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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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津原泰水・著
幻冬舎・発刊

待ちに待った津原先生の新刊は、なんとも心躍る天才引きこもりたちのクライムノベル。
いや、クライム(犯罪)っていうほどの犯罪じゃないけど、なんかこう、仲間たちと組んで世の中を裏側からひっくり返すみたいな痛快感は、例えば伊坂幸太郎の「陽気なギャングが地球を回す」に共通する感じで、読んでいて楽しいんです。
しかも、この本の登場人物の多くは最初引きこもりなのですが、セラピストを名乗るJJに上手く乗せられて与えられたミッションをこなすうち、少しずつ、お互いにも社会にも心を開き、自分を肯定する強さを身につけていく。そこらへんのさじ加減というのがまた、津原先生ならではの繊細さで、甘すぎず、押しつけがましくもなく、けれどもしっかりと手を引っ張ってくれる感じ。
私は引きこもりになった経験が無いのですが、もし自分が10代のころ引きこもりになって、親とさえろくに喋らなく、こんなJJみたいなセラピストが現れたら部屋に入れて色々と話をしてしまうだろうな、という気がします。
JJは胡散臭い男なのですが、「正しい」ことを押し付けず、しかも情熱的。腫れ物にさわるような気の使い方はしないけど、そのぶん、ちゃんと相手を見てくれているんです。

JJが声をかけた4人のヒッキー(引きこもり)たち。
音声担当の少年、洋佑(コードネームはタイム)。
美術担当の美少女、芹香(パセリ)。
中年ハッカー、聖司(セージ)。
年齢性別不詳、コンピュータウィザードのロックスミス(ローズマリー)。
4人のコードネームはもちろん、サイモン&ガーファンクルの往年の名曲、「スカボロフェアー」より付けられたもの。昭和に青春を過ごした人になら、すぐにピンとくるネーミングですw
JJはまずこの4人に、「不気味の谷を越えた美女を創ろう」と持ちかける。
興味を惹かれた4人が、それぞれの得意分野を活かしてネット上で意見を出し合い、「アゲハ」という名の美女を完成させネットに流す。アゲハはたちまち話題となり、JJは次のミッション「未確認生物UMAを創る」を4人に与える。
その影で「ジェリーフィッシュ」と言う名のもう一人のコンピュータウィザードがJJたちのプロジェクトに侵入してデータを盗み、ウイルスソフトとしてばらまいてしまう・・・。

JJの真意がどこにあるのか、分からないままにそれぞれの意地やプライドをくすぐられて、少しずつ乗り気になっていくヒッキーたちの心理が丁寧に描かれていて、青春小説としても読めてしまいます。
津原先生の小説の登場人物たちはいつも心優しくて繊細で、そのぶん、傷つきやすくて心の病気を抱えていたりもするのですが、おそらく津原先生ご自身が、そんな、繊細な心をお持ちなのでしょう。そしてその繊細さが、弱弱しさというよりは鋭い刃物やカットされた宝石のように光り輝くので、津原先生の小説に出てくる人物(特に男性)は常に魅力的なのですよ!
同じく津原先生の、「たまさか人形堂物語」に出てくる人形師たちは別に引きこもりじゃなかったけれど、それぞれ違った魅力と繊細さを持っていたのを思い出しました。
ガサツで押し出しの強い、無神経な俺様たちの世の中に疲れたら、津原先生の世界で癒されましょう!

最後の方で明らかになる、ジェリーフィッシュの正体やJJの本当の目的など、見かけの派手さ(装丁もかなり派手)のわりに、最後まで心優しく後味の良い小説でした。とにかく、登場人物がいい人ばかりなので、みんな幸せになって欲しいと願わずにいられません。

ただこの本に出てくるヒッキー達、みなさん何らかの才能を持っているのよね・・・。
最後まで正体不明、コンピュータの向こう側にしかいないロックスミス(最後の方で「キャプテン・フューチャー」の箱男、サイモン博士みたいになって出てきたのにはワロタw)はともかく、本当に引きこもりで苦しんでいる人って、自分には何のとりえもないと思いこんでいるから苦しいのかと思っていたのだけど・・・。
この本に出てくるように、ある種の才能を持っているがゆえに、そこに他人が侵入してくることに耐えられなくて引きこもってしまう人もけっこう割合としては多いのかな。
インターネットという便利な道具を使って、ヒッキーたちが引きこもったままで世の中を動かしていく、愉快痛快な本なのですが、ついつい、
「これ読んで、『自分には何の才能もないし・・・』って、更に落ち込む引きこもりがいるんじゃないか」
と、ちょっと心配になってしまいました。
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たまさか人形堂それからたまさか人形堂それから
(2013/05/24)
津原 泰水

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津原泰水先生の「たまさか人形堂物語」に、まさかの続編が。
でも考えてみたら、「たまさか人形堂物語」は魅力的な登場人物が集まって、紹介が済んで舞台が整った時点で終わっているわけで、彼らの人生はまだまだ続くし、いくらでも続編は書けるわけです。
わぁい嬉しいな~!

