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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
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無題
(↑ミハイル・アファナーシエヴィチ ブルガーコフ (著)、中田 恭 (翻訳)、 2006年・郁朋社刊。なぜかブログのアマゾン商品検索で商品情報が出てこないので表紙だけ貼っておきます。タイトルで検索すると、ちゃんとアマゾンで扱っているのが出てきます。ちなみに、2008年に河出書房新社より、「池澤夏樹個人編集 世界文学全集」の一冊として水野忠夫(翻訳)版も出版されています。個人的には、この猫の表紙がすごく良いのと、活字が大きめで老眼でも読みやすかったので、郁朋社版のほうが好き)

ゴールデンウィークの間に、いつもは読めないような重厚っぽい外国文学を読もうと思って手に取ってみました。
春先ころに、図書館で同じ作者、ブルガーゴフの「犬の心臓」という本を見つけ、読んでみたのがそもそもの始まり。

私が中学高校時代に熱心なSF読者だったことはここでも何度か書いていますが、当時、翻訳SFが主流だったので、名作とほまれ高いのに日本では翻訳されていなくて、もちろん原語でなど読めませんので、タイトルだけ見て「面白そうだなー。どんな小説なのかなー」とぼんやり思っていた幻のSFというのがたくさんあったわけですよ。
「ゴーメンガースト3部作」とか「アークトゥールスへの旅」とかね。(その後、次々に翻訳されました)
で、当時、ロシアはソビエト連邦、通称「ソ連」と呼ばれていて、何か国全体が秘密主義みたいな悪い宇宙人の住む軍国主義の星みたいな、怖いイメージで、ソ連や東欧作家のSFは、更にハードルが高かった。
レムやストロガツキー兄弟が、かろうじて紹介されている程度でした。
そんな中、「オススメ幻想小説」のリストに「犬の心臓」のタイトルが載っていて、もちろん当時は未訳ですしソ連作家の本ですので、まあ今後の人生でも読む機会はないだろうと思っていたのですが、その魅力的なタイトルだけは数十年たっても覚えていたのですね。で、図書館でその本を見つけ、早速借りて読んでみました。

無題2
(河出書房新社 水野忠夫訳)

そしたらね、面白かったの~!
なんだか、何十年も前の自分が報われたみたいで、嬉しかったの~!
内容は、野心家の医師が、野良犬に浮浪者の脳下垂体を移植する実験を行ったところ、犬が直立して人間のようにしゃべり始め、しかも元の浮浪者の駄目な性格をそのまま受け継いでいるので、あちこちで大騒動を起こしてしまう、という奇想天外SF。
野良犬の独白から始まり、医師の日記や第三者視点に切り替わる語り口が面白くて、それだけでも読み応えあり。あと、この犬人間の性格の悪さっていうか駄目っぷりというか、手に負えない感じとかね(笑)
実際のロシア人がどういう性格なのかは知りませんが、当時(1930年ころ?)、共産主義のもとでのロシア人たちの喧噪に満ちた、猥雑と言っていいほどの生活ぶりとかね。
巻末の解説によると、作者ブルガーゴフの代表作は「巨匠とマルガリータ」とあり、しかもこの本は、20世紀のロシア文学を代表する作品であるという。
これはもう、読んでいっぱしのロシア文学通を気取るしかあるまいと思った次第。
「犬の心臓」を書いた人の本なら、絶対に面白いとその時点で確信できたので。

で、今回、「巨匠とマルガリータ」を読んでその感想は。
面白かった~!(語彙が貧弱ですみません)
えーとね、まず、時代は現代(1930~1940年代)で舞台はモスクワね。そこに、悪魔のヴォラントとその一行がやってくる。
もうね、この、悪魔団の一人が登場するのがいきなりもう2ページ目なのね(笑)
もったいぶった風景描写も心理描写もなく、いきなり本題、しかも唐突(笑)
 するとその時、焼けつくような熱気が彼の前で濃密になり、この空気の中から奇妙奇天烈な恰好をした透明人間が浮かんできた。小さな頭には、ジョッキー帽、格子柄のちんちくりんの薄手のジャケット・・・男は身長二米もあるが、肩幅は狭く、恐ろしく痩せていて、注目すべきは人を食ったような顔付をしていたことだ。(以上、本文より引用)
・・・と、まあ、こんな調子なわけですよ(笑)
もうこの先、この悪魔の一行がモスクワの街を舞台にやりたい放題のスラップスチック(笑)
もうね、「悪魔」ってのがいいじゃありませんか。20世紀の小説なのに、「魔術的リアリズム」とか面倒なことを言わずにモロ「悪魔」(笑) 「日常のささやかなできごと」とか、もうどうでもいいよ、と(笑)
個人的には、大きな黒猫のベゲモートが可愛くて好きw
後ろ足で立つわ言葉は喋るわ、フォークを持って食事するわ、読んでいるとどうも、ますむらひろしのコミックスに登場するヒデヨシを連想してしまうのね(笑)
この黒猫を見た登場人物たちが、なぜかあまり驚かない所も好きw

