プロフィール

イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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 どことも知れぬ場所、いつとも知れぬ時間、特定できない次元。

 黒い影がいくつか静かにより集まって、ひそやかな会話を交わす。
「クスクスクス。小岩戦隊、なかなか頑張っているようだね」
「今までのが、ヘビだのハートだのでしょう。まあ、あれくらいはサクサクと処理してくれないとね」
「期待を高めるだけ高めておいて、叩き潰す、というのもいいんじゃないですか?」
「とりあえず、もうしばらくはお手並み拝見、といったところか」
 彼らの名前はダークグリード、その最高幹部と呼ばれるものたちだ。
 一説によれば、彼らの血は青い。爬虫類のDNAを組み込んでいるからだ。
 彼らの祖先は、紀元前から地球に存在していると言われる。人類を家畜としか見なしていない、残虐な種族である。
 興味がおありの方は、「爬虫類 遺伝子 人類支配」あたりで検索してみて欲しい。トンデモサイトに飛んじゃうけどね。
 とりあえず今は、爬虫類っぽいのはダークグリードの最高幹部たちだということ、怪人たちは必ずしもヘビやトカゲばかりではない、という事をおぼえておいて欲しい。
 真樹子は適当な事を言っていたわけではない、という事を。


 *  *  *


 なんと、江戸川区長からのじきじきの呼び出しである。
 発足してからほぼ一か月、ぬるくなりかかっていた戦隊本部の空気に、一気に緊張が走った・・・!

「いや、本日は皆さん、お忙しいところをご足労いただきまして。小岩戦隊も、なかなか有名になりましたな。私もかるがも広場でのパフォーマンスを見ましたが、実に素晴らしかった。これからも、小岩の知名度を全国規模にするために、頑張って欲しいものです」 痛快かつワンマンと評判の高い区長からそのような言葉をかけられて、ひたすら恐縮する戦隊本部の面々、マキコと他三人。
 ここは、江戸川区役所の最上階にある、区長専用の応接室。
 区役所にそんな部屋はありません、だって?
 それはそうだ、この部屋は空き部屋という事になっていて、その存在を知るものは区長以下、ほんの数人。要するに、区長が非公式な会見や、公務以外の密談をするときのための秘密の部屋である。ここでの会話は一切記録されない。政治の世界の話である、多少のことは目をつぶってもらいたい。
 幸いなことに、クリーンな江戸川区の区政において、この部屋が使われることは滅多にない。今日は数少ない例外、というわけである。
「インターネットでも、『小岩戦隊』の検索数がうなぎ登り、とか。小岩南口商店街の皆さんも、いい所に目をつけたものですよ。はっはっは」
「あの、区長・・・? 私たちは別に、商店街の販売促進の為に毎週戦っているわけではなく、・・・いえ、そういった側面もありますが、あくまでも小岩の町を守るため、ひいては世界の平和と発展の為に戦っているわけでして・・・」
「その構想も、実に壮大ですなあ、はっはっは。やはり、子供には夢を与えないと。今後の皆さんのご活躍、楽しみにしておりますぞ。どうかこの先も、よろしくお願い致します」
 そう言ってやにわに立ち上がり、両手と両膝を床について、区長は深々と頭を下げた。
 土下座、である。
「く、区長さん! やめて下さいそんな! イエ戦隊はもちろん続けます。続けますから!」
 区長は笑みをうかべ、ゆったりと立ち上がった。
「それを聞いて安心しました。・・・おっといけない、来年度の予算をチェックしないと。では、私はこれで失礼・・・後の話は、こちらの小谷君と続けてください」
 そう言って区長が後ろを振り返る。そこには、グレーのスーツを着たまだ若そうな女性。一つにまとめた黒い髪、ちょっと値の張りそうな眼鏡。コスプレでもしているのかと疑いたくなるほど、典型的な女性秘書である。 

