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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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東京自叙伝東京自叙伝
(2014/05/02)
奥泉 光

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幕末から明治・大正・昭和そして平成、激動の時代を潜り抜けてきた東京という都市、そしてそこに住む日本人の姿を、地霊が乗りうつった人物の口を借りて一人称で語りつぐ、マジックリアリズム風の近現代史。
奥泉光の一人称の文体の、緩急自在さ、自由闊達さが存分に堪能できます。

幕末の勤皇の武士、大日本帝国の軍人、戦後の闇市からのし上がる若いヤクザ、テレビや原発の普及を陰であやつる男、バブルに浮かれやがて身を持ち崩す女、福島第一原発作業員・・・。
それぞれ、その時代の中心で歴史が動くのを目の当たりにした(あるいは、裏で歴史を動かした)6人の人物が登場しますが、この6人は実は一人の人物、というより、東京という土地の地霊の意識を共有しています。彼(彼女)は縄文の時代から東京にあって、幾多の地震も富士山の噴火も経験してきています。そして、東京が世界を統べる都となることを熱望しています。
そんな彼(彼女)の目を通して見る、明治維新の、満州事変の、太平洋戦争の、戦後の歴史の裏側。
戦後の好景気、政治家とヤクザ、東京オリンピック、そしてバブル景気と東日本大震災。

幻想を織り交ぜて現在にいたる近代史を語る、というスタイルはガルシア・マルケスの「百年の孤独」をはじめとして、作家なら一度はトライしてみたい手法なのでしょう。その点には目新しさはありませんが、この本はその視点を東京に絞っているのが面白くて、読んでいて連想したのはむしろ荒俣宏の「帝都物語」でした。将門の時代からつらなる歴史、ことに近代史はドラマチックで、東京ってやっぱり魅力的な都だなあ、と改めて思わされます。
また。戦中の軍部の様子や戦後の闇市などが当事者の視点で語られるので、当時の世相や状況などが生々しく感じられるのも面白かったです。
しかし東京が輝いていたのはせいぜい東京オリンピックあたりまでで、その後の時代になると個性的な人物も減り、東京の街が何も考えていない鼠のような人間の群れに埋め尽くされ、やがて東京の滅亡までが暗示されているのは、読後非常に暗い気持ちになりました。東京はまだまだ幾度でも生まれ変わる! と信じたいのですが・・・。

奥泉先生の本では、個人的にはクワコーシリーズのようなユーモアミステリが一番好きなのですが、この本も語り口の軽妙さのおかげで、重たい内容の割に読みやすい小説になっています。
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シューマンの指 シューマンの指
(2010/07/23)
奥泉 光

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この本は、奥泉光の大ファンである私が、数ある傑作の中でもベスト3に入れていい(「NO,1です!」って言いきれない所が歯切れが悪くてスミマセン。だって奥泉作品は他にも傑作があまりに多いんだもん・・・)と思うほど好きな本なのですが、正直、ミステリでありながらラストがどのようなものだったのか全く覚えていませんでした(^^ゞ
ところがGW前にこのブログを読んだ方からメールで、
「このラストについてどうお考えですか?」
という意味の質問をいただいたのです。
具体的には、本の最後の「妹の手紙」という部分をどう読むか、という質問です。
情けないことに、そんな手紙があったことすらすっかり忘れ果てていたので、正直にそうメールでお答えすると同時に、
「奥泉先生の本は理詰めのミステリというより幻想小説だから、ラストとか真相とか気にしなくていいんじゃね?」
という傲慢な態度を取ったのですが、さすがにすっかり忘れていた本の感想を知ったような口調で人様にお送りしたのも心苦しく、かつまた数年前、この本を読んでいた時の至福の時間を再度味わいたくなり、GW中に再読してみた次第です。

この数年で自分の中にどのような変化があったものか、今回読みなおして率直な感想は、
「こんなにBL要素の強い本だったのか!」
でしたww

以下は激しくネタばれするので「続きを読む」で!

