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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
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修羅の前髪


 教習所には、もう書類は出してあったんだ。
 ホサがいっつも当たり前みたいにフミホをバイクの後ろに乗っけて送ってくの見て、フミホのあの華奢な手が、ぎゅっとホサの腹に回されるのを毎日のように見てて、それ見ているオレは女の子の、キワのバイクに乗せてもらってるって、ありえないじゃん?
 確かにホサは一見ただの暴力馬鹿だけど、あの雪の日にやっと分かったように、あんなふうにフミホの事を寡黙なナイトみたいにずっと見守ってたなんてカッコ良すぎるじゃん?  
 だけどオレだって、フミホの事が好きな気持ちだけは絶対誰にも負けない自信あるし。ってかもう、それっきゃねーし。
 だから、オレがフミホを守れるようになる為の第一歩として、まずバイクの免許くらいは取らなきゃ、と。
 ホサだって四六時中フミホにくっついている訳じゃないし。いや、今思えばアレなんだけど、あいつ時々フッと姿を消すときあったからさ。そんな時、オレが「あ、最近穴あき狙われてるらしいじゃん? ホサいねーんなら、オレ送ってくし。後ろ、乗って」とかさりげなく、フミホ用に選んだ可愛いメット(多分、キワに選んでもらうことになると思う)手渡しちゃったり?「へー、藤井くん、バイク乗れるんだー」「ん? ああ、免許取ったし」とか言いながらも、フミホの両手がオレの腹に回されて、首の後ろにフミホの息がかかって、背中に押し付けられるフミホの柔らかい、やべえまさかこの感触は・・・ッ!!
 
(2秒で死ねクソが)
 教習所で直線走ってる時にいきなりオレはすげえ勢いでコケた。正確にいうと、いきなり背中を蹴られてバイクから吹っ飛んで何回転かしてやっとうつぶせの姿勢で止まった。目を上げると、主を失ったバイクがそのまま暴走してカーブを曲がれずにそのまま芝生に乗り上げて柵に激突してちょっと空を飛んでからひっくり返るのが見えた。
「なっ・・・!」
 痛いとかじゃなく純粋に何が起こったのかわかんなくてオレは何秒かのあいだ、まったく動けずにいた。
(テメー変な妄想してんじゃねえ!)
 ホサの声が聞こえてようやくオレは我に返った。
「何すんだよッ!下手したら死ぬレベルじゃねーかよ今の!オレ今死んだらおまえも多分死ぬぞ!?」
(あんぐれえのスピードで死ぬわけないだろうがボケが!バイクに転倒はつきもんだろ!公道でコケて人様の迷惑にならねーように今のうちにうまい転び方教えてやってんだよこのクソガキ!)
「だからってバイクで走ってる奴の背中蹴るかフツー?まあ、フツーならライダーキックでもしない限りバイク野郎の背中なんて蹴れないけどよ・・・!?」
 そう言いながらオレはもう気付いていた。ホサがオレの身体に蹴りを入れ(そう感じるような体感をオレの身体に加え)、飛ばされたオレの身体が最もダメージが少なくなるようにうまく芝生の上に、回転しながら受け身を取って落ちるように調整していた事を。いまだによく分かんないけど、ホサにはそういう事を瞬時に計算して実行できる能力があるのだ。ホサの能力というよりは、ホサがあの時着ていた服の性能なのかもしれない。そして今、オレの内側にいるホサはその能力を容赦なくオレの身体に対して使うのだ。まあ、外にいた時も一日一回は蹴りを入れられてたような気がするから、イメージとしてはあんまり変わらないんだけど。
「それに変な妄想とか言うけどよ、フミホがもしオレのバイクに乗ったら、って考えただけじゃん?やましいことねーしオレ」
(「胸が当たったらオレ死ぬ」とか妄想してただろクソが)
 ああ畜生、ホサには隠し事が出来ない。全部読み取らてしまうんだ。
「や、オレだって健全な男子高校生だからさ?それくらいはするよ?それにさ、今となってはフミホをバイクに乗せられるの、オレ、っつーかオレたちだけじゃん?なんでもっと協力的じゃないわけ?」
(フミホなら大丈夫だ、キワが乗せてくれる。テメーにその変な下心があるうちは、俺は絶対にフミホをテメーの後ろに乗せるのを阻止・・・)
 ホサが急に黙ったと思ったら、教官が青い顔で駆けつけてくるところだった。うん確かに、派手に転んじまったからなあ。オレはへらへらした笑いを浮かべ、服のあちこちを手でパンパンはたきながら立ち上がる。君っ、立って大丈夫か、怪我はないか、そう聞いてくる教官に笑顔で、や、運が良かったみたいで、何ともないです、でも念のために今日はこれから病院行ってきます、最後のせりふは教官を安心させるために付け加えて、オレは倒れたバイクの様子を見に行った。こちらも、ミラーが割れたりしてる程度で大したダメージはなさそうだ。ホサのやる事にはいつも無駄がない。
 さすがに全身に打ち身は出来ていて、服の下は青痣だらけなんだろうけどオレは教官にこれ以上心配されたくなかったので、身体中がじんじん痛みだしたのを無視してまっすぐ歩いてその場を後にした。