さて、この悪魔団の目的は、どうやら悪魔の大舞踏会を開くための女主人を探すこと、らしいのですが。・・・
その役割にふさわしき美女、マルガリータに目をつけた悪魔たち。
マルガリータの望みは、恋人の「巨匠」(売れない小説家)の救済。巨匠は、古代ローマ時代のキリストの処刑を描いた自信作を出版社に持ち込むものの、あっさりとボツにされて精神を病み、せっかくの原稿を自分の手で燃やしてしまう。巨匠の作品は傑作だと信じるマルガリータは、自分が魔女となり悪魔に協力することと引き換えに、巨匠を助けてほしいと願うのだった。
この、マルガリータという女がまたね、凄い女なのよww
私は読んでいて、ジョジョ第4部の山岸由花子さんを思い出してしまいましたよ。
恋のためなら何でもアリの超美女、しかもけっこう言動がゲスい(笑)
魔女になってからは全裸でほうきにまたがり、夜のモスクワでこれまたやりたい放題(笑)
でも、巨匠の前ではしおらしいのよ(笑)

そして、この、巨匠が書いた小説というのが、時おり挿入されるのですが、これがまた面白いんですよ!
ローマ帝国のユダヤ総督、ピラトが主人公。ピラトは、役割上とはいえ、ヨシュア(イエス・キリスト)の処刑を認めてしまったことを激しく後悔している。ヨシュアとふたたび会い、心ゆくまで語らいたい、というのが彼の、決してかなわぬ願いなのだった・・・という内容ですが、焼けつくようなゴルゴダの丘の熱気とか、エルサレムの町を覆う暗雲とか、モスクワ編よりもイメージ喚起力が強くて、さすがは巨匠の筆になるものだと思わされます(笑)
小説内小説、というのは別に珍しくはないのですが、この「巨匠とマルガリータ」の中では、2000年の間後悔をつづける作中作の中のピラトが、最後に望みを遂げるシーンもあり、時空を超えて存在している悪魔ヴォラントの存在が、かつてのエルサレムと現代のモスクワをつないでいるために、ピラトの苦悩も小説内というよりは現実に起こったできごととして扱われているのです。
もしかしたら、巨匠にインスピレーションを与え、ピラトの物語を書かせたのは悪魔だったのかな、とも思います。

ドタバタスラップスティックのくせに、後味が良いのも好き。エピローグの、満月の夜のエピソードもいい。豚になりそこなったイワノヴィチが切ない(笑)
この先、煌々と明るい満月を見るたびに、白く輝く道を思い浮かべてしまいそうです。

作者ブルガーノフはこの小説を書いていたとき、ソ連当局から目をつけられていたので、せっかくの原稿も、当時発表できるあてもないままに、目の病気になってからは奥さんに口述筆記をさせ、死の直前まで推敲を重ねていたのだとか・・・。
彼の死後、ようやく日の目を見た「巨匠とマルガリータ」は今では20世紀のロシア文学の代表作として、世界中で高い評価を得ることに。
作中で、巨匠が絶望して自分の原稿を燃やしてしまったとき、悪魔が「原稿は決して燃えません」という言葉をかける場面があります。作者の逸話を知ると、この言葉はブルガーゴフ本人の心の声のように聞こえてしまいます。
しかし、本というものを、その時代や作者の事情によって評価するのはどうかと思いますので、私にとってはあくまでもこの「巨匠とマルガリータ」は、ドタバタコメディ&幻想小説&古代エルサレム時代小説、の傑作、です。

何となく、共産主義時代のモスクワの住人って、もっと無言で寒さに震えながらウォッカばかり飲んで暮らしているのかと思っていましたが、この小説で描かれるモスクワは、音楽と料理とお酒で夜通し浮かれて騒ぎまくる、バブル期の東京のような享楽の町で、そのことにもかなり驚きました。
出てくる料理がいちいちおいしそうなのも特筆しておきたいです。
あと、モスクワ人たちはしょっちゅう暑がっているんですが、本当にモスクワってそんなに暑いのか、それともただ単に彼らは寒さを寒さと感じていないだけなのか・・・(笑)。
登場人物の多くが「議長」だの「書記」だのと呼ばれていて、まあずいぶんと各種の会議が多いのかなと思っていましたが、よく考えると、そのへんが共産主義っぽさだったのねw

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