 区長が立ち去ると、この女性が代わりに小岩戦隊の面々の向かいに腰を下ろした。小谷と申します、以後よろしくお願いします、と言って差し出された名刺には、
 
 江戸川区区役所 区長室付 小谷慶子

 とだけ、書いてある。
 あとは下の方に小さく電話番号。

 小谷は手に持った分厚いファイルを開きながら言う。
「・・・さて、小岩戦隊の皆さん、改めて本日はようこそおいでくださいました。区長は多忙につき、ここからは私が皆さんのお相手をさせていただきます」
「あの、小谷さん・・・? 区長さんは何か、勘違いされているのでは。小岩戦隊は確かに当初、商店街の販促活動の一環として始まりましたが、今では実在の悪の組織から町を守るために戦っているんです。南小委を通じて、その間の経緯も提出しています」
「『松戸レポート』ですね。読ませていただきました。南小委の方々は、あれを『設定資料集』と捉えていらっしゃるようです」
「設定・・・って、まさか?」
「よく作り込んであるよなあ、と皆さん感心していましたね」
「そんな、『これは演出ではありません』って、何度も念を押したのに・・・」
「その真剣ささえも、演出と思われているのですよ。いえ確かに、当初は南小委も松戸レポートの内容を半信半疑ながら、信じる方向に傾いていたのです。しかし、この内容をすべて信じるなら、失礼ながらあなたがた小岩戦隊などに頼るのではなく、警官隊や自衛隊の出動を要請した方が良い、と常識では考えますよね。区長は南小委からこのレポートを渡されたとき、それをまず考えたのです」
「そ、それは確かにそうかも知れませんが・・・」
「しかし、ダークグリードの出現のタイミングは予想が難しい。自衛隊を出動させて、区内にいつまでも待機させるわけにも行きません。もし何も来なければ、小岩の町は全国の笑いものになります。なので区長はしばらく様子を見ることにしました。苦渋の決断だったと思います、自分の責任で、小岩の住民に被害が及ぶのを見過ごしてしまうかも知れないのですから。しかし区長はあなたがたを信頼することにしたのです。あなたがたが小岩の町と、住人たちを守ってくれるだろう、と。区長はかるがも広場での、あなたがたの活躍を知っていますからね」
 ちなみに私も、あの時あそこにいたのです、と小谷はつけ加える。
「さて、それでしばらく様子を見るうちに、やはり自衛隊の出動要請はしない方向に決定しました。理由といたしましては、例えば前回のハート怪人、あんな術に自衛隊員がかかって騒ぎになったら、今度は日本の自衛隊が世界の笑いものになります」
「それ、小岩戦隊は笑いものになってもいいって意味スかね・・・?」
「あなたがたは、それだけ住民に親しみを持たれていると考えてください。それに、自衛隊の武器や兵器を使用した場合、ある程度の建物や道路の破壊は免れません。今までの所、あなたがたの戦いによって報告された器物の破損は、かるがも広場の樹木の枝が数本と、カメ怪人の時にバスの上に飛び降りた際の屋根のへこみ、前回黄色いスーツの方が壁に当たった際にできたガラスのひび割れ、以上です。区長が軍隊に頼るよりあなた方にお任せした方がよい、と判断されるのも無理はありません」
「まあ、その方が安上がりだしな」
「そこで区長は、小岩戦隊の戦い自体を、パフォーマンスとして見てもらう事にしたのです。南小委の方々にも、実はあれは江戸川区が演出に手を貸している、苦情があったら区長室まで、と伝えてあります」
「ど、どうしてそんな事を・・・」
「『黒い猫でも白い猫でも、鼠を捕るのが良い猫だ』という言葉をご存じですか? 要は小岩の町が守られて、副次的に小岩の知名度が上がれば良いのです。その為にもっとも有効なのは、このまま皆さん小岩戦隊の力を借り続けること。いたずらに住民の恐怖心をあおって、パニックが起きるのも避けたいところです。正直に申し上げて、南小委も区長も、あのレポートは設定資料集だと思った方が気が楽ですし、現時点ではすべては良く出来た演出だった、と思えないこともないのです。まず第一に、あなたがたが倒した怪人の、残骸がまったく残っていない、という点。最後は爆発炎上してしまうにしても、跡形もなく消えるのは不自然です」
「彼らは未来から生体エネルギーを溜めてこの時代にやって来ているの。だから、生命が失われればその残骸は未来へと戻ってしまううんです」
「なるほど。第二に、怪人たちに直接攻撃を受けた人の多くは、そのことを憶えていない、という点」
「精神攻撃を主体とする怪人の術にかかった場合、その間の記憶を失うのはよくある事です」
「確かに。第三に、怪人たちの攻撃はほとんど対人攻撃であり、建物や器物の破損がほとんど見られない、という点」
「それは・・・彼らの狙いが、町の破壊ではなく、あくまで小岩戦隊と小岩の人的資源、つまり小岩住民の抹殺にあるからです」
「その通り。第四に、未来社会からやってきたはずの怪人たちが普通に日本語を喋る、という点」
「『パックス・コイワーナ』の時代に、日本語が世界標準言語になるんです」
 小谷は微笑した。
「・・・区長の解釈とまったく同じですね。しかし、客観的に見た場合、いかにも不自然です。派手な着ぐるみの怪人が現れる、人気の多い場所で暴れるが、小岩戦隊によって倒される。しかしその場所にはなに一つ痕跡は残っておらず、人的な被害もほとんどない。・・・そもそも、あの怪人たちに、真剣さが見られない、と言ったら変でしょうか。・・・戦隊員の皆さんが毎週真剣に戦っていらっしゃるのは分かっています。しかし、例えば先週の、あのピンクのハート怪人、あれを見て、まだ松戸レポートの信憑性にまったく疑問をいだかない人がいるでしょうか」
「確かに、あれはひどかったけど・・・。でも、襲われた人たちの中には、記憶を失わなかった人も多いはず。あの、ヘビの被害に会った人たちは・・・?」
「胸に穴をあけられた人たちですね。術が解けると、当然穴はふさがりますし、痛みも消えます。その後、病院へ行った人も何人かいたようですが、話を聞いた医師に、恐ろしい怪人を見たので発作が起きたのでしょう、検査の結果異常はありませんからご安心ください、と言われ、そんなものかと納得してしまったようですね。直接被害に会った人たちの中でも、自分が本当に怪人の被害に会ったのか、それとも大規模なショーに巻き込まれたのか、よくわからない、という人が大半なようです。凝りに凝った設定で、毎週前触れなく派手なパフォーマンスを繰り広げる、小岩名物の新戦隊。客観的に言って、今のあなたがたはそう位置づけられています」
「そんな・・・」
「少なくとも区長は、あなたがたのやっている事をすべて理解した上で、表向きはそう振る舞っています」
「私たちのやっている事は、遊びだと思われているの・・・」
「違います、誤解しないでください。現時点では、あなたがたは皆からそう思われているのが一番平和なのです。区長はあなたがたの味方です。先ほどの土下座はそういう意味です。この先、困った事があったら何でもおっしゃってください。先ほどの名刺に書かれている電話番号は区長室直通です。私どもからも、緊急の連絡を入れさせていただく事があるかと思います。それと、秘密裡に本年度予算より戦隊予算も捻出させていただいています。次月から口座に振り込ませていただきます。・・・この一か月で区長は二回も胃に穴が開きました。他区や都庁、それに私以外のすべての江戸川職員からの問い合わせに、いやあ、ちょっと派手すぎますかね、はっはっは、と笑って対応する区長の心労をお察しください。実は今も、予算のチェックではなく極秘で消化器科に行っています。区長たるもの、職員の前で体調の不安を見せる訳にはいかないのです」
「区長さんも大変なんですね・・・」
「その通りです。私は、区長のもとで働きはじめてまだ日が浅いのですが、区長をサポートすることを通じて少しでも江戸川区民の、そしてひいては全人類のお役に立ちたいと考えています。具体的には、江戸川区の小岩戦隊への窓口が私である、という事です。以後、よろしくお願いします」
 そう言って小谷は、四人を前に深々と頭を下げるのだった。