たまさか人形堂物語たまさか人形堂物語
(2009/01)
津原 泰水

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「たまさか人形堂」は、アラサーの元OLの澪さんが祖父母から受け継いだ人形店に、なぜか一癖も二癖もある人形師たちが集まってしまい、さまざまな事件(?)が起こる、ちょっと幻想・ちょっとミステリ・ちょっと恋愛、な連作集。どの短編にも、人形へのこだわりと愛があふれています。
特筆すべきは、登場する3人の人形師がみんないい男なこと。ちなみに津原先生の登場人物は、基本的に全員が上品です。

①ワケあり職人の師村さん。
寡黙で枯れた中年男性。だが凄腕。実写化するなら、堤真一に演じて欲しい。
②毒舌天才青年の冨永くん。
しかも美男子、お金持ち。そして精神的には脆い。実写化するなら、三浦春馬。
③気難しい鬼才、束前。
才能とこだわりとプライドを持ち、常に不機嫌だが時折少年のように笑う。卑怯だろそれ。個人的に、一番惚れています。実写化するなら、お笑いコンビ、ロッチの中岡さん(向かって右の、長髪メガネの方)しか思いつきません!

この、三人三様に才能があり、魅力的ないい男たちに囲まれて奮闘しているのが店主の澪さんで、不器用でそそっかしい所もありますが、やはりいい男たちを惹きつけるだけあって、心配りが細やかなんですよね。
そして束前にはちょっと心を奪われているのですがその自覚がなく、ツンデレな言動を繰り返していて読んでる方が赤面しちゃいます。ある意味、アラサーの夢小説ですよコレ・・・。
実写化するなら・・・綾瀬はるかじゃ若すぎるかなあ・・・?

続編ではありますが、人物や背景は一通り説明されているので、この本から読んでもOKです。
「香山リカと申します」という短編は、女の子なら誰でも思い入れのある、リカちゃん人形についての話。
人形を最後まで大切にする人って、いいなあ。映画「トイ・ストーリー2」を見て泣いた人にもオススメ。今、私の手元に子供のころ持っていたリカちゃんがあれば、すごく大事にしてあげられるのに、と思うと切ないです(T.T)
画廊の創作人形(?)を壊したのは誰か、という、ちょっとしたミステリにもなっています。
「髪が伸びる」は、古い市松人形の話ですが怖い話ではないです。おばあちゃん想いの若いバンドマンがまた、可愛い男ですww
ラストは泣けます。
「小田巻姫」は3人の男と澪さんが作戦を立てて、悪徳ブローカーを懲らしめる痛快な話。冨永くんが自分の才能に疑問を持ち、スランプに陥ってしまう話でもあります。
「ピロシキ日和」冨永くんを理解しようとする澪さん。頑張って作ったピロシキが、皆の心を溶かす。澪さんと束前との心の距離が、少し縮まる話でもあります。

とにかく津原先生の文章が上手くて綺麗で、美味しい水を沸かして淹れた、香りの良いお茶のよう。
何の抵抗もなくすいすいと読めて、いつまでも読み続けていたくなります。
登場人物がみな良い人なのも心地よく、小粋な会話も楽しく、人形への偏愛もいとおしい。

伯爵と猿渡の会話が楽しかった連作幻想小説、幽明志怪シリーズが終わってしまってとても残念だったのですが、たまさか人形堂の面々にまた会えるとは思っていなかったのですごく嬉しいです。しかもこの本、まだ続きがある終わり方なので、「たまさか人形堂その後」とか「たまさか人形堂今回は」とか、今後も続いていきそうです。楽しみがまた一つ、増えました。

バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)
(2012/01/25)
津原 泰水

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こちらは早川書房から。あの傑作「バレエ・メカニック」が文庫化されました(っていうか、されてたのを知らず、最近大きな本屋さんで発見して大喜びで買い求めましたw)。

