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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
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 朔田流星、という名前は、本当は二郎のためのものだった。

 反ゾディアーツ同盟の下部組織の一つ、表向きは児童保護施設(名称は明かせない)であるところの、戦闘員養成所でおれたちは育った。
 全国の孤児院や養護施設に、反ゾディアーツ同盟の職員が直接出向き、IQのずばぬけて高いもの、身体能力の高いもの、を選抜していった。まだおれたちが、小学生だったころの話だ。おれも二郎も、そうやって集められた子供たちだった。だからおれたちは、親の顔を知らない。

 親代わりとなっておれたちを指導したのがタチバナさんだった。
 初めは、ただ普通に学校へ通い、帰ってからは特別授業や格闘技の基礎的な手ほどきを受けるだけだった。おれたちはエリートを養成する、特別な施設で育てられる、と聞かされていたから、授業や訓練の内容がだんだん厳しくなっていっても、つらいとは思わずむしろ誇らしい気持ちだった。
 半年も経つと、集められた子供は半分に減った。知的にも体力的にも、ついていけないと判断された奴は、容赦なく元いた場所に戻された。
 一年後に、また半分。二年後に、更に半分。
 そのころには、残ったおれたちは全員、すでに一人前の戦闘員としての能力を身につけつつあった。タチバナさんの課す訓練は日ごとに厳しさを増していったが、音を上げるものなど一人もいなかった。おれを含めて、全員が、自分ならこのくらいの事は出来て当然だ、という強いプライドを持っていた。
 昼は普通の中学生に混じって学校に通い、夜はハードなトレーニングに耐え抜いた。
 
 そうして五年が経ったある日、タチバナさんはおれたちを集めて言ったのだ。おれたちが集められ、鍛えられた、その本当の理由を。
「ゾディアーツ」という組織の存在、そしてそれに立ち向かうための「反ゾディアーツ同盟」のことを。
 おれたちは、全宇宙をも崩壊させかねないゾディアーツの活動を阻止するために、国際的な協力のもとに極秘裏に育てられた戦闘員であることを。
 そしてタチバナさんはこう言った、君たちの中で、ただ一人選ばれたものだけが、メテオになれる、と。

 メテオ構想はまだその時点では端緒についたばかりだったが、反ゾディアーツ同盟の最先端の技術を結集して作られる、装着スーツ型超戦闘システムであると説明された。設計図を見せられたおれたちは、メテオの変身システムに夢中になった。全員が、自分たちの今までの訓練は、このスーツを着るためにあったのだと思った。
 だが、メテオに変身できるのは一人だけだった。今思えば、タチバナさんも汚い手を使ったものだ。
 それまでもおれたちは、お互い仲間や友人というよりは、蹴落としあうライバル同士だったのだが、メテオシステムの話をされてからは、完全にお互いを敵視するようになった。もちろん、表面上は微笑みさえ浮かべてなんの問題もなく会話を交わす。だが、心の底では誰のことも信用していなかった。後におれたち全員に課せられることになる、さまざまな場所への潜入捜査、ようするにスパイ活動のための訓練に、これほど役にたったものはないだろう。
 おれたちは、その気になれば人当りのいい笑顔を完璧に作ることができる。

 おれにとって、二郎だけが例外だった。
 同じ日に入所して、その後もずっと同室だった、という事もあるのだろうが、おれは二郎にだけは本心を話す事ができたし、それは二郎も同じだった、と思う。いや、そう思いたい。
 二郎とおれは切磋琢磨して、お互いを鍛えていった。メテオシステムの話を聞いた時も、スーツが二着あれば、二人で着られるのになあ、と笑いあった。おれと二郎は学力でも体技でもトップを争っていたから、まったくの冗談というわけでもなかった。そしておれは、内心、自分の方がタチバナさんに気に入られている、メテオになれるのは自分だ、と思い込んでいた。

 そしてある日、おれは一人でタチバナさんに呼び出された。
 おれは思った、ついに自分がメテオに選ばれたのだと。だが、タチバナさんは、二郎がメテオに選ばれた、とおれに告げた。そして、黒い卵のようなものをおれに渡して言った、これがゾディアーツのスイッチだ、これがあれば、超人的な力が手に入る、と。
 すべてはタチバナさんの計算だったのだろうか? 
 今考えても、なぜタチバナさんがおれにあのスイッチを手渡したのかがどうしても分からないのだ。