「それと申し上げるまでもないことですが、本日の話の内容はくれぐれも内密に、お願いいたします」
 小谷にそう念を押され、区役所を後にする四人。
 とりあえず昼食時だったので、手近な店に入って食事をとりながら今の話の内容を検討する。
 もちろん隣のテーブルに聞こえないよう、角の席で、声をひそめて。
「・・・ええと結局、区長は小岩戦隊をヤラセだと思ってる、って事ッスか」
「馬鹿が。何のために小谷さんがあそこまで丁寧に説明してくれたと思ってるんだ。『ヤラセだと思っているように見せかけて、信じているから助力は惜しまない』と言ってるわけだろ」
「小谷さん、知的で有能そうな方でしたねぇ・・・。あんな人に『あなたがたの味方です』なんて言ってもらっちゃって・・・」
「お前は黙ってろ!」 
 ケンタとシュートから同時に言われたハルは、それでもめげずに言葉を続けた。
「・・・言ってもらっちゃって、区長にも土下座までされて、僕たち頑張らなきゃいけない、って事ですよね!」
 先週の騒ぎから一週間、ケンタとシュートにあの手この手で鍛えられ、とりあえず「女性と普通に会話ができる」というレベルまでは何とかこぎつけた、ハル。眼鏡も黒縁に変えたようだ。効果のほどは分からないが。
「とにかく、私たちは今まで通りでいいって事よね。それから、南小委に『今回のはまた派手だったねえ』とか言われても、黙って耐えろ、と」
「まだ一か月しか経ってないんだ。危機感が足りなくても無理はないし、おれたちが被害を最小限にとどめるように戦い続けて、最後まで『演出』で押し通せれば、それが一番いい、って事だよな」
「そうね・・・でもダークグリードはまだ本気を出していない気がする・・・」
「おれもだ」
「僕も」
「オレも、そう思ってたッスよ・・・」 

 シリーズが進むにつれ、敵のランクと強さがアップしていくのが戦隊物、いや特撮ヒーロー物の常である。
 今までのダメダメ怪人相手にすら、全力で戦って更にラッキーにも助けられつつ、何とか切り抜けてきたサンフラ和ーだったが、この先の保証は何もない。
 全員が意気消沈してテーブルに重い空気が立ち込めたが、その時店員が、お待たせいたしましたあ、と言ってカツ丼だのちらし寿司だのを運んで来てくれたおかげで、しばらくは皆、うん、うまいうまい、しか言わなくなり、食べ終わって満足した時には四人の顔には笑顔さえ戻っていた。実に現金だが、人間、そんなものだろう。
「そうそう、みんなが言ってた三人それぞれの新しい武器、パパに頼んであったのが今朝完成したの。まだ試作段階なんで、きちんと作動するか分からないんだけど、もうみんなのチェンジャーに転送されているはず」
「ファイヤーバズーカ、スプラッシュバズーカ、サンダーバズーカの事ッスね!?」
 ケンタが嬉しそうに言う。子供が新しいおもちゃを買ってもらった時と同じ反応である。概して、男の子というものは「武器」と名のつくものは大好きである。
「出力を細く絞ることも広範囲に広げることも出来るから、使い慣れれば有力な武器になると思うわ。ソードモードに応用する事も可能なの。その場合は、ファイヤーブレード、スプラッシュブレード、サンダーブレード。チェンジャーにそう言えば、起動します」
「サンダーブレードかあ。カッコいいですね!」
 ハルも嬉しそうだった。もともと、三人それぞれに武器が欲しいと言いだしたのもこの男である。戦隊ならそれが当然、と言い張って。
「こんなに早く使えるようになるとは思わなかったな。マキコさん、あんたの『パパ』には色々言いたい事もあるけど、少なくとも天才だって事は認めるよ」
「ウフフフ当然でしょ! あと、注意点としては、これらの武器は生体エネルギーを大量に消費するから、連続しては使えません。使い終わった直後はエネルギーが極端に低下、要するにものすごく疲れるから、必ず、決め技として使うこと。無理をして使い続けると、あなたたちの体力がどんどん落ちて、変身も解けてしまうので気をつけて。じゃあさっそく、江戸川の土手に行って使い方をマスターしましょう。それと今朝は、午前の部のトレーニングが出来なかったから、それは午後に回します」
 おなじみの、えー、マジすかー、というリアクションが続くのだが、省略。

