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金亀虫擲つ闇の深さかな(こがねむし なげうつ闇の 深さかな) 高浜虚子

金亀虫、というのは見慣れない当て字ですがようするにコガネムシ、カナブンですね。
今夜、我が家でも窓を閉めていたらカナブンがブーンと飛び込んできて、あちこちブチ当たったあげく床に落ちてしおらしくしていましたので、紙コップで拾い上げて玄関から外に出してやりました。そう、まさになげうつ、というか放り投げる感じで。
この句のまんま、リアルです。

この俳句は中学か高校の時に授業で教わった覚えがあるのですが、その時は「擲つ」という字がやたら画数が多いのが気になって、それしか覚えてないです。「投げうつ」じゃイカンのかと思ったものです。今になって考えると、やはりここは「擲つ」という字の何かワケありな感じが効いているなあ、と思います。「闇」の画数の多さと釣り合っているというか。
「擲」という字をじっと見ていると、老人が手にちり取りを持ってかがみこみ、片手でドアを半分開けた所のようにも見えてくるのですがそれは気のせいかでしょうか・・・(笑)

「擲つ」には、「投げ捨てる、惜しげもなく差し出す、放棄してかえりみない」などという意味もあるそうです。
だから、コガネムシ(金亀虫、という字は黄金虫よりも小さな命を感じさせる)を家の外に放り投げた時、戸だか窓だかを開けた瞬間、家の中の明かるさに慣れた目が外の暗さに驚いて、「小さな光る命を投げ捨てたのは、予想もしなかったほど深い闇の中だった」という、ただ「虫を外に出した」という行動にそぐわない、哲学的とでもいいたいようなイメージが湧いたのだと思います。かすかな罪の意識すら感じます。
こういう時って、戸(または窓)開けるのと虫を放り出すのとはほぼ同時ですから、「あっ、外はこんなに暗いのか」と思った瞬間にはもう虫は闇の中に消えているわけですからね。

あと、「擲つ」のは「外に出してやった」「逃がしてやった」とは明らかに違う、「投げ捨てた」という語感があるので、そこにもやはり虫の命を軽く扱ったことと、闇の深さへの畏れとの対比があると思います。
コガネムシは金や緑に光る、小さな綺麗な虫なのに、「お前の棲んでいる、属している世界はこんなにも深い闇の底なのか」という驚きが感じられます。

いずれにしても、夏場、部屋の中にカナブンが入ってきてしまうたびに思い出す一句。熱帯夜のムンッとした暑苦しさまで伝わってくる気がするのは、夏の夜に部屋に虫が入ってきて大騒ぎになる経験を、毎年繰り返しているからでしょうか。

それにしても、コガネムシは幸せな虫ですね。
うっかり人の家に入っても、外に逃がしてもらえて俳句にまでしてもらって。
良く似た大きさの平べったい黒い虫は見つかりしだい瞬殺されるというのに・・・。
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