プロフィール

イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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 卒業する前にやっちゃわないと、と言ったのはリョータだ。

 ぼくはリョータには逆らえない。借りがあるからだ。
 夏休みに、サンロードを横切る鉄塔「花総線」をたどって、足立区にある始まりの「花総1号鉄塔」と千葉県船橋市にある最終の「花総79号鉄塔」まで自転車で走る二日がかりの、ささやかな「鉄塔をめぐる冒険」に付き合ってくれたのはリョータだった。
 ぼく一人ではとても無理だったろう。ぼくは臆病だし根性もない。そもそも知らない町に一人で行くなんて想像もできなかったし、二日目、ぼくの自転車がパンクして歩き続けたら夜になってしまい、泣きそうになっていた時も、リョータが気をきかせて交番でわけを話し、お巡りさんと一緒に近くの自転車屋に行って修理してもらって(代金は翌日、親からもらって届けに行った)なんとか無事に家に帰れたのだ。
 その時に撮った1号から79号までの鉄塔の写真は、ぼくの宝物だ。一生、大切にする。

 そのリョータが今度はぼくに付き合ってくれ、と言っているのだ。たとえ臆病だって根性がなくたって、断れるわけがない。
 リョータがやろうとしているのは、「学校の七不思議」の検証だった。
 ぼくたちの通う「下小岩第二小学校」にもいわゆる七不思議があって、中には数合わせのために適当に入れたんじゃないかと思うようなものもあるし、いつの間にか内容が変わっていたりもするのだけれど、とりあえず今、卒業直前のクラスで噂になっている七不思議は次の通り。
 
1.風がないのに揺れる柳の木
2.四階の東側のトイレの個室から聞こえる泣き声
3.夜になると光る、音楽室のベートーベンの眼
4.四時四十四分に屋上に出ると会える、自殺した女の子
5.夜になると現れる、秘密のエレベータ
6.いつの間にか一人増えている、卒業アルバムの写真
7.宇宙人と入れ替わった教頭先生

 2の、トイレの泣き声については不思議でもなんでもないことはすぐ分かった。
 原因は、ぼくだからだ。クラスでみんなにからかわれた時、反論したくてもできなくて、トイレでよく泣いていた。それが噂になったんだろう。そう、ぼくは臆病のうえに泣き虫だ。こんなやつと、リョータはよく一緒に遊んでくれると思う。いくら家が近くて、一年生がらずっと同じクラスだからって。
 ぼくは頭の中ではいつもいろんな事を考えているんだけど、あまり自分からは喋らない。クラスメートたちの会話の輪に入れず、入りたいとも別に思わない。何か話しかけられても、気のきいた返事を返すことができない。そのくせ、成績だけは妙にいい。
 いつもおどおどしてるから、よくからかわれる。そんな時、言い返してやる事ができない。小さいころから、ちょっとした口げんかであっても、喧嘩は苦手だ。いつも最後はぼくが泣き出して終わる。
 男子の世界では、そんな奴は誰からも相手にされない。それは自分でもよくわかっている。 
 リョータと友達だから、クラスのみんなも先生も、ぼくに一目置いてくれるのだ。そうでなかったら、ぼくなんてとっくに不登校だ。

 それと4も、怪現象ではないことは証明済み。
 そもそもうちの小学校には自殺した女の子なんていないし、ちょっと前に流行った映画が元ネタなんじゃないかと思ったけれど、だからと言って手を抜くわけにはいかない。
 リョータが「科学クラブの実験です」と言って屋上に出る許可をもらい、風向計だの雨量計だのを持ち込んで、一週間毎日、四時四十四分に屋上に出てみたけれど、何事も起きなかった。
 先月の話だ。屋上の風は冷たいけれど、心地良かった。荒川のほうを見ると、鉄塔小松川線108号と109号が良く見えた。ぼくとリョータは屋上で、中学に入ったらどうするか、というようなとりとめのない話をした。ぼくは中学から私立に入るので、リョータとは一緒に通えなくなる。

 1、これは、実際に柳の木が揺れているところを見たことがないので何とも言えない。
 3と5は、一度夜に学校に潜入する必要がある。リョータは、ワクワクするなあ、と笑った。ぼくが、どうやって、と聞くと、それを考えるのがお前の役目じゃんか、と言ってまた笑った。
 6の卒業アルバムは、卒業式には全員がもらえるのだから、それまで待っていればいいのだが、リョータは全ての謎を解き明かして、初めて晴れて卒業できるんだ、と意味の分からない理屈を言って、事前にアルバムを見ることにこだわった。
 まあ、何か理由をつけて職員室に入ってしまえばいいのだ。この時期なら印刷に回す前の見本くらいあるだろう。
 うわー、先生、これ卒業アルバム? ちょっと見ていい? と、子供らしく無邪気な様子で頼めばいいのだ。簡単だ。
 
