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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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円城塔さんの最新短編集。
割と短くて軽い9編の短編が収められています。
全体に、初出誌もバラバラで、文体も内容も非常にバラエティが豊富(色々な他の作家さんの影響を受けている感じ)、難解さも普段ほどではないような・・・。
でも例によって良くは分からなかったんですが全体に面白くて、特に表題作は傑作です。たぶん(苦笑)

バナナ剥きには最適の日々バナナ剥きには最適の日々
(2012/04/06)
円城 塔

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表紙の絵は、何か狙いすぎな感じで内容に合わないと思います。かと言って、この、形而上的でありながらギャグ味も強く、時として切なく美しく、時としてグロテスクで全体をウッスラとユーモアが覆っている、円城ワールドにどんな絵がふさわしいのか、と聞かれても答えられないのですが。

以下、ネタバレ感想は【続きを読む】で。


『バナナ剥きには最適の日々』
「はやぶさ」風味の無人探査機がバナナ型宇宙人を夢想するといえなくもない表題作
と、本のカバーの内側に書いてあるのですが、そんなユーモアSFみたいなシロモノじゃありませんよこれは・・・!!
ズバリ、人工知能の泣かせる友情物語です。
無人探査機に載せられた人工の人格が、無限の時間と空間の中で、いつ果てるとも知れない、しかも至極単調な旅を続けている。彼は「チャッキー」という名の疑似人格を作って友人としていた。しかし宇宙空間でたまたま小石が探査機を直撃し、チャッキーのデータは永久に失われてしまう。「僕」は、チャッキーがどんな奴だったか、どんな会話を交わしていたのか、まったく思い出せない。ただ、チャッキーという奴がいて、ある時突然失われた、その記憶のみ。
無限の空間と時間の中で、未来に何の希望もない「僕」は監視回路に思考を抑制されながら、再びチャッキーのような友人を作ることを試みることなく、バナナ星人のことを妄想して遊んでいる・・・

まことに円城さん的な、「この煉獄にひとり生き残った自分が、死せる友を悼む、その記憶が薄れることを恐れる」という内容で、もちろんここで想起されるのは円城さんと伊藤さんとの友情物語。円城さんの作品では、いろんなバリエーションでこのテーマが出てくるのですが、この「バナナ剥き~」もかなりストレートな円城さん自身の話だと思いました、はい。

なのに。ここに出てくるバナナ星人の妄想っていうのがもう抱腹絶倒で、円城さんのギャグセンスが光りまくりなんですよ。
だから、泣ける話なのかバカバカしい話なのかミックスされた感じで読み終わるのがまたスタイリッシュw
バナナ星人は、3枚皮と4枚皮の二つの種族があって、長い間抗争を続けてきたのですが、死んで皮を剥いてみないと、そいつが3枚皮なのか4枚皮なのかわかりません。
ちょっと引用してみます。

 三枚皮と四枚皮が駆け落ちして、石もて打たれる。剥いてみるとどちらも三枚だったのだとか、長年連れ添った相方を剥いて、そいつは四枚だったりする。残され逆上した相方は自分の子供に四枚が紛れ込んでいるのではないかと疑い、一家全てを剥き始める。結果はまあ、半分半分。三枚もいれば四枚もいる。ああ、自分は三枚なのか四枚なのか。もしも自分が四枚ならば、雷よ我が身を剥けと雷雨の中で絶叫するが、まあバナナには雷はあまり落ちない。

もう、本を読みながら思わず笑っちゃうような、この文章のスマートさ。泣ける話なのに暑苦しくなく、むしろクール。
いろんな意味で大好きな短編。

『祖母の記憶』
階段から落ち全身不随になってしまった祖父の身体を使って、夜な夜なコマ撮りアニメ映画を作っている兄弟の話。
やがてある夜、兄弟は、祖母の身体で同じことをしている女の子と出会う・・・。
なんだか、古川日出男の小説みたいな設定でちょっとビックリ。老人の身体でコマ撮りアニメ、という発想は舞城王太郎っぽいし。普通の小説みたい(笑)ですが、ちょこっとシュールな、こういう感じも好きです。

『捧ぐ緑』
ゾウリムシに信仰はあるのか、とかゾウリムシは解脱するのか、とか、文字にすると可笑しいけどやってることはひたすらゾウリムシの寿命を短くしているだけ、という地味な研究を長年続ける「わたし」。
研究発表会で質問してきた相手(出会った日にいきなりベッドインして、その後も末永く一緒に暮らすみたいで、円城さんには珍しい、積極的な恋愛要素を感じる)と恋人になる「わたし」。
軽い短編ですが、死と魂の輪廻をめぐるトンデモ学説が面白くって、深い。・・・ような気がする(笑)