この本は、幻想小説なのですが最後の方はいきなりサイバーSFになって、読んでてビックリします。
そして、硬派のBL小説としての側面がけっこう色濃いのも見逃せません。なにしろ、主要登場人物3人(木根原、龍神、トキオ)が全員、ゲイ(バイ)もしくは性倒錯者(笑)。
医師の龍神が少年時代、姉の葬儀に参列した時の文章をちょっと引用させてもらいます。

 義兄の礼服は少年の身を真っ当に包んで温めることなく、脱ぎきれずにいる不快な皮のようにいたずらに風を孕んだ。その感触は、虐待という意識もなしに日常的に絡みついてくる、義兄の手や、吐息や、言葉そのもののようであり、これならば裸で立ち尽くしているほうがまだしも人間的だという気がした。

ね? ね? 素敵でしょww 美しいでしょww
でもこの本でもっと素敵で美しいのは、夢幻都市と化した東京の姿そのもの。
そして津原先生の容赦ないまでの華麗なる文体。

アル中気味の天才芸術家、「君」(木根原)と女装の医師、「私」(龍神)。
「君は、」「君は、」と語りが進む、二人称の小説であるという事も目新しく、この二人が巨馬ゴーストの曳く馬車に乗って、変容した東京の街(モーツァルトの音楽が響きわたり、上空には7本脚の巨大な蜘蛛の姿があり、空中には鮮やかな熱帯魚が泳ぎ遠近が狂った、シュールレアリストの白昼夢のような街)を行くシーンが、この小説の白眉です。
木根原は娘の理沙を、龍神は姉の金糸雀(カナリア)を、心から愛していて、その対象への強い思いが、この小説を前へ前へと進めています。
木根原は娘に、龍神は姉に、会えるのか。それは読んでのお楽しみですが、最後、巨馬ゴーストの馬車が迎えに来るシーンは胸に迫ります。
あと、外起夫(トキオ)くんがすごくいい子で、暗澹とした作品世界に爽やかさや救いがあるとしたら、トキオのおかげだと思います。

とにかく一読して、「スゲエ。傑作だ」と感じる本なのですが、どこが良いのかと聞かれると「文章が上手い」以外の感想を思いつかず、もどかしい思いをする本でもあります。
誰が読んでも面白い本、というわけでもないと思うのですが、少なくとも幻想小説やダーク・ファンタジーが好きな方には絶対のオススメ本です。

猫ノ眼時計 (幽明志怪)猫ノ眼時計 (幽明志怪)
(2012/07/10)
津原 泰水

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私は津原泰水先生が大好きですが、中でも一番好きなのが猿渡と伯爵のシリーズ(幽明志怪、というシリーズ名らしい)。この「猫の目時計」はこの夏出たばかりのシリーズ最新刊にして、最終巻です。
シリーズ一作目の「蘆屋家の崩壊」は、「11(イレブン)」の感想でも書きましたが、本当に傑作中の傑作。
蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)蘆屋家の崩壊 (ちくま文庫)
(2012/07/10)
津原 泰水

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この夏、ちくま文庫より新たな文庫版が出ました。
シリーズ2冊目、「ピカルディの薔薇」も同じくちくま文庫より出版。

ピカルディの薔薇 (ちくま文庫)ピカルディの薔薇 (ちくま文庫)
(2012/07/10)
津原 泰水

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とにかく読むと、猿渡のことも伯爵のことも大好きになってしまうので、こうしてシリーズが書き継がれていて新刊が出たりすると、本当に嬉しいです。

そしてまた嬉しいのが、二人が相変わらずお豆腐大好きなところ。今回は、鳥取名物「豆腐竹輪」を食べるシーンが可愛くって可笑しいので、ちょっと会話を引用しますww

「伯爵、これは」
 そう見返しただけで彼には通じた。彼は二本目の袋を剥きながら、
「飽きない味ですね」
「ということは、応用も利く」
「鍋物は勿論のこと・・・・・・たとえば天麩羅」
「天丼さえ。そうですよ伯爵、白身魚に可能な料理ならなんでも可能なんだ」
(中略)
「とりあえず山葵が欲しいですね。ちゃんと鮫皮でおろした」
 背筋がぞくりとした。やはり伯爵の感性は鋭い。