続きを読む »


つい先日、クワコーの「黄色い水着の謎」で大笑いしたばかりだというのに・・・。

虫樹音楽集虫樹音楽集
(2012/11/05)
奥泉 光

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奥泉先生の最新刊はがらりと趣向をかえた幻想味の強い連作集。
数年間にわたって単発的に雑誌『すばる』に発表された短編を並べてあるのですが、扱われているモチーフは一貫して、カフカの『変身』と、奥泉作品にはよく登場する「宇宙の音楽」のイメージです。

表紙の蝶の絵や、最初の短編『川辺のザムザ』の「書き手」が後から現れて「あれは私が書いた小説です」と言いだす所など、円城塔の『道化師の蝶』を連想させるのですが、あくまでも軽やかで天衣無縫な『道化師の蝶』に比べるとこちらはもっと暗い情念を感じるといいますか、まあ、下敷きになっているのが『変身』なのですから当然ですかね。
(それと、作品中に虫は出てきても蝶は出てこないので、この表紙はちょっと「?」と思います)

70年代の日本のジャズ界にささやかな名を残した、渡辺柾一(通称イモナベ)というサックス吹きの男が、虫のように幼虫から成虫になろうとしていた事を知った音楽ジャーナリストが、彼の過去の消息を追うパートと、平行して人が虫になる、あるいは虫のような人の話、樹を通して宇宙と交信する虫の話、などなどが語られ、それぞれのパートは『変身』を中心にゆるやかにつながっています。
ミステリアスな謎は次々に謎を呼びながらも、回収されないままに終わります。
繰り返し出てくるのが『変身』の中で虫となったグレゴール・ザムザが窓の外の風景を眺める場面で、そこで見えるであろう灰色の風景がそのまま読後感となって作品中にずっと漂っている不安感と共に、重苦しく残ります。
しかし途中のドライブ感というか想像力の奔放さ加減というか引き込まれ感は凄くて、気持ちよくグイグイ来ます。私の乏しい語彙では、とにかく文章が上手い、としか言いようがないのですが。

特に自分が好きだったのは、『虫樹譚』という短編で、クワコーシリーズのモンジ君が少しだけ賢くなったような大学生の男の子の、一人称の語りがまず素晴らしいw 
饒舌で、ちょっと馬鹿っぽくて、けっこう感情の起伏が激しいのに違和感なく読者に内面を伝えきる、しかも読んでいても軽さが心地よい。
不眠体質になるために頭の中に虫を飼う、とかちょっと嫌な近未来っぽい話ですが、若い男の子のフワフワ定まらない思考や情念が、読んでいてストレートに伝わるのがすごく面白くて、改めて奥泉先生スゲエって思いました。もっとも、クワコーがあれだけ面白いのも、奥泉先生の卓越した文章力に支えられているのも、言うまでもないんですけどね。

私は『変身』は中学の時夏休みの課題で読んだのですが、数十年ぶりに読み返したくなりました。
この本を読んだあとで読み返すと、おそらくいろんな発見があると思います。

あと、イモナベのパートでたびたび言及される、70年代の日本のジャズシーンって、多分、筒井康隆が山下洋輔トリオと騒いでいた、あの時代ですよね。新宿の地下の壁が真っ黒いアングラ劇場、みたいなノリ。
私はその時代にわずかに乗り遅れているので、こういったボヘミアン(?)な空気には憧れてしまいます。

黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2
(2012/09/22)
奥泉 光

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出ました!
待ちに待った、「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」の続編です♪
以下、ネタばれなしの感想です。

もう、前作を読んでクワコー(桑潟幸一准教授)とたらちね文芸部員が他人とは思えなくなっちゃってるので、今回も、相変わらずの彼らの貧乏お馬鹿な青春の1ページを、「おおー、やってるやってる!」と、大喜びで読ませて戴きました。もう自分、人生で、クワコー読んでる時間が一番楽しいかもしんない。っていうくらい、このシリーズにハマッています。どうかどうか、末永く続けて欲しいです。

さて今回は、夏の千葉が舞台です。表紙の、ピンクのシャツの眼鏡男子がクワコーなんですが・・・前作に引き続き、詐欺でしょコレー(大笑)
内容を99%くらい美化している、この綺麗な表紙イラスト(加藤木麻莉・装画)も本シリーズの魅力です。今回は本文扉に白黒イラストも2枚入っていてお買い得感満載。詐欺だと分かっていても、クワコーがイケメンに描かれすぎていて惚れてまうわ!