 
 さて、四人がこんな会話をしていたころ。
 江戸川区役所では。

 机の上のパソコンに向かい、住民の転入・転出のリストを更新していた職員のA子。
(あれ? おかしいな)
 キーボードの反応が悪くなって、キーを打っても文字に変換されない。
(どこか変な所、触っちゃったかな・・・)
 あわててあちこちのキーを押してみたが、効果はない。
 A子はあまりパソコンに詳しい方ではない。こんな時いつもそうするように、同僚のB子に助けを求めようとして隣を見ると、B子は離席していて、パソコンにはスクリーンセーバーらしき画面が映っていた。
(あれ・・・? B子のって、こんな画面だっけ・・・)
 黒っぽい画面にロゴがひらひら飛んでいるような画面だったと記憶しているが、今映っているのは、白や青、水色の四角いタイルが、規則的にカシャンカシャンと組み変わっていくような画面である。
 ふと自分のパソコンに目を戻すと、そこでも、映っているのは四角いタイルの画面だった。
(やだ。何これ・・・)
 見ているうちに、青いタイルが組み替わって画面に並んだ。カタカナの「コ」に見える。
(『コ・・・?』)
 次にまた画面に現れたのは、「イ」の文字。次々に、「ワ」「セ」「ン」・・・と、続く。
(『コイワセンメツ』・・・『小岩殲滅』!?)
「おい、何だこれ・・・!」
 A子の周囲の席でも、同僚たちが騒ぎ始めた。立ち上がってみると、フロアのすべてのパソコンの画面に、コイワセンメツコイワセンメツ・・・と青い文字が次々に表示され続けている。
 切り替わるスピードがどんどん速くなり、もはや青と白の点滅としか思えなくなった時、とつぜん、画面いっぱいに、青いタイルを張り付けた怪人の顔が大写しになった。
「きゃははは! 江戸川区職員のみなさーん! 今日もお仕事ご苦労様。パソコン画面は眼に悪いタイル、ちゃんとブルーベリー採ってタイル?」
 うわあっ、と驚き、がたがたと席を立つ、職員たち。
 そしてすべての画面から、タイル顔の怪人一人ずつが、そのままのそのそと画面の外に這い出て来た。有名な恐怖映画のワンシーンのように。 
 A子は悲鳴を上げ、逃げようとした。
 ところがなぜか、足元の何かにつまずいて転んでしまう。じっと見ても、そこには何もない。だが手を伸ばすと、確かにそこに、何か四角くて硬いもの、そう、大きなタイルのようなものが立っているのがわかる。
 廊下を走って逃げようとした職員たちも、次々に、何か空中の見えないものにぶつかったりつまづいたりして、倒れてしまった。
 画面から出てきたタイル怪人たちは物理的な攻撃こそしないものの、奇声をあげて逃げ惑う職員たちを追いかけ回し、区役所の中は完全にパニック状態と化した。


 四人が店を出ると、目の前の江戸川区役所の建物の出入り口から、職員が何人も、恐怖におびえた顔で走り出てくる所だった。建物の中からは、悲鳴も聞こえる。
「これは、まさか・・・!」
 緊張する四人。マキコの携帯が着信する。小谷からである。
「小岩戦隊の皆さん、ダークグリードです、区役所に出現しました。サイバー攻撃のようですが、詳しい事はわかりません。中庭に、怪人の本体らしいものがいるのが見えます、救援、お願いします!」
「分かりました、すぐ向かいます」
 それだけ言ってマキコは三人の方に振り返る。
「中庭よ、すぐ行って!」

 区役所の中庭は自転車置き場も兼ねている。壁際には自転車が並び、中央が大きく空いている、その真ん中に、青・白・水色、三色のタイルを張り付けたような怪人の姿があった。
 走りながら変身したサンフラ和ーの面々、赤・青・黄色の三色のスーツ姿が、それに向き合う。
「出たなタイル野郎、銭湯の床みてえな色しやがって。真面目に働いてる職員の皆さんに何しやがる!」
「きゃははは! オレ様は電脳タイル。昔のサイバーテロ対策はユルいタイル。役所のお仕事、こんなに簡単にジャックできちゃっていいのかタイル。そっちのネットも、・・・やっぱり簡単タイル」
 三人のマスク越しの視界に、一瞬、青と白の模様がチカチカと点滅したかと思うと、すぐ消えた。
「何だ、今のは・・・。博士が送った通信じゃないようだが・・・」
 三人のマスクは本部の松戸博士とネットで繋がっていて、必要があれば見取り図やマップなどを視界の隅に表示してもらえるようになっているのである。
「今のはオレ様が送ったタイル。小岩戦隊、電脳空間へようこそタイル!」