 さて問題は最後の7。
 これは、どうやって検証したらいいのか分からない。
 直接聞くわけにいもいかないし、第一、「宇宙人だという証明」あるいは「正真正銘の人間だという証明」って、どんなものなんだろう?
 カッターナイフで切りつけて、流れた血が青かったらそれは「宇宙人だという証明」と言っていいだろう。だけど、今そんな事をしたら卒業式にだって出られないし、中学にだって通えなくなる。第一ぼくたちは優しい教頭先生が好きなので、そんな事はしたくない。
 結局、なるべく教頭先生から目を離さない、という当たりさわりのない案に落ち着いた。
 
 リョータには友達がたくさんいる。その中で、今回の計画に、なんでわざわざぼくを誘ったのだろう。
 屋上で鉄塔を眺めながらリョータに聞いてみた。すると、
「だってサトシ、お前、何かに守られてるじゃん。慎重だしさ。お前と組めば、失敗しないだろ」
 という答えが返ってきた。
 守られてる、というほど大げさではないが、小さい時から、高い所から落ちても怪我をしなかったり、風邪をひいたおかげで旅行に行けず、事故に巻き込まれずに済んだり、ということは何度かあって、うちの両親に言わせると、タカシの分まで幸運が宿っているのね、という事になる。
 タカシというのは生まれてすぐに死んでしまったぼくの双子の兄のことだ。隆志と悟志、という名前が、生まれる前から用意されていた。
 お母さんはこの時に、もう子供はできません、と医者に言われてしまった。だから、残ったぼくをそれは丁寧に育てた。
 危ないことは一切させず、乱暴な友達とも遊ばせなかった。代わりに、本や図鑑は山のように買ってくれた。だからこんなにひ弱な、泣き虫の子供になったんだよ、と言いたいところだが、お母さんはお母さんなりに一所懸命だったことくらい、ぼくにもわかる。
 おかげで、慎重な性格にもなった。小学生の男子として、自慢できることではないけれど。
 リョータはぼくとは正反対で、運動神経もいいし気も強い。それでいて、要領のいいところがあって、どんなにイタズラをしても大人からは大目に見られるタイプだ。先生たちにも可愛がられている。先生たちは、よく、リョータは兄ちゃんによく似てるよなあ、という。リョータのお兄さんは鈴木健太。小岩戦隊サンフラ和ーの、レッドだ。
 
 夜に学校に潜入する機会は、意外に早く訪れた。ぼくが考えるまでもなかった。
 卒業式を前に、中学生活や春休みの行動について話し合う保護者会があるという。
 保護者会は、夜の七時がら始まる。母親も、昼間は働いている人が多くて集まりが悪いからだ。
 保護者会のある夜は、当然ながら校舎は出入り自由となる。ぼくは塾をサボって、リョータは友達の家で宿題をすると嘘をついて、それぞれ家を抜け出した。
 七時を少し回って、校庭から人気が少なくなったころに二人で校門から歩いて侵入。下手にこそこそすれば、かえって怪しまれる。
 まず、ベートーベンの肖像画を確かめるために、三階の音楽室に向かう。

 こっそり戸をあけて入り込んではみるものの、校庭の明かりがまぶしくて光る眼を確認するどころではない。保護者会が終わって父兄がみな帰り、校庭の明かりが消えるまではただ待っているしかなかった。一時間以上も、小声で時々話す以外にやることがなく、ぼくはただぼうっとベートーベンの顔を見ていた。そして、気付いた。
 最初はちょっとした違和感だったけど、見ているうちに確信に変わった。
 ぼくは声をひそめて床に座ったままのリョータに話しかける。
「見てよ、あの肖像画、眼が動いてる」
 リョータは半分眠っていたらしく、すぐに返事をしなかった。
「前は確かに、左のほうを見ていたよ。今は、もっと前のほうを見ている。・・・顔全体も、なんだか前と違う気がする」
「スッゲー! まじ?」
 リョータは跳ね起きた。
「動いてるって言ったって、今目の前で動いたわけじゃないよ? ただ、音楽の授業で見たときと今とでは、絶対に目の向きが違う。賭けてもいい」
「すごいじゃんサトシ、眼、光んなくたって、動いたらすごいよ!」
「・・・でもよく見ると、良く似た別の絵に張り替えただけ、って気もするなあ・・・」
「なんだよそれ、ショボいよ。いいよ、オレ、ベートーベンの眼が動くとこ見た、って事にする!」
 リョータはそう言うと、持ってきていた手帳を開き、そこに今日の日付と「音楽室のベートーベンの眼、クリア!」と大きく書き込んだ。
「さ、次もこの調子でどんどんクリアしてこうぜ」

