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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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「エピローグ」は、「屍者の帝国」以来、3年ぶりとなる円城塔の新刊長編小説。
円城塔の作家としての、SF書きとしての充実ぶり、実力のほどを遺憾なく知らしめる傑作だと思います。
早川書房の「SFマガジン」に連載されていたものをまとめた本で、SFくささが満載です!
何しろ、主人公の朝戸連は、人類対OTC(オーバー・チューリング・クリエイチャ、つまり、人工知能が進化しすぎて人類には理解不能になったもの)との戦いに参加しており、その相棒はアラクネという名の超高性能ロボット。そして朝戸は「能力者」というオイシイ設定。この二人の掛け合いが、昔なつかしいスペースオペラの香りがして実に楽しい。
そしてもう一人の主人公、クラビトは多元宇宙で起きる連続殺人事件らしきものを調査する、多数の宇宙を股にかけた宇宙刑事でしかも、実はインベーダーである奥さんとは離婚訴訟中(笑)
古典的というかベタというか、SF好きにはたまらない設定です。
その分、挑戦的というか真っ向勝負だなと思います。
出世作「Self-Reference ENGINE」もSFらしい作品で、話の内容も「エピローグ」に似ているのですが、「Self-Reference ENGINE」が変化球というか、群盲象を評すようなエピソードの積み重ねであったのに対し、「エピローグ」はど真ん中直球です。
しかも、この表紙絵を見ればわかる通り、少年少女のラノベ的なシュチュエーションを多用した初恋物語(実は円城塔の得意技でもある)という側面もあります。側面もある、っていうか実はそれがメインストーリーだったり(ネタばれ発言w)
そして、こうして内容を簡単に紹介すると、実に面白そうで、事実、とても面白かったのですが、何というか、私は多分この面白さの半分も理解することはできないと思うの・・・(T.T)

何しろ円城塔作品なので、難解なのは覚悟の上なのですが、この作品に関しては「難解」というよりもチェスの名勝負を見るような、「何か凄いことが目の前で進んでいる気配は感じるんだけど、全然ついていけません」感がありました。チェスの駒の進め方くらいは私も知っているので、読んでいて、ところどころで「分かった!」ような気になるのです。でも、次のページでそれを上書きするような新しい解釈や新事実が出てきて、というか、この世界での宇宙の法則が一瞬ごとに改変されつづけていて、結局何が何だか支離滅裂にシャッフル航法。

OTCの侵攻により、人類はもとより宇宙の法則さえ乱れ、もはや控え目に言っても「何が何だか分からない」、そんな世界、そんな設定で、「言葉とは?」「物語とは?」あるいは「時間とは?」「宇宙とは?」といった抽象的な問いかけを、世界を危機から救う問いかけとして問い続ける小説・・・自分なりに分かった範囲で内容をまとめると、こんな感じでしょうか。
それだけ見ると「哲学小説か?」と思いたくなりますが、どこをどう読んでもSF、しかもスペオペらしさ満載(宇宙戦艦という言葉すら平気で出てくるw)。 
分からないことを分からない言葉で描写したり、全く新しい発想を全く新しい用語で説明したり、という力技の連続で、読む方も集中力と体力が必要なのですが、そんな長編を書いてる円城塔はバケモノかよ? OTCかよ?(最大限の褒め言葉です)
そもそもこの小説に出てくる場面も、人物も、ほとんどが私たちの言ういわゆる「現実」ではない。
仮想空間というのも愚かしい、私たちには想像できない宇宙でのできごと、しかも一瞬ごとにその様相を変え続ける宇宙のできごとをしれっと小説に、普通に日本語にしようというその感覚が恐ろしい(褒め言葉です)
まあしかし、分かった範囲で強引に、ほんとに強引にまとめると、円城塔が今までにもこだわってきた、「小説を書く」という行為(「書き手と読み手とは」とか「物語るとは」とか「文字と言葉の関係」とか「思考とは」とか、多くの問いかけを含んでいる)を、宇宙の生成にからめて作った物語、だと思いました。

大枠はそんな所だとして、この小説の魅力はちょいちょい差し挟まれる、円城塔ならではの切れ味の鋭いスマートなギャグの数々!
終盤の、ベスターの「虎よ! 虎よ!」を思わせる活字の乱れる配置(ベスターに対する言及も作品中にあったので、明らかに意識してやっています)の中にもこんなのがw

る回る
回 よ
は宇宙


(「回る回るよ宇宙は回る」・・・「回る回るよ時代は回る」のパロとしてだけでも十分可笑しいww)
この宇宙では言葉が存在そのものでもあり、攻撃を受けて「朝戸」が「朝尸」と「一」に分解してしまったり、更に「朝」が「十日十月」に分解してしまったりします。
更には、そこいらにありふれている「死」が「尸」に「ヤドカリのように入り込んで」、「屍」になってしまったり、ともうメタなギャグさえいれてやりたい放題(笑)
「人間を兵器とした艦隊をコレクションする、なんて言葉が通用する時代がくるわけないだろ」
こんなギャグまでありましたww

また、主人公の朝戸がなんか実にカッコ良くて、「いいなあ、この人いいなあ」ってずっと思っていたら、この朝戸という男はもともと、そういう他人を強力に惹きつける魅力、すなわち「ラブストーリー生成能力」によって宇宙の秩序を守らんとする能力者なので、読者である私が「いいなあ」と思うのも当たり前なのですねw
相棒のアラクネの、人類に対して「下等生物」といい放ちながらもけっこう従順な態度もカワイイです。このアラクネからの毒舌に対し、朝戸の返答がまた鈍感というか鷹揚というか、「で、いまの何?」などのすっとぼけた会話なのが実に楽しい。

表紙に描かれる少女は「榎室南緒」で、これもまた重要人物の一人です。(逆さに立っているのは朝戸連、ただしどの朝戸連かは分からない)
作品全体を通して読むと、この二人の少年少女の、いかにも円城塔らしいボーイミーツガールの初恋物語にもなっていて、改めて、この作品は現在までのSF作家としての円城塔の集大成だなあ、と思いました。
私は例によって、何が書いてあるのかサッパリ分からないままに読み終えてしまいましたが、それでも「面白かった」と思い、また、あちこちに伏線らしきものがあったので、すぐにもう一度最初から読み直してみました。
再読することによって「そうだったのか!」と納得する部分も多かったのですが、やはり全然理解できませんでした(T.T)
おそらく、コンピュータの言語やソフトウェアに詳しい方だと、かなりの部分が理解できるのではないかと思います。

「道化師の蝶」あたりで、円城塔は文学の方向に行ってしまうのかなあ、と一抹の寂しさを感じてもいましたが、こんなにSFSFしたSFを書いてくださって本当に嬉しい限り。
円城塔は作家として、すでに世界の文学の最先端に位置しているのではないかとひそかに思っているのですが、まだまだ成長していく余地が一杯ある方だとも思っています。
リアルタイムでこうして新刊を追いかけられる自分は幸せ者です。
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