるんだ」と言っているように思えます。

二人の主人公、ジョージ・ジョースター。
かたやジョナサンの息子でありながら、何の特殊能力もない気の弱い少年。
かたやジョースター家に養子として入っただけの、福井県西暁町の日本人少年。
ディオやカーズをはじめ、超スタンド使いたちに立ち向かう二人のジョージが持っているものは、知恵と勇気、そして自分を信じる心(ビヨンド、と言い換えてもいい)のみ。
二人のジョージはよく、筋道が通っている、というような言い方をしますが、自分で考え自分で納得することで、彼らは自分に信念を持つことができるのですね。
自分で納得するまで考えるという事なら、能力も血筋も関係なく、本当に誰にだって出来る事。
納得できれば、自分のすべきことにストーリーが生まれる。それってビヨンドが後ろに立つ、って事ですよね。
舞城先生は若い読者に向けて、「自分の人生の主役になれ」と熱く語りかけているんだなあ、と思ってなんかじーんと来ちゃいました。

しかし!
読んでる間はそんな「深イイ話」では全然ない、って所がまた凄いわけでw
正直、キューブハウスの構造とか後半の時間の進み方ネタとか、再読してもまったくわかりません(T.T)
むしろ、「よくこんなバカバカしい事を考えつくなあ・・・」という、そういう感心の仕方ですw
あと、たくさんのキャラが登場して、それがみんな、原作とはちょっと違った手触りを持っているといいますか、新しい側面を見せているのがとても面白いです。これは、原作のジョジョの世界にはいない、名探偵ジョジョという新しいキャラクターの眼を通して見て、その印象を語っているためだと思います。
例えば、名探偵ジョジョが友人の惨殺写真を見ている時の表情を、露伴が横から覗きこむように観察していて、ジョジョが「きっと悪気はないんだろう。自分の動作や表情の露骨さに本人が気付いていないだけだ。(中略)露伴が悪気がないタイプの変な奴ってことだけははっきり判った」と思う場面があります。
たたた確かに! 露伴ってそういう奴だよな、文字にするとそういう奴だよな、ってすごく納得できちゃいますよね。
あと、ジョルノ・ジョバーナ&5部の悲しみの原点って、そもそもジョルノがディオの息子だからなんだなあ、という当たり前の事に気付かされたり。
好き勝手やっているようでいて、原作のキャラを掘り下げてはいても、変えてはいないですよね。そう、カーズ先輩以外は・・・(笑)
ラスト、あやうく名探偵ジョジョの臍から「ぴょーん」って言って出てきちゃうとこだったしねw

あと特筆すべきはDV、家庭内虐待ともいうべきテーマです。
舞城先生はデビュー作「煙か土か食い物」の時から父親の暴力を凄まじい迫力で描いていて、作品すべてに通底するテーマっぽいのですが、「ジョージ・ジョースター」の中でも繰り返しDVが出てきます。
棺桶に乗って漂流するエレナをとことん蹂躙する首だけディオの、ネチネチしたマインドコントロールっぽい怖さ。
いじめっ子のアントニオ少年も母親からどんでもない虐待をうけていたし、そんな繰り返される苦痛から生まれる「ウウンド」という特殊能力も発現してしまうわけだし。
「〇〇〇ド」という名の能力が出てくるのはもちろんスタンドとの語呂合わせでしょうが、ビヨンドは持ちたいけどウウンドは持ちたくないな・・・。

時間も空間もよじれまくった世界を縦横無尽にかけめぐる二人のジョージの活躍を改めて読み返し、超ド派手な特大花火のような絢爛豪華な世界をジョジョという素材から作り上げた舞城先生の剛腕に改めて感服し、正直、芥川賞候補作「短編五芒星」よりも数倍の読み応えがあるこの本を、イザク的に本年度のベスト1といたします。パチパチパチ・・・

はい、ここ数日、ちょっと舞城の「ジョージ・ジョースター」廃人となっていました。
気になるんですよ、他人がアノ本をどう読んでいるのかが!
で、あちこち感想を探して読みまくってたんですけどやっぱ予想通りというか、絶賛派と罵倒派、見事に二つに割れました。特にアマゾンのレビュー、星5つの評価基準なのに、星ひとつ★しかないレビュー(「酷過ぎる」とか「期待外れ」とか)と、星4つまたは5つ★★★★~★★★★★の高評価のレビューが半々で、星2つや3つをつけてる人がまったくいないのには笑ったww
【追記:↑は9/18時点。その後、酷評のほうがやや増えている模様】
好きか嫌いか、読む人をこんなに選ぶ本も近来珍しい。