 リョータのこの軽さに、ほっとしたと同時にやや残念な気持ちにもなった。
 何度もいうようだけどぼくはほんとに臆病だから、本物の怪奇現象などに出くわしたらどんな事になるか自分でも分からない。なのに、こんな事に首を突っ込んでいるのは、リョータの誘い、ということもあるけれど、「学校の七不思議」なんてしょせん、子供同志のうわさ話、と信用してない部分もあったからだ。
 でももし、ひとつでも本当の話が混ざっていたら、それをこの目で見てみたい、という好奇心もぼくにはあった。その場合でも、リョータと一緒ならちょっとくらい怖い体験でも切り抜けられるはす、と期待する気持ちもあった。
 でも何だかリョータにとっては結局、それっぽい話を持って帰ることが重要なので、本当の怪奇現象はあってもなくても良いものなのだ。あくまで現実的なのだ。この世ならぬものに惹かれる気持ちは、ぼくのほうが強いのかも知れない。

 それからまたしばらくすると、保護者会が終わったらしく、校庭のほうがざわざわと騒がしくなった。ぼくらは外の様子を見ながら待った。
 やがて、人影がとだえると校庭の明かりが消え、明るさに慣れた目には音楽室は暗闇に見え、ぼくは初めて怖くなった。肖像画というのは、昼間見てもあまり気持ちのいいものではない。それが、この暗闇の中、何枚もあると思うと・・・。
 無理に気を落ちつけて、目をこらして見ても、別に肖像画の眼が光っているようには思えなかった。
「リョータ、もうこの部屋はいいよ。出よう」
 廊下には非常灯がある分、明るいはずだ。
 リョータは返事をしなかった。
 代わりに、しばらくたってから、
「なあ、・・・あそこ、ドアの向こう、光ってないか・・・?」
 と聞いてきた。
 リョータが指さしているのは、さっきのベートーベンの画のすぐ下、隣の音楽準備室へ通じるドアだった。
 確かに、ドアの隙間から、うす青い光が漏れて、こっちの部屋まで届いていた。暗くなったから初めて見えるほどの、微かな光。
「どうなってるのか、確かめようぜ・・・」
 リョータはそう言うと、足音をしのばせてドアに近づく。ぼくもすぐ後に続いた。好奇心から、というより、リョータのそばを離れるのが怖かったから。
 リョータはドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。
「ちぇ。開かないなあ」
「リョータ、これはきっと非常灯だよ・・・。もうこの部屋、出ようよ」
「でも確かに光ってるぜ? これなら、校庭の方から見てもきっと、・・・」
 リョータがそう言って、二人で校庭のほうを振り返った。
「アッ!」
 リョータが声をあげた、と、その時ぼくは思った。
「バカ、サトシ、大声出すんじゃねーよ!」
 リョータはぼくの腕をつかみ、押し殺した声で言う。
 ぼくも同じく、押し殺した声で言い返した。
「ぼく何も言ってないよ。今、声出したのってリョータだろ?」
「言ってねえよ。サトシ、お前だろ」
「ぼくじやないってば」
「じゃあ誰だよ・・・」

 二人でささやき合いながら、お互いの腕を握りしめながら、ぼくたちの目は校庭の柳の木を見ていた。
 隣の音楽準備室から出ている、一筋の青い光が柳の木を照らしていた。
 そして柳の木は、風に揺れるのとは明らかに違う動き方で、自分から枝をぐねぐねと動かしていた。
 校庭の他の木はまったく動いていなかった。風のせいでないことは確かだった。
「動いてるよな・・・」
「うん、確かに動いてる・・・」
「やばいよこれ。本物だよ」
 もともと怖がり屋のぼくにはもう限界だった。
「リョータ、もういい。早く帰ろう」
「下降りて、あの木の近くで見てみようぜ」
 ぼくは半分泣き声になっていた。
「いいってば、帰ろう。・・・リョータ、痛いよ、手、離して」
「なに? 手? ・・・もう離してるけど・・・」
 リョータは両手を広げてぼくに見せた。

 じゃあ、今、暗闇の中でぼくの腕をつかんでいるこの手は誰の手なんだ!?

