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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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「屍者の帝国」より3年、待ちに待った円城塔の新刊がキター!

「シャッフル航法」は短編集です。
本当は全部読んでから感想をアップしたかったのですが、1篇ずつ大事にちびちびと読んでいるので、とりあえず読み終わった前半だけ感想を書いておきます。

「内在天文学」
私にはよく分からないのですが、ほら、最近の宇宙論とか物理学とかって、「観察者に観測されることによって宇宙は今の姿で存在する」みたいな学説があるじゃないですか。
これは、そんな観測者によってありようを変えていく宇宙の話。
現在の夜空が、人間によって見られているからこそ今のような夜空になっているのだとしたら、鯨とかイルカとか、南極オキアミとか、他の生物によって観測される宇宙はグロテスクに変容しているはず・・・というアイデアがまずすごいです。SF的でもあり思弁的でもある。イーガンの「宇宙消失」などに通じるSFホラ話のクールな馬鹿馬鹿しさ。
しかしこの短編の良さはそんなアイデアの突飛さよりも、いつも満月で瞳があってまばたきまでする月とか、月食の日にそこを覆っていく土星の影とか、突然一列に並んでしまうオリオン座とか、視覚的なインパクトの強い描写の数々。そして古き良き、と言いたくなるようなアメリカの片田舎の、偏屈者の爺さんと変人の若者との、何かいい感じの交流。
更には、出世作「Self-Reference ENGINE」にも通じる、爽やかなボーイ・ミーツ・ガールの初恋物語にもなっているところ。
円城作品にしては特に難解でもなく読みやすく、いろんなレベルで満足できる、円城塔の魅力が堪能できるお得な短編。

「イグノラムス・イグノラビムス」
「ワープ鴨の宇宙クラゲ包み火星樹の葉添え異星人ソース」という宇宙の食通をうならせる料理。
まず、この料理に関する逸話の数々がもう可笑しくて爆笑ものなのです。特に笑ったのが、
【ワープ鴨を目にするや立ち上がり、「俺の食い様を目に灼きつけろ」と絶叫して傍らのナイフで自らの頸動脈を掻っ捌き、噴き出した血をソースにワープ鴨を賞味しながら絶命した人物】
のくだり。円城塔のギャグセンス、好きだなー。
この、ワープ鴨を世に広めた人物というのが、かつてある異星人のボディにインストール(?)されていたことがあって、その異星人の物の考え方を身につけている。異星人の思考方法で思考するというのは、テッド・チャンの「あなたの人生の物語」にも似てるかも。
ネタバレになるのであまり言えませんが、最後のほうは「自分の意志とは」「自分の行動とは」みたいなテーマになっていて、実に伊藤計劃っぽいなあ、と思いました。

「シャッフル航法」
表題作ですが、発表されたのが「現代詩手帳 2015年5月号」なのです。
やるなあ現代詩手帳。この号には「伝法の徒」の酉島伝法も詩をのせているらしい。すごい事になっていそう(笑)
内容は、やはり小説というより詩に近いですかね。
【ある朝に、その夜に、ハートの国で、(中略)此処がどこかも、今が何時かも、わからなくなり、支離滅裂に。】
・・・というような言葉が、トランプのカードのように13×4個、次々にシャッフルされていきます。
(必ず最初が「ある朝に」で最後が「支離滅裂に。」なのも、実際トランプカードを両手でシャッフルするときのことを考えると、ああなるほどという感じ。並び変わりの規則性も、ちゃんと調べたら面白そう)
語呂が良くて、破滅的な恋の香りもあって、「ガンガンガンガン、支離滅裂に」とか、口癖になりそう。
でも一応、SFっぽいというか、この詩全体が「シャッフル航法の初期に起きた痛ましい事故の記録」ということになっているのです。
いや確かに痛ましいわ(笑) ボコボコボコボコ、バリバリバリバリ、支離滅裂に(笑)

「Φ」
徐々に収縮していく宇宙を、1文字ずつ文字が減っていく段落で表現した作品。
・・・というと意味が分かりにくいかと思いますが、ようするに、だんだんと「わたし」の使える言葉が短くなっていって、ついには消滅してしまうのです。
かつて筒井康隆が「残像に口紅を」という小説で、50音の中から徐々に使える文字が一文字ずつ減っていく小説を書いたのを思い出しました。「残像に口紅を」では、最後のほうになると、もう言葉をどんどん奪われた語リ手が、乏しい語彙を使って自分の幼年期の思い出を語りだすのが切なかったのですが、この「Φ」もそれにも似ています。
終盤、文字数の制限によって思考の幅をどんどん制限され、それでも必死に言葉を残していこうとする語り手の独白が、なんだか、死ぬ直前の人の意識ってこんな感じなのかなあ・・・と思わさせられました。


・・・今回は以上です。
今までのところ、テーマ的にはややSF寄りですが理系感が薄く、読みやすいです。
表題作「シャッフル航法」をはじめ、言葉使いのセンス、文章力が相変わらず素晴らしくて、読んでいるだけで気持ちがいいです。
(他の作品を想起した、という感想が多いのですが、円城作品は他人にイメージを伝えにくいので、あえて有名作品の名を借りてもいます。作品のアイデアが、先行する作品に似ているということではありません、念のため)

ところで!
この「シャッフル航法」の出版記念トーク&サイン会が明日(9/2)渋谷であり、私、行く予定なのですよー!
ああ~、生円城を見られるなんてシアワセ~!
トークの様子は後日、ここにアップいたしますので円城ファンの方は楽しみにしていてくださいね!
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