『Jail Over』
死体を継ぎはぎして新しい人間を創るフランケンシュタイン博士とその創造物。みたいな話。しかもこの二人が、自意識を共有しているらしく、読み進むほどに迷宮のように入り組んで、陰惨かつダークな色あいの作品。
この設定、読み始めてすぐに、
「これは『屍者の帝国』の世界なのでは?」
って思ってしまいましたね! 円城さんの今までの作風と、まったく違うんですよ。でも、そこは才人、グロい中にもユーモアを混ぜて、完成度の高い幻想譚にまとめています。
ああー、それにしても『屍者の帝国』、早く読みたいなー!!

『エデン逆行』
林檎を求める旅人が無限に広がる時計の街を往くらしい
と、またまた本のカバー内側には書いてあります。
この本の中では一番、幻想味が強く、意味がわかんなかった短編です(苦笑)
ただ、描かれている街はどことなく、山尾悠子の作品や、イタロ・カルヴィーノの『マルコ・ポーロの見えない都市』を彷彿とさせ、意味がわかるとか分かんないとかはどうでも良くて、この描写と醸し出される雰囲気が好きならそれでいいんじゃないか、と、この際ですから開き直りたいです。

その他の短編も、比較的読みやすくてユーモアが強いものが多いです。
あと、ちょっと気になったのは、「恋人」出現率が高いこと(笑)
今までなかった傾向なんでね、ある意味気になります(笑)

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コメント

以前、『ギャングスター・ナンバー1』の記事に城岩という名前でコメントさせていただいた者です。
今回も3年前の記事にいきなりのコメントで申し訳ありません。
最近本書を読み終わり、感想を拝見させていただきました。

どれも深く読み解いていらっしゃって、表題作は私も読んでいる際伊藤計劃さんの影が浮かんだので、切なくなりました。
読んでいる最中、上手く言葉にならなかった部分がこちらを拝見して、形を持ったような感じです!

タイトルの元となっているサリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』は博学な7人兄弟の中の長男が自殺によってあっさり去ってしまい、残された家族に生前も死後も影響を与える、という作品なのも考えてしまいます。

文庫版のみ収録のコルタサル・パスはもうご覧でしょうか?

いらっしゃいませ!

碧海さん、いらっしゃいませ~!

コメントありがとうございます。
「バナナ剥き~」は円城作品の中でも大のお気に入りなので、共感してくださる方がいるととても嬉しいです。
「バナナ剥き~」はもうはっきり、伊藤計劃を偲ぶ円城塔の話としか読めませんよね! 
気が狂いそうになりながらもチャッキーのことが忘れられず、宇宙空間に「チャッキー」という文字を走らせようとするなど、泣けるというよりもはや、「僕」はどんだけチャッキーのことが好きなんだよ! と思わず興奮してしまいました。ハアハア
「屍者の帝国」の前後の作品は、多かれ少なかれ伊藤計劃のことを書いてあるように感じます。
そう思うのは私が円城×伊藤に萌えているからだとは思いますが(笑)
>
> タイトルの元となっているサリンジャーの『バナナフィッシュにうってつけの日』は博学な7人兄弟の中の長男が自殺によってあっさり去ってしまい、残された家族に生前も死後も影響を与える、という作品なのも考えてしまいます。

この本は若いころに読んだことがあって、内容は忘れてしまったのですが、ポップで可愛いタイトルとは裏腹の、誰かが自殺する暗い内容の短編だったことは覚えていました。円城塔も、やはりこの明るいタイトルと暗い内容とのギャップに惹かれて拝借したのではないかな。
>
> 文庫版のみ収録のコルタサル・パスはもうご覧でしょうか?

文庫版も読んだはずなのに記憶にないです(T.T)
今、人に貸してしまっているので、戻ってきたらちゃんと読んでみます。
文庫版は表紙のイラストも可愛くて好きw

ではでは。
また遊びに来てくださいね~。

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まとめtyaiました【「バナナ剥きには最適の日々」】

円城塔さんの最新短編集。割と短くて軽い9編の短編が収められています。全体に、初出誌もバラバラで、文体も内容も非常にバラエティが豊富(色々な他の作家さんの影響を受けている...

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