今回は2本の作品が収録されていますが、どちらの事件も本当に大した事ないっていうか(笑)、人が死ぬわけでも愛憎のドロドロがあるわけでもなく、しょーもない人たちのしょーもない動機で起きる騒動にクワコーが巻き込まれてあたふたする、ただそれだけで、もう本当に読んでいて心地良い。
そしてたらちね文芸部の腐女子ぶりも相変わらず、というか更にエスカレートしている気配すらあります(笑)
ちょっと引用してみましょう。

「ていうか、最近は無機物にはまってて」
「えー、そっちいった!」
「みのり山の『テンプレ太平洋戦記』なんか、わりとやばい感じです」
「なにそれ? 知らなーい」
「B29が攻めで、戦艦大和が受けとか、そういう感じの話で」
「でたー、マニアの世界」
「零戦とメッサーシュミットのカプとか」
「ううむ、狭すぎるゾーン」
「大傑作です。っていうのは盛りすぎだけど、これから地味に布教に励もうかと」
「うーん、いいけど、けっこう茨かも」
「軍事オタクに布教したりして」
「で、軍事オタクが萌えて腐兄化」
「あるある、それある」


いや、ないと思うけどね(笑)
「腐兄化」という言葉は初めて聞きましたよw
奥泉先生、何故そんなに斯界にお詳しいのか・・・ww
無機質ネタでもう一か所、面白かった所を引用します。

妄想される性愛の局面で誰をセメ=「男役」とし誰をウケ=「女役」とするかは、BL界ではときに世界観を賭した闘争になる大問題なんだそうだ。都内のある大学のサークルなどは、鉛筆と消しゴム、どちらをセメとするかで揉めたあげく、鉛筆セメ派と消しゴムセメ派に分裂したというから大変だ。この話が伝わってからというもの、文芸部室を兼ねるクワコー研究室の部員たちのあいだでは、同人誌作りの作業中、「おらおらおらおら書いてやる!」といいながら鉛筆で書き、「ほうら、どうだ消してやるぞ!」といいながら消しゴムを使うのが流行った。


↑わーかーるーわーwww
私も以前、腐女子宴会で「スプーンとフォークだったらどっちが攻め?」という話題で友人と盛り上がった記憶がありますww
っていうかもう、世の中のものすべてをウケセメの視点で見てみるのは、腐女子のよくやる遊びです。深いでしょ?(笑)

そして今回は、房総工業大学、略してボーコー大のキモオタ部員たちのしょーもないコスプレも、もう本当にしょーもないww 即身仏のようなのでソクシン先生と呼ばれる老教授の駄目さ加減も本当にしょーもない。もちろんクワコーの「発情した山羊のモノマネ」も本当にしょーもない。
そして概して、女子学生たちはたくましい(笑)
奥泉先生ご自身、大学教授でいらっしゃるので、おそらく腐女子の生態に触れて、その意外なまでの知性とバイタリティを目にして思うところがあったのでしょうww

クワコーの貧乏ぶりも相変わらずで、沼で取ったザリガニのあまりの美味しさに感激したり、道端に生えているシソの葉でいろんな料理をこさえたり、いじましくも可愛らしいですw
そして、クワコーも「ジョジョの奇妙な冒険」の愛読者だったという意外な事実も明かされましたww
更に、最後にちょっと、クワコーとジンジン(神野仁美。探偵役女子大生)にフラグが立った気配・・・!
マジかー!? 
クワコーが更なる不幸に巻き込まれる伏線じゃないといいけど・・・。


「スプーンとフォーク、どっちがセメなんですか?」ってどうしても気になる方は「続きを読む」で!
僕は親切な人間だから一応警告しておくけどね、この先を読んだら君はもう、元の世界には戻れなくなるかも知れないぜ?

続きを読む »


桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活
(2011/05)
奥泉 光

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不覚ですた。
奥泉光先生は劇愛している作家さんの一人なのに、このオサレな表紙を見て、若い人狙いで軽~く書かれた、『ユーモア学園ミステリ』かと思って、今まで食指が動かなかったんです。何となく、森見登美彦とか東川篤哉とか(どちらもあまり好きでない)っぽい感じもして。

で、この本、<若い人狙いで軽~く書かれた、『ユーモア学園ミステリ』>そのものなんですが、・・・奥泉先生が書けば、こんなに面白くなっちゃうんですね~。
ゆうべ、うっかり布団の中で読み始めたら止まらず、久々に真夜中一気読み。
以下、ネタバレのない感想です。

桑潟幸一、略してクワコー。
「モーダルな事象」という作品にも登場していた、超ダメダメ下流大学教授。
とにかく、教授のくせに研究らしき事はまったくせず、怠惰で小心者で気弱で人品卑しく僻みっぽく、向上心のカケラもなくプライドもなく、長い物には巻かれ大樹の陰にしか寄らない、腹が出てきた40歳の男が主人公なんですよ。
この表紙の左側のイケメン兄さん、赤い自転車に乗っている所を見ると、クワコーらしいんですが・・・詐欺だろこれー!(大笑)
ほんとにスタイリッシュな大学生活を思わせる綺麗な装丁なんですが、もうこれ自体がギャグだから(笑)