 タイル怪人がそう言い終わるか終らないか、という時。
 中庭に冷たい空気が流れ込んだ。と、思うといつの間にか、タイル怪人のすぐ後ろに、もう一人の怪人が立っていた。中世の騎士のような銀色の鎧に身をつつみ、顔は隠されていて見えない。
 三人は、その騎士の姿を見ると急にぞくっと寒気を覚えた。理由は分からない、ただ、その騎士の周りの空気は明らかに他とは違っていた。
「さて、小岩戦隊の諸君、今回はこの電脳タイルを、どうやって倒すつもりかな」
 騎士が三人に声をかけた。声からして、中に入っているのは若い男のようである。
「ちょっと諸君に興味が湧いてきてね、今回は見物させてもらおう。・・・私の事は気にせず、このタイルと戦ってくれたまえ」
 そう言うと若い騎士は、出てきた時と同じように唐突に姿を消した。

「ケンタさんシュートさん、今のは明らかに、中ボスですよ・・・。今までの怪人とは違う・・・!」
「うん、なんかオレあいつ見た時、ぞっとした・・・」
「この、しゃべるタイルとは全然違うオーラだったぞ・・・」
 思わず三人が交わした言葉を、電脳タイルの高笑いがさえぎった。
「きゃははは! 目の前の敵を軽んじるとは、小岩戦隊も偉くなったものタイル。余裕をかますのは、このオレ様を倒してからにしないと恥ずかしいタイルよ?」
「そうだったな。こんなやつに言われたら、本気で恥ずかしい。さっきのやつならともかく」
「きゃははは、あくまでもオレ様を馬鹿にするつもりタイルね? いい度胸タイル、褒めてやるタイル」
「このタイルに褒められても、全然嬉しくありませんね。さっきの騎士ならともかく」
 電脳タイルは、もうきゃははは、とは言わなかった。代わりに、片手をさっと上げた。
 中庭の四隅から、トカゲ頭の怪人たちがキイキイ言いながら次々に現れ、三人に襲い掛かった。
 サンフラ和ーの面々はソードを起動させて、それを迎え討つ。
「オーケー、さあ始めようぜ!」
 
 群がってくるトカゲどもと戦いながら、三人は違和感を覚えていた。
 何か、動きが妨げられるのである。走ろうとすると、何かにつまづく。ジャンプしようとすると、頭や肩口を何かにぶつける。なにかあるのかと思って目をこらしても、何も見えない。
 おかげでトカゲ相手にずいぶん手間取ってしまったが、そこは一か月の訓練を積んだ戦士たち、何とか全員を片づけて、三方から電脳タイルを取り囲んだ。
「早いとこお前を倒さないと、職員の皆さんの仕事に差し支えるんでね、悪く思わないで欲しいッス」
「そうだ、区長さんの胃にこれ以上穴をあけるわけにはいかないからな」
「僕はあの小谷さんの気苦労をこれ以上増やしたくないですよ」
 そう言って三方から同時に切りかかった、が・・・。
 三人の振り下ろした剣は、空中で何かに当たって跳ね返った。
「畜生、まただ! 一体、何があるんだ!?」
「きゃははは! お前たちはもうオレ様の支配する空間にいるのタイル。目に見えるものがすべてとは限らないタイルよ?」
「何の空間ですって・・・? いつの間に、そんな・・・」
「あの時か・・・! ほら、さっきの点滅してる青いタイルの映像・・・、」
「きゃははは、大当たイル! あの映像で、お前たちの視覚神経を通じて意識下の変更を加えさせてもらったイル。お前たちの目には見えないだろうが、この中庭にも区役所の建物の中にも、オレ様がバラ撒いたタイルがいっぱい浮かんでいるのタイル。きゃははは、オレ様の周りは特に幾重にも囲ってあるタイル、剣も銃も、役に立たなイルよ?」
「本当だ! ビームも通じない!」
 ガンモードに切り替えて攻撃を試みたシュートが、幾度も狙いを変えながらレーザービームを撃ったが、ことごとく途中で何かに遮られてしまう。
「どうすればいいんだ・・・?」