・・・この、上品でしかも馬鹿馬鹿しい男二人の会話ねww大好きですww
ってかめちゃくちゃ豆腐竹輪が食べてみたくなりますwww

今回の本も連作短編集ですが、私は「玉響(たまゆら)」が一番好きでした。
「埋葬虫」で登場していたカメラマンの伊予田が、再び登場です。驚きの結末なので内容には触れませんが、「屍者の帝国」にも共通する切ない友情の物語です。
また、中編「城と山羊」は、懐かしい「蘆屋家」の遊離子も登場し、絶海の孤島で悪魔崇拝の城に潜入して大冒険、という、まことに最終巻にふさわしい派手な内容です(マジでw)。

アイダベル、というちょっと変わった名前の女の子が、猿渡の古い友人として登場してくるのも楽しいです。女難の相がある猿渡ですが、アイダベルとは喧嘩友達みたいにうまくやっていけそう。

もうこの先、猿渡と伯爵の友情道中記が読めないのかと思うと寂しくて仕方ありません・・・。

私の大好きな大好きな津原泰水先生の最新短編集「11」。
もうこれは、極上のお酒を飲むように、毎日少しずつ読んでいくのが正しい。私たち本読みの最高に贅沢な時間です。妃の位も何にかわせむ。
でもねえ・・・もう読み終わっちゃったんですよ(T.T)
次の贅沢時間はいつ来るのかなあ・・・(ちなみに前回の贅沢時間は奥泉光「シューマンの指」を読んでた時です)

さてこの本、津原ファンなら、少年の人形の写真がカバーになっている所にまず「オッ」と思いますね。「ピカルディの薔薇」の人形作家の青年が作った人形ってこんなのかなあ・・・。「たまさか人形堂綺譚」もよかったなあ・・・。
「11」は津原先生の短編集特有の華麗なる文体標本箱の様相を呈していますが、ほんとにこの人の文章は繊細な宝石細工のように美しいので、もうそれを味わうだけでも満足ですよ自分は。

でもその中でも目をひく巻頭の「五色の舟」はなんとキャサリン・ダン「異形の愛」のごとき、見世物小屋一家の話。異形のもの同士が寄り集まった家族が生まれたばかりの「くだん」を買いに行く。「くだん」はもちろん、未来を正確に予言するという妖怪「件」のこと。故・小松左京先生にも「くだんのはは」という傑作短編がありましたね。第二次大戦中の話かと思いきや、後半はまさかのパラレルワールドSFタッチ、だけど切ない情緒はそのまんま。かすかにBLの香りまでする。凄いよう津原先生凄いよう・・・。

そしてもう一編、どうしても触れておきたいのが巻末の「土の枕」。
酔狂にも他人の名を借りて出征した男の数奇な運命を、日露戦争から昭和の高度成長あたりまで特に何の外連味もなく書いてあるだけの短編なのですが、なんかマジックリアリズムの手法で書かれたタイムスリップ小説みたいな、時間の流れていく感じがフツーじゃないんですよ。説明しにくいのですが。でも別に、SFでもファンタジーでもないんですよね、不思議。ちなみにこの小説のモデルとなった酔狂な男は実際に津原先生の親戚にいらっしゃったそうです。

さてしかし、もし津原先生の本読むのは初めてという方がいらっしゃったら、最初はまず「芦屋家の崩壊」をオススメします。猿渡くんと伯爵(あだ名)の二人組が次々に怪事件に巻き込まれる連作短編集。誰が読んでも絶対面白いので、「文体が・・・」とか「極上の酒の・・・」とかブツブツ言わずに真夏の生ビールのようにググーッといっちゃってください。どれも怪奇小説として良くできているし、猿渡と伯爵のお豆腐その他の食べ物談義も楽しいし、オッサンのくせに意外と色っぽい猿渡(キャスティングするならオダジョーがいいと思います)とか、薀蓄の数々とか読みどころはいっぱい。でも恐ろしいことに、読み進むうちに徐々に津原ワールドが身体に浸透していって、巻末の「水牛群」という奇跡の一編を読み終えるころには、あなたも立派な津原ファンに。
そのあとは「綺譚集」でも「ペニス」でも「バレエ・メカニック」でもお好きなのをドーゾ。

書き添えておきますが、津原先生の魅力の一つに「男性が魅力的」というのがあります。(「たまさか人形堂」はいい男の宝庫。でも一番好きなのは伯爵かな)
BL要素もいとわずにスイスイ書いていく人なので、たまに「うわー美しすぎ~」と感じたりすることもありますが。でもそういう読み方で読むのはむしろもったいないですよ。

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