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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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無題1
新潮社・刊 舞城王太郎・著
2015年5月30日初版発行

舞城先生、さすがです・・・!
心理描写の細やかな青春系純文学であり、人間にとって悪とはなにかを考察する哲学の書であり、ぞっとするホラーであり、謎を解くミステリでもあり、そんなくくりでは表現できない舞城ワールド全開の本でもある。
「ディスコ探偵水曜日」こそが舞城先生の畢生の大作、代表作かと思っていましたが、この「淵の王」は見た目こそ軽やかだけど、読んだあとの充足感・満足感ではひけを取りません。一見ホラー系ミステリに思えて取っ付きが良く、しかも読みだしたら止まらない面白本です。舞城王太郎の新たな代表作と言っていいかも。
グロ要素もバカミス要素もないので、今までの舞城と比べると格段に、誰が読んでも読みやすいし、底知れぬ恐ろしさは読む人を虜にします。

3編の中編からなる連作集。
「さおり」「果歩」「悟堂」という3人の若い男女の成長を、一人称でも三人称でもなく、主人公のそばにいる不思議な意識体(最初、彼ら彼女らの「魂」なのかと思いましたが違う模様)の言葉で語っていくのですが、そもそもこの意識体の正体が謎。霊魂?
で、最後まで読んでも結局これが何なのか分からないのですが、あまりそれは気になりません。
謎と言えば、主人公たちの周囲に時としてあらわれる真っ黒い穴も、結局何なのかは不明です。
しかし、この暗闇の穴はおそろしく邪悪なイメージを発散しており、村上春樹の小説にも良く出てくる絶対悪の存在や、ル・グインの「ゲド戦記」における「影」をも思い起こさせ、何か人間の原罪とでもいったようなものに繋がっている、存在の根源にかかわる「何か」です。

3人の主人公たちはそれぞれ、懸命に生きているのですが、黒い穴にかかわる邪悪な力が、彼らの生を妨害してくる。
具体的には、サイコパスじみた人物に友人を奪われたり、仕事の上での霊障だったり、猟奇殺人に巻き込まれたり。
そのすべてに、何とも不気味な化け物やもののけたちが関わっている気配がある。
舞城先生の、普段の日常に突然、この世ならぬものが割り込んでくるときの描写は「短編五亡線」所収の「あうだうだう」あたりからよく見かるようになりましたが、本当に、ゾッと鳥肌が立つほど恐ろしいです。

そしてこの本は、3人の主人公それぞれが、将来の夢や地元の友人たちとの人間関係に悩みながら、精一杯に人として誠実にありたいと思う姿が描かれていて、ただそれだけを読んでも感動的です。理不尽な不幸に見舞われる主人公もいますが、後味が悪くないのは、それぞれが自分に正直に、力の限り生きたということがストレートに伝わってくるからだと思います。

それにしても・・・。
第一話の「中島さおり」の章に出てくる、メンヘラだかサイコパスだか分からない美季という女の子が怖い。
「可哀想な自分」「被害者の自分」をさりげなくアピールして、友人の心の優しさに付け込んで、結果その友人を精神的に支配してしまうような・・・。
読んでいて、なぜか尼崎連続変死事件を思い出しました。どうして、そんな変な女に洗脳されてしまうの? という疑問がね・・・。一歩離れたところからだと言えるんだけど、当事者になってしまうと、自分が洗脳されていることにすら気づけないんだろうね・・・。
でもって、この「被害者である可哀想な自分」をアピールして、周囲の、関わった人をみんなクズ人間にしてしまう恐るべき腐れっぷり、こんな人物像を想像・創造できるということは、舞城先生の御親戚とか近しい人とかに、このようなタイプの人間、敢えて言えばそのような血筋の人がいるのかなあ・・・と思ったり。
だとしても、それをこのような面白い小説に仕立ててしまえる舞城先生には、ますますもって尊敬の念が湧くのみ、なんですけどね。

第3章「中村悟堂」の悟堂くんが、心の広さや優しさと同時に、男性ならではの馬鹿っぽさも持ち合わせていて実に魅力的。
この人の章が最後にあるおかげで、本全体の印象が爽やかなのかな? よく考えるととんでもなく陰惨な本なのですが(笑)
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