 突然ハルが、あっ、と叫んで、チェンジャーに何事か囁いた。
「・・・ハル!? どうしたハル!」
 ハルは変身を解き、私服に戻ってしまった。
「大丈夫です心配ありません! ちょっと、探し物です・・・ああ、あった!」
 そう言ってハルがポケットから取り出したのは、アイフォンだった。
「ケンタさんちょっと持ってて!」
 そう言ってケンタに手渡し、すぐにまたスーツ姿に戻った。
「手に持ったままだと、たぶん分子に分解されてスーツの素材になっちゃうんですよね」
 そう言いながら返してもらったアイフォンを、ハルはマスクの上から、目の位置にかざしてみる。
「ああやっぱり・・・。これで見えますよ、空中のタイル」
 ほら、と手渡されたアイフォンを、目の上にかざしたケンタは、驚いて声をあげた。
「ほんとだ! スゲー、見える!」
 アイフォンの画面ごしにはっきりと空中に浮かんでいるタイルが見えるのだ。手を伸ばして触ってみると、確かにその位置にタイルがあるのが分かる。
「すごいぞハル! よく思いついたな」
 ケンタからアイフォンを渡されたシュートも、驚きの声を上げる。
「僕、それで初号機見に箱根まで行きましたからね!」
 と、ハルは応じたが、他の二人には意味が通じなかったらしく、二人とも返事を返さなかった。
「とにかくこれで、どこを狙えばいいのか分かったぜ! 今度こそ、覚悟しなタイル野郎」
 
 片手でアイフォンをかざし、もう片方の手でレーザーガンの狙いを定めるケンタ。
「きゃははは、その赤いのはさっきから喧嘩っ早いタイルね。でも残念、さっきも言ったとおり、ここはもうオレ様の支配する空間なのタイル・・・」
 そう言って電脳タイルは両手を頭の上でぐるっと回した。
 ゴウッ、っという音がして、三人に風が吹き付けた。アイフォン越しに見ていたケンタが、畜生やばい、とつぶやく。
「空中のタイルが全部、すごい勢いで回転しはじめたッスよ! これじゃ、狙いもつけられない・・・!」

 立ちすくむ三人に、電脳タイルは高笑いを投げかけた。
「きゃははは、もうおしまいなのタイルか? それじゃあ、こっちから行くタイル。くらえ、タイル散弾銃!」
 電脳タイルが叫ぶと、青や白、水色の無数のタイルがすさまじい勢いで三人に襲い掛かった。
「ぐ・・・あぁっ!」
 スーツ越しとはいえ、タイルの直撃を受けた三人は吹っ飛ばされて壁際の自転車の中に突っ込んだ。
「くっ・・・!」
 からまった自転車を振りほどきながら、何とか立ち上がる三人。
「どうすれば・・・打つ手がないッス・・・!」
「新しい武器、何とかうまく使えないでしょうか?」
「きゃははは、しぶといタイル。それもう一発、くらえタイル!」
 電脳タイルのタイル散弾銃が、再び三人を襲う。三人は身をかがめ、自転車を楯にして何とか直撃を防いだ。
「・・・よし、思いついたぞ。博士の作ってくれた武器、うまく作動するといいが」
 シュートがそう言って、他の二人にひそひそと耳打ちをする。
「・・・それ、うまく行きそうッスね」
「さすがですシュートさん。後は、まかせて下さい」

 まずシュートとハルが、壊れた自転車を持ったまま立ち上がり、ケンタの楯となる。
 その間にケンタはファイヤーバズーカを起動させる。今までのガンモードとは違い、ずっしりと重い巨大な武器が出現した。とりあえず肩に担いで銃口をタイル怪人の方向に向け、トリガーに指をかける。
「出力は絞ることもできる、ってマキコさん言ってたけど・・・どこ動かせばいいのか、わかんねー!」
 手元に表示された何かのメーターらしきものが、ぐんぐん上がっていって、赤く光り始めた。多分、もう撃てるという意味だろう。
「シュート、ハル! 行くッスよ!」
 二人がさっと左右に避けた、その合間を縫って轟音と共に真っ赤な火炎がほとばしり、電脳タイルを襲った。 
 何もかも焼き尽くすほどの業火の中で、しかし電脳タイルはなおも高笑いを響かせる。
「きゃははは、オレ様のタイルはあらゆる攻撃をはね返すのタイル!」
「・・・って言うと、思っていたよ」
 アイフォンを見ながらシュートがつぶやき、自分のスプラッシュバズーカを起動させた。
「くそっ、重いな。・・・ええとケンタのやつ、こんなふうに担いでたな」
 そう言いながら銃口を怪人に向け、メーターが上がって、青く光り始めるのを見守った。
「オーケー、もういいぞケンタ!」
 ケンタのファイヤーバズーカの火炎攻撃が終わると同時に、今度はシュートの武器からすさまじい水流がほとばしり、怪人を直撃する。
 シュートの視界の隅に、バズーカをチェンジャーに収めたケンタが、がくっと膝をつき、地面に倒れ込むのが見えた。
「ケンタ! おい大丈夫か!?」
 シュートは水音に負けないよう大声で叫ぶ。
「シュート、これ、マジでスッゲー疲れる・・・」
「わかった、気をつける! 早くどこかに登ってろ」
 次にシュートは、ハルに声をかける。
「まだか、ハル!」
 返されたアイフォンを見ながら、ハルが答えた。
「・・・狙い通りですよシュートさん! タイルは、全部割れました」
 灼熱の炎で焼かれたタイルは、その後水流で急激に冷やされ、もろくなったところに更に強い水の圧力を受けて、全部割れてしまったのだった。
「よし、おれの仕事はここまでだ・・・後は頼んだぞ、ハル」
 そう言って、シュートもまた、ふらりとよろめき、地面に倒れ込んでしまう。
「・・・疲れる、どころじゃないな、これは・・・」

