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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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つい先日、クワコーの「黄色い水着の謎」で大笑いしたばかりだというのに・・・。

虫樹音楽集虫樹音楽集
(2012/11/05)
奥泉 光

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奥泉先生の最新刊はがらりと趣向をかえた幻想味の強い連作集。
数年間にわたって単発的に雑誌『すばる』に発表された短編を並べてあるのですが、扱われているモチーフは一貫して、カフカの『変身』と、奥泉作品にはよく登場する「宇宙の音楽」のイメージです。

表紙の蝶の絵や、最初の短編『川辺のザムザ』の「書き手」が後から現れて「あれは私が書いた小説です」と言いだす所など、円城塔の『道化師の蝶』を連想させるのですが、あくまでも軽やかで天衣無縫な『道化師の蝶』に比べるとこちらはもっと暗い情念を感じるといいますか、まあ、下敷きになっているのが『変身』なのですから当然ですかね。
(それと、作品中に虫は出てきても蝶は出てこないので、この表紙はちょっと「?」と思います)

70年代の日本のジャズ界にささやかな名を残した、渡辺柾一(通称イモナベ)というサックス吹きの男が、虫のように幼虫から成虫になろうとしていた事を知った音楽ジャーナリストが、彼の過去の消息を追うパートと、平行して人が虫になる、あるいは虫のような人の話、樹を通して宇宙と交信する虫の話、などなどが語られ、それぞれのパートは『変身』を中心にゆるやかにつながっています。
ミステリアスな謎は次々に謎を呼びながらも、回収されないままに終わります。
繰り返し出てくるのが『変身』の中で虫となったグレゴール・ザムザが窓の外の風景を眺める場面で、そこで見えるであろう灰色の風景がそのまま読後感となって作品中にずっと漂っている不安感と共に、重苦しく残ります。
しかし途中のドライブ感というか想像力の奔放さ加減というか引き込まれ感は凄くて、気持ちよくグイグイ来ます。私の乏しい語彙では、とにかく文章が上手い、としか言いようがないのですが。

特に自分が好きだったのは、『虫樹譚』という短編で、クワコーシリーズのモンジ君が少しだけ賢くなったような大学生の男の子の、一人称の語りがまず素晴らしいw 
饒舌で、ちょっと馬鹿っぽくて、けっこう感情の起伏が激しいのに違和感なく読者に内面を伝えきる、しかも読んでいても軽さが心地よい。
不眠体質になるために頭の中に虫を飼う、とかちょっと嫌な近未来っぽい話ですが、若い男の子のフワフワ定まらない思考や情念が、読んでいてストレートに伝わるのがすごく面白くて、改めて奥泉先生スゲエって思いました。もっとも、クワコーがあれだけ面白いのも、奥泉先生の卓越した文章力に支えられているのも、言うまでもないんですけどね。

私は『変身』は中学の時夏休みの課題で読んだのですが、数十年ぶりに読み返したくなりました。
この本を読んだあとで読み返すと、おそらくいろんな発見があると思います。

あと、イモナベのパートでたびたび言及される、70年代の日本のジャズシーンって、多分、筒井康隆が山下洋輔トリオと騒いでいた、あの時代ですよね。新宿の地下の壁が真っ黒いアングラ劇場、みたいなノリ。
私はその時代にわずかに乗り遅れているので、こういったボヘミアン(?)な空気には憧れてしまいます。
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