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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
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墓頭墓頭
(2012/12/26)
真藤 順丈

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久々に、面白さに引きずられるようにしてノンストップで読了してしまった本。
なにか、作家としての存在を賭けて書き上げたとでもいうような、魂のこもった作品です。想像ですが作者もまた、何かに引きずられるようにして、自分以外の大きな力に翻弄されるようにして、苦しみながら、でも、思ってもみなかった大きな力が自分の中から湧いてくるのを感じながら、憑りつかれたようにして書き上げたのではないでしょうか。

物語は、スランプに陥った作家の「僕」が、失踪した父親の手がかりを探して、インド洋の孤島におもむき、そこで養蚕をいとなむ男に、「ボズ」と呼ばれる男についての、長い長い話を聞く、という形で進みます。
ボス(墓頭)、という変わった名前は、親から名前を付けてもらえなかった主人公の男の、頭に大きなコブがあることから付けられた呼び名です。手塚治虫の「ブラックジャック」のピノコを思い出していただけると話が早いのですが、一卵性双生児の片方が、母親の子宮の中で死んでしまい、その身体の部分がもう一人の身体に、大きなコブとなってくっついている状態なのです。頭に兄弟の死体をいつも乗せているので、墓頭、ボズ、という呼び名になったのです。

ボズは1955年、山梨県の大地主の家に生まれるが、生まれつき頭にコブがあり顔が歪んでいたため、屋敷内の一部屋に幽閉され、学校にも通わされずに成長する。ボズの頭の墓に呼応するように、ボズと関係を持つ者は皆、先を急ぐように死んで行く。親をなくし、福祉施設に引き取られたボズは、相手の心を自在に操る、IQ160の天才少年ヒョウゴ、高貴な心を持つ美貌の少年シロウと、精神的な成長を1歳児のままで止めてしまったその弟、ユウジンたちとの運命的な出会いをする。
福祉施設の教官ホウヤは、当時世間を騒がせていた中核派や赤軍派といった、社会活動家であり、中国の毛沢東をはじめ、アジア各地の活動家たちとも関係を持っていた。
ホウヤに連れられて香港に行ったボズたちはやがて、文化大革命やカンボジアのポル・ポト政権など、20世紀後半の流血のアジア史の流れの渦中にその運命を翻弄されていく・・・

ボズの一代記、という滅法面白くてスリリングな物語を縦糸にして、戦後の日本の歴史、そしてアジアの悲惨な歴史(特にカンボジアに関しては、この本を読むまで、つい最近のアジアでこんな凄まじい事が起きていたとは知りませんでした。反省)を物語って行くこの本を読んでいると、古川日出男の「ベルカ、吠えないのか?」や「アラビアの夜の種族」が連想されます。歴史を咀嚼して新たに語りなおす、というスタイルと、大部の物語を圧倒的なテンションを保ったままに最後まで書ききる、そのすさまじい膂力とが、共通しているからでしょうか。
また、この本のグロに走らないけれども力強いバイオレンスは、古い本ですが村上龍の傑作「コインロッカー・ベイビーズ」を思い起こさせます。
この本はそれらの本と同レベル、つまり傑作です。

軍事産業の世界で成り上がる、冷酷だが独自の価値観を持つヒョウゴ、他人を惹きつけずにおかない、清い存在のシロウと、その世界を共有するユウジンなど、脇役も魅力的です。ラスト近くなると、まさかのどんでん返しの連続ですが、取って付けたような感じではなく、むしろボズの物語には意外な結末こそ似つかわしいな、と思えます。
読んでいて血が熱くなるような、そんな面白さに出会いたいなら、是非読んでみてください!
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