「きゃははは! オレ様のタイルを全部割ってしまうとは、なかなか頭を使ったイルね。最後の一人に攻撃を託すとは泣けるのタイル。でも、ここはオレ様のタイル空間。割れたタイルなんて、いくらでも再生できるって、思わなかったイルかねえ?」
 電脳タイルのせりふの間に、サンダーバズーカを起動し、肩に担いでいたハル。花壇の周りを囲んだブロックの上に立ち、片手で持ったアイフォン越しに、怪人の周りに再びタイルが並んでいくのを眺めていた。
「・・・そう来ると、思ってたんですよシュートさんは」
 そうつぶやいて、ハルはサンダーバズーカのメーターが上がってくるを待った。
「どうする黄色いの! オレ様にはもう攻撃は通じないタイルよ?」
 メーターが、黄色く光った。
「・・・通じるんですよねそれが」
 ハルはそう言ってトリガーを引く。
 
 バリバリというすさましい音がした。
 それに続いて電脳タイルの断末魔の声、そして電脳タイルの身体が爆発する、爆音。
 すべてが終わったとき、江戸川区役所中庭には、焦げた自転車と、水たまりしか残っていなかった。

 ハルの武器は、電気系。
 それならば、例え直接の攻撃ははね返されても足元に大量の水があれば、そこを伝導体にして怪人を感電させることができる。
 シュートの計画は成功したが、武器を使ったあとの疲労がこんなに激しいとは計算外だった。
 ケンタとシュートの二人は、最初の計画では、足元が水たまりになっては自分たちまで感電してしまうのでハルの攻撃の瞬間はジャンプして、二階の窓枠につかまっているつもりだった。しかし実際にはとてもそんな体力は残っておらず、何とか手近の、ブロックで仕切られた花壇に這い上がって難を逃れた。ハルにしても、最初から花を避けて花壇のブロックの上に立っていたのだが、バズーカ使用後、そのまま後ろに倒れてしまい、結局花を折った。焦げた自転車と共に、これらの押し倒された花々は、やがて損壊器物としてサンフラ和ーのファイルに書き加えられる事となる。

「・・・キツかった・・・」
「・・・博士に頼んで、何とかしてもらおう・・・」
「・・・もうちょっと省エネにして下さい、って・・・」
 折れた花を身体にくっつけたまま三人がよろよろと立ち上がり、変身を解除しようとした時。
 また、あの冷たい風が吹いた。
「だいぶ苦戦したようだねサンフラ和ーの諸君」
 あの、若い騎士が立っていた。
「まあ、楽勝だろうが苦戦だろうが、勝ちは勝ちだ。諸君の実力を認めよう。楽しみになってきたよ」
 それだけ言って、ひんやりした空気だけを残して、かき消えた。

「・・・嫌だなあいつ、スゲー強い。なんとなく、分かる」
「いつかはあいつとも戦うことになるんだな・・・」
「・・・それが今日じゃなくて良かったです」
 変身を解き、スーツの支えがなくなると、もう立っていられず、また花壇にへたりこんでしまう三人。
 身体のダメージだけでなく、あの冷たい空気の騎士に会ったこと、そして午前中に小谷に言われたこと、などが重なり合って、もう立ち上がる気力さえ無くしていた。
 そこへマキコがやって来る。
「みんな、お疲れ様! よく頑張ったね」
 そう声を掛けられても、三人とも、いつものように明るい返事が出来なかった。
「・・・マキコさん、オレらこんなに真剣にやってんのに、ヤラセに見えるんッスかね・・・?」
 ケンタにそう言われ、マキコもまた言葉を失った。三人は、身体だけでなく心まで疲れ切ってしまったのだ。
「この先、もっともっと厳しい戦いが待ってるんだ。そんなの、最初から分かってたはずなんだけどな・・・」
「僕たちじゃなくて、軍隊に来てもらった方が、いいんじゃないでしょうか・・・?」
マキコは黙ったまま地面にひざを付き、三人の肩を抱いた。
「みんな、・・・もういいよ今日は。帰って、何か甘いものでも食べて、いっぱい眠って。そのことは、明日また考えましょう」

 マキコが運転する車に乗り、本部まで戻る途中で、また着信がある。助手席に座っていたハルが、マキコの代わりに小谷からのメールを読む。

>小岩戦隊の皆さん、ありがとうございました。皆さんのおかげで、職員にも怪我はなく、ネット環境も正常に戻りました。しかし職員からは「何のデモンストレーションか知らないが、仕事の邪魔をするな」「私の自転車が焦げている」との怒りの声があがっており、区長が対応していますがあの顔色を見ると、胃に三つ目の穴が開いたのは間違いなさそうです。ダークグリードの出現する場所を、皆さんが選べないのは十分承知の上ですが、できればこの先、区役所を戦場にするのは避けていただきたく、お願い致します。