クワコーの通う「たらちね国際大学」は、千葉のド田舎にあり、偏差値底辺のおバカ女子大生たち(短大から4年制に変わったばかりなので男子生徒は一人しかいない)相手にクワコーは文芸部の顧問を務めることになります。
この文学部っていうのがもう可笑しくて可笑しくて、田舎の底辺校の文芸部にはそもそも腐女子しかいない(笑)
新入生が「村上春樹を読んでます」っていうだけで、読書家と言われてしまうような、そんな部です。
部員全員、コスプレ大好き、コミケ前には同人誌作りに励む、そんな部。
そしてこの、腐女子たちのトークがめっちゃ面白い。奥泉先生、どうしてこんなに腐女子の会話に詳しいの? どうしてさり気なく、テニミュとかHey! Say! JUMPとか出てくるの?
ちょっと長くなるけど、新入生勧誘のためにクワコーにもコスプレをさせようとする、彼女たちの会話を引用します。

「白衣路線でいくなら、クワコー先生にやってもらうといいかも」
(中略)
「あ、それいい。外科医とか」
「外科医って、けっこう王道かも」
「きたー、直江庸介」
「誰、それ?」
「白い影。って知らない? 中居がやったの」
「知ってる。ワタジュンでしょ。わたしけっこう萌え」
「どっちに?」
「ワタジュンに決まってるでしょ」
「出た、リカちゃんのジジイ萌え」
「アイルケ好きの女」
「でも、外科医だったらむしろ戝前のほうがよくない? 雰囲気的には」
「誰?」
「知らない? 戝前って。白い巨塔」
「知ってる、戝前。それ、けっこうヤバいかも」
「戝前教授の総回診でございます。って、研修医とかがぞろぞろついていくの。病院の廊下を」
「ほほう」
「研修医ってちょっと萌えるよね」
「萌える、萌える」
「私は患者の方が萌えるな」
「出た。ミズホンの包帯フェチ」
「および点滴フェチ」
「ほぼ変態」
「で、どうですか、先生的には(中略)やっぱり戝前がいいですかね?」
 あまりの急展開に桑幸が声を失っているところへナース山本が口を出した。
「戝前が駄目なら、ドクター・コトーっていうのもありますけど」


この、リアルでスピーディーな会話、まさしく私の知っている腐女子トークそのものですよ!
っていうかもう、この会話に入りたい(笑)。たらちね文芸部の飲み会混ざりたいww
作家の石田衣良さんも、この本読んで『混ざりたい』とおっしゃったそうですが・・・
いいんですか?
「やっぱキングは総受けでお願いします」
「じゃあ今回のお相手は、ツインタワーって事で」
「出た! イザクさん得意の『かわるがわる攻めたてる』攻撃!」
「キョーダインか!?」
みたいな会話が飛び交っちゃいますよ。それでもいいんですか?
(『キング』と『ツインタワー』はいずれも石田衣良の出世作、『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの登場人物)

学力偏差値は底辺でも、彼女たちの頭の回転が実に早くギャグセンスも鋭く、読んでてドライブ感があるとでもいいますか、気持ちいいです。彼女たちの萌えトーク、この本の最大の読みどころの一つですww
それにしても、なんで腐女子の会話なんて書く気になったんだろう、奥泉先生・・・。
逆に、この本苦手、っていう人の感想を読むと、この腐女子トークが駄目みたいですね。
うーん・・・確かに、この流行っぽい表紙を見てスタイリッシュな学園モノを期待した人は可哀想かも(笑)

さてさて、この本は、クワコーが巻き込まれた三つの事件を、文芸部のホームレス女子大生、ジンジン(神野仁美)が鋭い推理でズバズバと解決していく、シリーズものです。毎回、クワコーが可哀想な目に合うだけ(笑)で、誰かが死ぬわけでもないし、もうこの先いくらでも続けられますね。っていうか、続けて欲しいー!