 なんだかんだ言ってオレはホサのことが好きなんだと思う。
 ホサがホサなりのやり方でフミホのことを大切にしているあの感じが好きだし、クールぶってる割にけっこうお祭り騒ぎにハシャぐ所も好きだし、やたら乱暴なんだけどどこか変に大人びてるのも好きだった。
 ときどき、なにか「人生の真実」みたいな事をズバッと言ってきて、その時は意味がわかんないんだけどあとから少しずづその言葉の重さが響いてくる時もあって、今思えば、ホサはオレたちの知らないもう一つのハードな人生を歩いていたんだからそのくらいの言葉は普通にホサの実感だったんだろうけど、あのころのオレはそんなホサに何か底知れない深さみたいなものを感じていて、それがホサの魅力でもあった。そしてオレはそんな彼が毎日のように喧嘩をふっかけてくるのが内心得意で、嬉しくもあった・・・いや、何言ってんだオレ。さすがにそれはないか。ただ、ホサは他の奴のことはもっとクールにかわすのに、オレが相手だと何かムキになってつっかかってくるような所があって、オレがホサを無視できないのと同じようにホサもオレを無視できなかったんじゃないかと思う。
 委員長あたりには、「あんた達は本当は仲がいいのに」とよく言われたけど、そしてその時は全っ然納得できなかったけれど、一度ホサを失いかけて今こうして自分の手の中に取り戻してみると、ホサの気持ちはともかく、オレはやっぱり前からホサのことが好きだったんだ、と思わざるを得ない。
 
 ホサはオレの内側に確かにいるはずなのに、普段は出てこない。ホサがずっと黙ったままだとオレは、あいつどっか行っっちゃったんじゃないかと不安になって、その存在を確かめたくって、一筋だけ長く伸びた前髪を指でさわってみる。白く変色したその髪を、オレは女の子みたいに指にクルクル巻きつける。そうすると、あいつはちゃんとここにいるんだって安心できる。スリープモードになってるだけなんだって、納得できる。
 第一、静かだとこんなふうに心配になったりもするけれど、実際さっきみたいに突然出て来てはいきなりオレの身体をどついたり暴言を浴びせたりする所は以前とまったく変わらず、オレのほうもそのたびに頭に来ては、ひどい言葉で言い返してしまう。これをうっかり他人がいる場所でやってしまって狂人を見るような目で見られた事も何度もあるのだ。そのたびに、もう二度と出てくんなよテメエ!って思うんだけど、さっきみたいにマジで大怪我したかもしんないような事されると、こいつを中に入れとくのはやっぱ無理じゃないか?早く解毒剤使って出しちゃったほうがいいんじゃないか?とも思うのだ。冷静になって考えると、あの時瀕死の状態だったホサを、まだ何日も経ってないのに外に出してしまったらその場で死んじゃうんじゃないか?っていう恐れがあって、当分の間は実行に移すつもりはないのだけれど。