「・・・小谷さんも区長さんも、大変なのよね・・・」
「・・・でもこの人たち、自分勝手ッスよ。ヤラセって事にしようって言ったり、でも頑張れ、って言ったり・・・」
「あの人たちにも、色んな事情があるんだから、そんな事言ったって・・・」
「でもオレ、納得できないッス。こんな気持ちじゃ、・・・」
 こんな気持ちじゃ、小岩戦隊は続けられない、という言葉をケンタは口に出さなかったが、他の三人には伝わった。
 みんな、同じ気持ちだったからだ。


 ようやく本部に戻ってくると、入り口のドアのノブに大きな紙袋が下げてあった。
 鍵を開け、四人でソファに腰を下ろし紙袋の中を見る。一番上に、封筒に入った綺麗な字の手紙が入っていた。

 小岩戦隊サンフラ和ーのみなさん、毎日ご苦労様です、そして、ありがとうございます。
 私たちは、一か月前、みなさんのデビューのときにかるがも広場の観客席にいた保育園の保育士です。あの時は園児を守ってくださり、本当にありがとうございました。いつかきちんとお礼を言わなければ、と思っているうちに一か月も経ってしまいました。
 この一か月、園児たちの間では「サンフラ和ーごっこ」が大流行しています。絵を描かせても、みんながサンフラ和ーの絵を描きます。子供たちを救ってくださっただけでなく、子供たちの心にこんなにも夢を与える皆さんのご活躍、本当に素晴らしいと思います。
 子供たちが書いた手紙をお持ちしましたので、どうぞご覧になってください。 
 どうかこれからも、小岩の為に、そして子供たちの為に、頑張ってください。微力ながら、応援しています。
 
 更にその下に、走り書きの字でこう書いてあった。

 お留守のようなので、出直そうかとも思いましたが、子供たちの気持ちをお伝えするのがこれ以上遅くなってはと思い、手紙をここに置いていきます。子供たちは、またサンフラ和ーが活躍するとろを見たがっています。子供にも見せられる、安全なショのー企画があったら、ぜひご一報いただきたく存じます。

 そして紙袋の中に入っていた、画用紙にクレヨンで書かれた、何枚もの絵入りの手紙。
「さんふらわーだいすきですがんばってください」
「さんふらわーはいたくてもこわくてもがんばってたたかってえらいとおもいます」
「おとうさんがさんふらわーはただのショーなんだよっていいましたがぼくはほんもののかいじんをみたのでちがうとおもいます ほんもののこわいかいじんでした だからさんふらわーもほんものです」
「おおきくなったらさんふらわーになりたいです」
「ぼくもさんふらわーみたいにゆうかんになりたいです」
 ・・・
 ・・・
 ・・・

 色とりどりの絵手紙は、何枚も何枚もあった。
 読んでいるうちに、四人の目にじんわりと、暖かい涙が浮かんできた。
「・・・そうッスよね、小岩戦隊は、何よりもまず、子供たちを守るためにあるんだったッスよね・・・」
「それと子供たちに、勇気と希望を与えるため・・・」
「・・・区役所とか商店街とかにどう思われようと、もともと、どうでも良かったんですよね。敵がどんなに強くたって、逃げずに向かっていく姿を、子供たちに見せ続けること、それが僕たちの本当の役割・・・」
「私たち、向いている方向が間違っていたのね。・・・安全な子供向けのショー、やりましょうよ! 怪人の着ぐるみがあったら、私、着てもいいから!」
「そうッスね、やりたいッス!」
「じゃ、その台本は僕に書かせてください」
「その時は、またテレビ局も呼んでしっかりPRして行きましょうね!」
「この前みたいに、ダークグリードに邪魔されないといいけどな・・・いや、それも面白いかな?」



 子供たちの手紙のおかげで、戦隊本部にようやく明るさが戻った。
 サンフラ和ーの面々は、自分たちが歩き始めた道の険しさにようやく気付き始めたばかり。
 だが同時に、その足元を照らす明かりをも手に入れた。
 一歩ずつ、歩いていけばいい。
 明かりはいつも、目の前にあるのだから。

 頑張れ、小岩戦隊・サンフラ和ー!
 負けるな、小岩戦隊・サンフラ和ー!


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ぜいぜい、疲れました・・・
いや、この手のつじつま合わせ、一度早いうちにやっとかないと、と思って考えてたんですが、・・・どう考えても無理な設定でしょコレ!? (自分で言っちゃあおしまいだが・・・)
とりあえず全力でつじつまを合わせてみました・・・
江戸川区長とその秘書は、もちろん勝手な創作ですので実在の人物とは一切関係ありません!
江戸川区役所には実際に中庭があり、私が行ったときには自転車置き場として使われていましたが、もちろん実在の区役所とは一切関係ありません!
なお、実在の江戸川区役所のわりと近くに「仮面ライダー龍騎」の須賀貴匡さんの実家のお寿司屋さんがあり、「龍騎寿司」と呼ばれているのは特撮ファンならご存知の方も多いはず。
小岩戦隊の四人が区役所の近くで昼食を食べる場面でちらし寿司が出てくるのは、ちょっとそれを思い出したからです。
エエもちろん実在の龍騎寿司とは一切関係ありません!

そして何か、自分で次回からのハードル上げちゃった気がするんだけど・・・
まあいいさ、なるようになるじゃろ、フォフォフォ・・・
 
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