 ぼくは悲鳴をあげてその場にしゃがみ込んだ。両手で自分の腕をさすった。さっきの手の感触は、もうない。
 続いて出てきそうになる悲鳴をこらえようと口をかたく閉じたけど、のどがヒクヒクして嗚咽が漏れ始めた。

(もう嫌だもう無理だこんなところに来なきゃよかったああ泣きそうだ泣いちゃうよ誰か助けてよ・・・)

 うずくまって泣いているぼくの背中を、リョータの手がさすってくれた。
「そうだな、もう今夜は十分だな、帰ろう。落ちつけよ・・・」
「・・・ごめん・・・」
 ぼくはこれ以上リョータに迷惑を掛けたくなかったので、ヒックヒックとしゃくりあげながらも立ち上がった。
 なんとか声を殺して歩き出したぼくを、リョータが支えてくれた。
 
 階段を降り、上履きを下駄箱に戻そうとしていた時。
 いきなり後ろから、また腕をつかまれた。服を通してもはっきりわかる、ものすごく冷たい手だった。
「うわああああっ!」
 ぼくは今までで一番大きな悲鳴をあげた。
「君たち、こんな時間に何をやっているんだね?」
 教頭先生だった。ぼくたちを見下ろすその顔は、非常灯に照らされて昼間とは別の人みたいだった。 
 押さえていた嗚咽が口からあふれ出し、ぼくはもう小さな子供みたいにその場でわんわん泣きだした。

(もう駄目だ先生に叱られる親にも叱られる卒業式出られなかったらどうしようでもなんで先生の手はこんなに冷たいの・・・)

「教頭先生、ごめんなさい!」
 隣りでリョータが、思い切り大きな声でそう言って頭を下げた。
「実はぼくたち、あのー、・・・音楽室のベートーベンの眼が夜光る、ってクラスで噂があって、それ見にきたんです。卒業しちゃうと見られなくなるから・・・」
 教頭先生はリョータの方を向いた。口を開くまでに、一秒の何分の一かの、間があった。まるで、リョータの顔を見て、この子は誰だったかな、と考えているみたいに。ぼくはしゃくりあげながらも、少しそれが気になった。リョータはこの学校では有名人だから、教頭先生が知らないはずがない。
「君は鈴木良太くん。・・・お兄さんは健太くん、だったな。健太くんも卒業前に、夜学校に忍び込んでいたなあ。夜しか見られないテケテケを見たい、とか言って。困った兄弟だ。それで、何か見えたのか」
「いいえ・・・眼も光らなくて、何も見られなくて、そのうちこいつが、怖い怖いって泣き出して、で、もう帰ろうとしてた所なんです・・・」
「本当に何も見なかったね?」
「ほんとです。あ、でも、ベートーベンの画は最近張り替えたんじゃないかって、こいつが言ってました・・・」
「ああ、あの絵は確かに、先日破れてしまったので新しく張り替えたよ。そんな怖い思いをして、絵の張り替えを確認してきたのか」
「ほんとにごめんなさい。反省してます・・・」
「まあ、事件につながらないで良かった。もうすぐ卒業式だ。親には知らせるが、もうこれ以上面倒を起こさないでくれよ。クラスの友達にも触れ回るのはやめなさい。わかったね?」
「はい・・・」
 ぼくとリョータは、そう返事をして頭を下げた。

 教頭先生が玄関の鍵を開けてくれたので、普通に外に出ることが出来た。
 先生に付き添われ、それぞれの家に向かった。両親は家にいて、先生の話を聞いて驚き、何度も頭を下げた。先生は、卒業も近いことですし、問題にはしませんから、ご家庭でよく見ていてください、と言った。
 親にみっちり説教されてやっと、自分の部屋に入ることができた。
 ぼくはノートを取り出して、今日あったことを整理しはじめた。学校の七不思議だなんて、単純な話ではなかった。なにかもっと深い、隠された謎がぼくの目の前に広がっていた。


<新しい謎>
1.柳の木が本当に動いていたのはなぜか?
2.音楽準備室から出ていた青い光は何か?
(柳の木を動かす光線?)
3.ベートーベンの新しい肖像画との関係は?
4.あのとき、ぼくとリョータ以外に音楽室にはもう一人別の誰かがいたのか?
5.教頭先生が別人のようだったのはなぜか?
(リョータのことを知らないようだったし、手がすごく冷たかった)
6.教頭先生はどこから来たのか?
(あのとき後ろから腕をつかまれたけど、職員室や事務室なら逆方向だから前から来るはず)
7.教頭先生はぼくたちの話をどこまで信じたのか?