 おれは部屋に戻った。二郎が待っていた。
 おれの中には、二郎への嫉妬と憎しみが渦を巻いていた。だからおれはつい言っってしまった、おれがメテオに選ばれた、もしお前がメテオになりたいのなら、その黒いスイッチを押してゾディアーツの力を得て、おれを倒すんだな、と。
 二郎は静かに笑って、おめでとう、と言った。君ならなれると思っていたよ、と。
 それを聞いておれは自分の惨めさに気が狂いそうになったが、その場で嘘だ、済まなかった、と謝れるほど素直でもなかった。

 明日になったら、謝ろう。そして祝福しよう、ただ一人の、友人を。

 もうその日は何も考えずに眠ってしまいたかったが、いろんな思いが胸をよぎってなかなか寝付かれず、真夜中過ぎになってふと気付くと、二郎がそっと部屋を出ていく所だった。二郎の気配が完全に消えてから、おれは身体を起こした。机の上に置いておいたはずの、ゾディアーツのスイッチが無くなっていた。黒い雲のように嫌な予感が胸に湧き出てきて、おれは静かに立ち上がると二郎の後をつけて、外に出た。

 二郎は、ゾディアーツのスイッチを持って立っていた。おれがつけてくるのを、分かっていたようだった。顔付きが、すでにいつもの二郎ではなかった。
 二郎はおれの顔を見てひきつったように笑い、よく来たな、と言った。そして、メテオになるのはオレの方だよ、と続けて言った。
 おれは自分がしてしまったことを激しく後悔しながら、必死で二郎に言った。違う、本当はメテオに選ばれたのはお前の方だ、おれは悔しくてつい嘘をついた、許してくれ、と。
 二郎はおれの話を聞こうとしなかった。ごまかさなくていいよ、そうだよなあ、お前はタチバナさんに気に入られていたもんなあ、そう言ってまた、くつくつと笑った。オレはお前とはずっと友達だと思っていたけど、お前はそうは思っていなかったんだなあ、そう二郎は言って、握りしめた黒いスイッチを見せた。
 駄目だ、それを押すんじゃない、人間でなくなってしまうぞ、とおれは言った。
 お前が言ったんだぜ、メテオになりたかったらその前にまずゾディアーツになれ、って。友達がいがあるよな、そんないいアドバイスをくれてさあ、二郎はまた、ひきつれた笑いを見せてそう答えた。 
 それを聞いておれは、とうとう言ってしまったのだ、もうお前なんか、どうなってもいい、と。

 二郎が昏倒し、二度と目覚めなくなってしまってから、おれは自分のおかした罪の深さに恐れおののき、そして誓ったのだ。二郎を目覚めさせ、そして謝罪の言葉を聞いてもらう為なら何でもする、と。
 二郎のベッドの脇に座り続けるおれのもとに、メテオの変身用ベルトが届いたのは、それから二、三日経ってからだった。
 おれはもう、反ゾディアーツ同盟にもメテオシステムにも、興味を失っていた。ベルトは返して、誰か別のやつをメテオにすればいい、と言った。
 そうしたらタチバナさんが答えたのだ、二郎を回復させるにはゾディアーツの幹部、アリエスの力が必要だ、その為には君自身がメテオになって、ゾディアーツの動きを探るのが一番の早道なのだ、と。
 そう言われてしまえば、おれには選択の余地はなかった。タチバナさんは、優秀で忠実な戦闘員を手に入れた。そう、おれは絶対にタチバナさんには逆らわない。
 朔田流星、という名前は、メテオに変身するものの為に用意された名前だ。本当なら、二郎のものになるはずの名前だった。
 おれは今、その名前を名乗り、メテオとなってゾディアーツと戦っている。

 今でも思っている、すべてはタチバナさんの計算だったのだろうか、と。


(「最後に、もう一度だけ」に続く)
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現時点でギリギリな感じの勝手な設定、作っちゃいました~!
次週にもひっくり返りそうです。
はかない花のようなひと時を楽しんでいただけたら幸いです。
まあ、「パラレル」っていう便利な言葉もあるけどね(笑)
ところでタチ流はアリだと思います。
ってか、厳しく調教される有能な少年、って好きだ(変態ですみません)。



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