どうしようもない中年男、クワコーが、だんだん可愛く見えてきます。
クワコーは本当に駄目な奴なんだけど、邪悪さがないんですね。他人を害するという事がない。っていうか、基本的に善良な倫理観の持ち主なのと、気が弱すぎるのとで、怖くてそういう事ができないんだと思う。
しかも自尊心も低いために、他人にいいように利用されてしまったり。他の教授に、苛められて泣いちゃったり。
更に、給料が安すぎてびっくりしたクワコーは、外食をやめて自炊を始めるんですが、けっこう料理が得意で節約上手だったり、お金を使わない生活に充実感を覚えちゃったり、もともと貧乏性、っていうのがまたいじらしくて・・・。
文芸部の女の子たちにも、威張ったりしないし。っていうかむしろ、可愛がられてるし。

あと、大学の教授たちの世界っていうのも、なんだか世界が狭くて人間関係がドロドロしてそうで怖いですね。
昔読んだ、筒井康隆の本(『文学部只野教授』だったかな・・・?)を思い出してしまいました。

近所の図書館がお休み中なので、ちょっと遠い館に足を延ばしたら、ありましたよ出物が。
奥泉光・著「地の鳥 天の魚群」(幻戯書房)。
タイトルからして、すでにゴリゴリの純文学臭が漂っています。しかも出版社が「幻戯書房」?
失礼ながら、初めて聞きました。しかも「幻戯」って、・・・胡散臭いだろー!(笑)
もうね、この本、それだけで、「ああきっと私の好みだな」ってピンと来ちゃうんですよ(笑)。

私、純文学、しかも作者が若いころ書いた青臭い作品が好きなんです(行間から立ち上ってくる、悩める文学青年の哲学系の香りに酔いしれる)。
奥泉光の初期作品はどれもいいですよ。
「ノヴァーリスの引用」「石の来歴」「蛇を殺す夜」「葦と百合」「バナールな現象」「滝」etc・・・。
最近はちょっとエンタメ路線に行っててどうかと思う時もありますが、「シューマンの指」はひさびさに奥泉光の良さが120%出た傑作中の傑作。
(彼がフルスロットルの時は、微妙にBLの香りが漂っていることが多く、そこにも魅力を感じることは正直に告白しておきましょう)

さてこの「地の鳥 天の魚群」、あとがきを読んで知ったのですが、著書が二十八歳の時にはじめて書いた処女作なのですね。
読んでる間中、「初期っぽいな」とは思っていましたが、まさか処女作とは。
奥泉光の最大の魅力、硬質で鋭利でセンシティブな文体がすでに確立されているのが驚きです。やはり才能っていうものはダイヤの原石のように、最初からそこに「在る」もんなんですね。あとは磨くだけ。
二十八歳にして書いた処女作なのに、テーマが「平凡な家族の崩壊」。
息子は新興宗教、娘は意味不明の入院、妻はオロオロ。家庭の平穏だけを願って生きてきたはずなのに・・・。
平凡な中年男が主人公の、老成したというか人生に倦み疲れたというか、そんな内容なのも興味深く、そこに時折、若書きらしい火花の散るような鮮烈なビジョンが差し挟まれて、さすがは私の愛する奥泉光先生です。
先生の文章の冴えを見ていただくべく、主人公の「石脇氏」が大学生の息子、「進」に打たれるシーンを引用してみましょう。

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―――お父さん、教えてあげましょう。本当の暴力というものをね、と進が低い声で言うと、その右手がきわめてゆっくりと眼前に近寄ってきた。大きな手のひらには実に冷え冷えとした印象があって、「青銅の手」が連想される。やがて、視界を遮る「手」が反転する蝶のように素早く閃いたと思った瞬間、機械的な正確さで石脇氏の頬をとらえていた。空白になった頭蓋の中に、馴れ馴れしく皮膚と皮膚とが擦れ合う音が響き渡り、石脇氏の身体は、あらゆる細胞が凍結してしまったかのように、その場に硬直した。
―――一時的な感情や怒りにとらわれて振う暴力なんて本当の暴力じゃないんです。目的を真に自覚した者にだけ、本当の暴力は許されるんです。と蒼白く燃え上がる冷気を含んだ声で進は言うと、再び石脇氏の頬を打った。それは先ほどの動作と寸分の狂いもなく、まるで獲物を捕獲するカメレオンの動作を、ビデオテープで繰り返し見るようであった。
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・・・カッコいいものは常にクール。
そんなことを再認識させるヒカル様の文体でございます。

このブログを読んで下さる方には、あまり関心のない本だったかもしれませんが、こんな地味な本、オレが取り上げなきゃ誰がやるんでい! そんな義侠心(?)も手伝って、長々と書かせていただきました。
でも、「奥泉光かあ・・・。読んでみようかな」って方には、やはり「シューマンの指」から入る事をオススメします! 
「このミス」でもランクインしていたし、誰が読んでも絶対に面白いです!
(ついでに言っておくと、天才少年とその友人の、友情だか憧憬だかBLだかわかんない関係を描いて激ヤバですぞ!)

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