 ここまで書いたときにぼくの携帯(親が心配性なのでGPS機能付のものを持たされている)が振動し始めたので開いてみると「ミサキ」からだったのでぼくは迷わず通話に出た。「ミサキ」はリョータのお姉さんだ。携帯を持っていないリョータが秘密でぼくに連絡をよこすときには、頼み込んでお姉さんの携帯を貸してもらっているのだという。
「サトシか。なあ、今、もう喋れる?」
「うん。もう説教終わったから平気。長かったけど。リョータは?」
「オヤジに往復でビンタくらった。でもさあ、まあうちはいつもの事だから、お互い慣れっこでさ。兄ちゃんもよくこんな事やってたしさ」
「ねえ、教頭先生はやっぱり怪しかったよね?」
「なんかさ、先生、身体が冷たくなかった? そばに立たれた時、ひやっとした」
「手も、ものすごく冷たかったんだよ・・・宇宙人はともかく、いつもの先生じゃないことは確かだと思う」
「オレもそれ、思った。『鈴木良太くん』って言われたぜオレ? あの先生、いつも『リョータ』って呼び捨てだったのにさ・・・。あ、でも先生、兄ちゃんのことまで知ってたしな・・・」
「もし先生が入れ替わった宇宙人だとしたら、全校生徒のデータを頭のどっかにインプットするくらいの事はやると思うよ」
「そうかあ。やっぱり、入れ替わってるんだなきっと・・・」
「あの教頭先はぼくたちの事、どこまで信用したのかな・・・」
「分かんない・・・。でも、サトシがあそこで大泣きしてなかったらもっと面倒になってたかも。なんかいかにも、肝試しに来て泣き出した罪のない子供って感じだったじゃん。グッジョブだったよ、あれ」
「やめてよもう・・・。考えたんだけど、先生、ぼくたちのすぐ後ろに立ってたじゃない。もし、先生があの時音楽準備室にいたとすると、そこからまっすぐ降りてくると、ちょうどあのへんに立てるんだよね」
「サトシ、それって・・・」
「そう、七不思議の一つ、『夜にだけ現れる秘密のエレベーター』で降りてきたんじゃないかって、ぼく思うんだ。ぼくあの時、ちょっとの物音にもビクビクしてたから、もし先生が階段下りてきたら足音でわかったと思うし。あの時先生が準備室にいて、あの青い光で柳の木を動かしていたとしたら・・・」
「オレたちあの時、けっこう騒いでたからなあ。当然、バレてるよなあ」
「それで、ぼくたちが帰ろうとしてるのを知って、あとからこっそりエレベータで降りてきたんだとしたら・・・」
「オレら、やばいかな・・・」
「うん。そうなんだよ・・・。あのさ、ぼく考えたんだけど、もし教頭先生が宇宙人だったとしてさ、音楽準備室でなにかやってたとしてさ、あの部屋に機材とかこっそり運び込むときに、うっかりしてベートーベンの絵、破いちゃったんじゃないのかな。それで、最近になって良く似た絵に張り替えたとか・・・」
「うーん・・・まあ、無くはない、かなあ・・・。じゃあ、エレベータは?」
「音楽準備室の真下は家庭科準備室だろ。その真下は印刷室。どの部屋も、入って右の奥にロッカーがあるだろ。人が一人、入れるくえらいの」
「あ、そうか! 宇宙人の技術で、あそこにこっそりエレベータ作っちゃえば、気が付かれないよな・・・」
「でしょ? けっこう全部、つながってくるんだよね」
「じゃあ、あの時音楽室にいた三人目は誰なんだよ?」
「それがわかんないんだよね・・・」
「あれだけは、本物の幽霊だった、って事もありうるよな」
「・・・ねえ、ぼく思うんだけど、これ以上ぼくたちだけで深入りするのは無理だよ。誰か大人の人に話そうよ」
「誰かって親とか、クラスの先生とか? 駄目に決まってんじゃん、『教頭先生が宇宙人かもしれないから調べて』って言える?」
「うーん・・・無理だよね・・・。誰かいないかなあ、学校に出入りできる、PTAとか父兄とかの人で、こういうの信じてくれる人・・・」
 とつぜんリョータが、携帯の向こうで笑い出した。
「父兄、それだよそれ。いるよ、うちにはそういうの大好きなバカな父兄が・・・!」


TO BE CONTINUED・・・!
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