(打撲と擦過傷、内出血だけだ。骨は折れてないし脳内出血もない。・・・悪かった)
 教習所から送迎バスに乗って、病院の前で降ろされたけど別に大した怪我じゃなさそうだし面倒くさいしなあ、とか思って病院に背を向け歩きはじめた時、ホサの声が聞こえた。オレの身体の状態を内側からスキャンしてくれているのだ。なるほど、役に立つなあ、って思って聞いてたら最後に小さい声で謝ってきたのでオレはびっくりした。
「え、何。お前なんか悪いもんでも喰ったの?」
 つい反射的に、そう憎まれ口を返してしまいながら、ああそうかこいつはフミホのことだと自分を抑えきれなくて、それを自分でも悪い癖だと思ってはいるんだなあ、という理解がオレの中に生まれる。教習所でオレは確かに、自分の背中に押し付けられるフミホの胸の感触を想像して一人で興奮していたのだ。ホサはそれが許せなくて、ついオレを蹴ってしまったのだ。やってしまってからその危険に気付いて、急いでオレのダメージが最小限になるように調整してくれたのだ。そして今になって、それを謝ってきたのだ。
 そこまで理解したオレは、ホサが何も言い返せないでいるうちに急いで言葉を続ける。
「や、オレもさ、ごめん。お前がそこにいるってこと、忘れちゃっててさ。あのままだったらオレ、フミホの裸まで想像しちゃってたかも知んない。好きな女の子が別な男のそんな想像のネタになってるの見たら、オレだってホサと同じ立場だったらやっぱ蹴り入れると思うよ」
 ホサは何か言おうとして一拍、間をおいた。そして、 
(じゃあテメー、何か?俺がここにいなかったら想像し放題なのかこのクソが!)
 言い返してきた口調はもうすっかり普段通りだった。ホサはオレが理解したことを理解したのだ。この乱暴な口調は、互いの、謝罪の交換をしっかりと受取ったという合図だった。オレにはそう思えたのでこちらも遠慮なく言い返す。
「仕方ないだろ勝手に想像がふくらんじまうんだから!お前こそ一人の時何考えてんだか知れたもんじゃねえだろこのムッツリスケベ!第一、そっちからはオレの考えが丸わかりで、オレからはそっちが生きてんのか死んでんのかも分かんない、ってズルいだろ!」
(ぁあ?いちいちテメーのくっだらねえ思考なんてチェックしねえよ!読まれて困るような事、そもそも考えてるんじゃねえよボケ!)

 クソ、やっぱこいつ、追い出してやろうか?
 解毒剤使えば、いつだってお前をこっから出せるんだぜ、そう言おうとして口を開きかけたオレを、ホサは低い(しっ!)という声で黙らせる。
(振り返るな。後ろ4時方向。距離は約200メートル。敵だ)
 オレは歩調を変えずに歩き続ける。
(こないだみたいな奴か?)
(あんな変態野郎とは格が違う。あれは8号、今度のは5号だ。少々手こずるかも知れない)
 オレは歩きながら、自分の血がどんどん冷たく醒めていくのを感じる。融合が始まっている。あの時と同じだ。あの、8号と呼ばれた男と戦ったときと。
 
 ああ。
 ホサとひとつになっていく、この感覚がオレは好きだ。
 またお前と一緒に戦えて、嬉しいよ。 

(関係ねーよ。オレとお前、二人がかりならどんな奴だって2秒でフルボッコだ)
 オレの膚の内側に貼り付くように、ホサがオレを満たす。ホサの思考が、ホサの存在がどんどんオレに流れ込んできて俺にシンクロする。俺はもう俺であって俺ではない。戦いの予感に心は高揚し、逆に神経は研ぎ澄まされ精神は嫌になるほど冷静だ。周囲が静まりかえり、時間の流れが徐々に遅くなっていく。降り始めた雨の一粒一粒が、俺達の前にくっきりとした輪郭を持って浮かんで見える。フジイとホサの強い思いを共有した、俺達は戦い続ける一人の修羅だ。

 人通りのない場所に来た。修羅は振り返る。そして待つ、笑いながら。5号という名の遊び相手が接近してくるのを。

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BUG.6までの設定を使っています。
舞城文体っぽく書いてみたつもり。あくまで「つもり」って事で・・・。
藤井とホサが融合したあと、戦いの時は息がピッタリ合ってるんだけど日常生活では今までみたいに口げんかばっかりしてるといいなあ、と思って書きました。
なんかあの、ケンカ友達っぽい所がイイんですよねw
授業中の消しゴムの投げ合いも可愛かったww
それにしても、1巻のラストは何度読み返してもヤバい。こんなに熱い少年マンガは、本当にひさびさです。

P.S.
BUG.7を読んだらまったく違う展開になってました(苦笑)
まあ、その時かぎりのパラレル、って事で大目に見てください。
2013/4/30 5/18
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