プロフィール

イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

カテゴリ

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

81txr3Kh8qL.jpg
津原泰水原作、近藤ようこ作画。(株)KADOKAWA発行。
平成26年度文化庁メディア芸術祭 マンガ部門大賞受賞。
2015年「このマンガがすごい!」オトコ編6位

去年の発刊だったのでマンガ好きの方にとっては「何を今更・・・」という感じでしょうが、私は読んだばかりなのでここで叫ばせてください。

傑作だあーっ!

私は原作者の津原泰水が大好きなので、この「五色の舟」という短編も以前に読んでいて、そのすばらしさは十分に知っているつもりでしたが・・・。
近藤ようこさんの、一見ユルい絵柄、はらはらと風に飛んでいきそうな描線、そして時折、はっと意表をつかせるような造形の見事さによって、この、もともと素晴らしい短編(去年、「SFマガジン」誌上で集計されたオールタイムベスト国内短編部門の堂々一位でした)が、更に更に読みやすく、胸に迫るものとなっていました。これをケミストリーと言わずして何といいましょうか?

日本が太平洋戦争を戦っていたころ、「へび女」だの「牛女」だのと、異形のものたちを集めた見世物で暮らす家族があった。
脱疽で両足を失った座長の「お父さん」、彼に拾われて命を救われた一寸法師の「昭助兄さん」、シャム双生児の生き残りの「桜」、膝の間接が逆に曲がる「清子さん」、そして語り手である、両腕のない少年「和郎」。
血のつながりこそなかったが、彼らはお互い助け合い信頼しあう、暖かい「家族」だった。
戦争の敗色が濃くなってきたころ、彼らは「くだん」が生まれたという噂を聞き、それを買い取って見世物の一座に加えるために、岩国まで短い旅をする。「くだん」とは人間の顔を持つ牛で、未来のことを正確に言い当てる事ができるという。
ようやく目のあたりにした「くだん」の語る言葉とは・・・!

↑ネタばれしたくないのでほとんど設定しか書いていないのですが、この設定からしてかなりの問題作というか、型破りなものであることは分かると思います。津原先生も、後書きで「この作品は発表できないかもしれないけど、書かずにいられなかった」とおっしゃっていました。
そう、彼らは全員フリーク、異形。
身体障碍者、という言い方をしてしまうと何か違う。障害ではなく、異形なんです。そして彼らは、異形であることに誇りを持っている。自分たちを「特別な存在」だと思っている。
そう思うのは、座長でもある「お父さん」の、家族に寄せる暖かい愛のおかげでもあるのですが・・・。

「五色の舟」の更に凄いところは、後半にあっと驚くSF展開があるところ。
特に「くだん」の正体が凄いのですが、この「くだん」の喋り方がまた妙に知的で面白いのよ。更に作画では、「くだん」の造形も凄くて、一目見たらもう、「ああそうか、くだんってこういう生き物なのか!」って忘れられなくなります。
近藤ようこさんというマンガ家さん、初めて読んだのですが、力の抜けた簡単な線ですが人物の顔立ちが非常に魅力的で、特に若い頃は花形役者だったという「お父さん」の二枚目ぶりや、背骨が曲がったままの「桜」のほっそりした美少女っぷりなど、原作では見えてこなかった姿がはっきりと見えて、登場人物一人ひとりのことが大好きになってしまいます。
あと、64pの産業奨励館の絵、70pの見世物一座のショーの絵など、作品全体をビシッと締める力のこもった絵が素晴らしいです。
よく「画力が高い」と言いますが、例えば「バクマン」や「デスノート」の小畑健がこの作品を漫画化しても、読み手の情緒にここまで訴えることはできないのでは。近藤ようこ先生の絵のかもしだす、抜け感というか空気感、そういったものの大事さを改めて感じました。描きこみが多けりゃ、画力が高けりゃいいってもんじゃないよね・・・。

この作品、れっきとしたSFであちながら、読み終わるとSFとしてのワンダーよりも、切ない抒情性が胸に残ります。感動的です。
「幸せって何だろう」そんな事まで考えさせる、人生を凝縮したような作品でもあります。
下の娘はこの本を読んで「こんなに面白い本ってあるんだね」と言っていました。
津原先生の小説がこんなに素晴らしいコミックスになって、なんだか私まで嬉しい気持ちです!
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://isaac936.blog.fc2.com/tb.php/1288-b339e7ca

 BLOG TOP