私は評価の点数を付けるのが好きではないので、満点以外の時は星いくつ、という言い方はしないのですが、今回の「ジョージ・ジョースター」にあえて点数をつけるとすれば、★★★かなあ・・・。
まず、私が舞城先生大好きで、作品すべてが文体テーマ構成力、他の作家より傑出していると思っているので、基本的に★★★★。
でもこの本は、舞城作品としてはそこまで出来が良いわけではない、という意味でマイナス1。
(力技ではあると思いますが。でも、私は舞城作品では時々、雷に打たれるように感動してしまうので・・・。今回はそこまでじゃなかった、ってことでやや辛口になってます)
しかしジョジョファンとして、「この人も出ちゃうの!?」「この展開アリ!?」と、枠を取っ払ったお祭り騒ぎのワクワクと楽しさを味あわせてもらった事は大いに評価したいのでプラス1。
そして最後に、裏表紙と口絵に自分の描いた絵を載せるのはやはりマイナス1。

VS本と銘打ってあるからには、文章のみで勝負すべきだし、自分のキャラを自分で描きたい人の為にピクシブとか同人誌とかがあるのですよ。それ以前に、表紙と裏表紙で画家が統一されてないとか、単純に本をモノとして見た時まとまりがなくて美しくない。個人的にはこの本に対する最大の不満点ですね。装丁は綺麗じゃないと嫌なんです。電子書籍のこの時代、本を購入して所有するヨロコビってものを、もっと大切にしてもらいたい。どなたかのレビューでも、「誰か止める人いなかったの?」と書かれていましたが、もっともだと思います。
舞城先生のイラスト自体は、「世界は密室でできている」や「好き好き大好き超愛してる」の時はむしろ文章を引き立てて効果的だったと思うので、やはりコラボ本では文章に徹すべきだった、って事ですね。

ところで、「舞城承太郎」というのがもはや口癖になってしまい困っているのですが、もう一人、いましたよ名前をちょっと変えるだけでジョジョっぽくなる作家さんが!
そう、我らが円城塔!(笑)
TをJに変えるだけで円JOJOですよ!
あ~、読みたい円城先生のジョジョが読みたい(笑)
「ジョースターさんのこと」ってタイトルでどうでしょう(笑)
「何よりもまず、名前がJではじまる人々に。ジョースター(5)はジョースター(16)よりも水色がかっているというのは俗説であるが、ジョースター(31)のスタンド能力が、『箱を開けて猫を死なす』能力であることは既に証明済みである」
みたいな・・・駄目だ、またピュアな荒木ファンのお怒りを買っちまいそうw

舞城先生スゲエ・・・
もう、それしか言う言葉がないよ・・・

この、奇想天外で破天荒な本を一言で言い表すことなどできませんが、ただ、荒木先生のファンは読む前に少し覚悟を固めておく方が良さそうですね。
ジョジョのノベライズ本というよりは、完全に、「ジョジョの世界と人物を借りた舞城作品」ですよこれは。
私は舞城先生のファンでもあるので、
「うっわ~、またこんなハチャメチャを(嬉)!! 元気だなー舞城先生!!」
って思って喜んだのですが、純粋にジョジョが大好きで舞城作品を読むのが初めて、って人はどうなの? この破壊的な文脈に、付いて行けるの?
っていうか舞城先生、
「こんなの書いたら荒木先生および熱狂的ファンに何を言われるか・・・」
とか露ほども考えてないのね(笑)
保身に走らずやりたい放題なのが凄すぎる。

そもそもしょっぱなから「九十九十九(つくもじゅうく。舞城作品に登場する名探偵)」とか「西暁町(福井県にある、多くの舞城作品の舞台となる町)」とか出てくるし。パラレルワールド的な設定もあるので、ジョージ・ジョースターの話のはずなのに、プッチ神父やらヴァレンタイン大統領まで出てきちゃうし。露伴だのブチャラティだの、ジョジョシリーズの人気キャラと、舞城ワールドの住人たちが平然と会話を交わしていたりして、なんかもう本当にやりたい放題。
かと言って、原作を無視して自分の世界にねじ曲げちゃってるのかと言うと決してそんな事はなく、むしろ、原作の1部から7部までの壮大な謎を、いったん解きほぐした後で更に壮大に編み上げ直し、再編するような、世界を作り直すような、原作へのリスペクトにあふれた上でなおかつそれを超えんと試みるような、そんな無謀とさえ言えるような舞城先生の捨て身(?)の勇気にほとんど感動すらおぼえてしまいます。

ここから先はネタバレするので「続きを読む」で。

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