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聖痕聖痕
(2013/05/31)
筒井 康隆

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筒井康隆って1934年生まれなんですね。つまり今年79歳。
うーむ・・・。人って、歳を取るものなんですねえ・・・。当たり前か・・・。
多感な10代後半、私はツツイ狂でした。
筒井康隆自身もその当時は波に乗っていて、毎月のように新刊が出ていました。また自分はそれに、飛びつくようにして読んでいました。自分は、物の考え方でも文章の書き方でも、筒井康隆に計り知れないほどの影響を受けています。
SF作家として登場した筒井康隆ですが、いつしか文壇から文学の作家として扱われるようになり、実験的な小説をいくつも書いて、やがて断筆宣伝をします。その後再びペンを取り現在に至るわけですが、正直、断筆宣言の後の本には若い頃のギラギラした感じがなく、時々読んではいますがあまりピンと来なくなってしまいました。

この本は、そんな筒井康隆が去年から今年にかけて朝日新聞に連載していた小説をまとめたもの。
出生時から、見る者すべてを魅了する美貌の持ち主、貴夫。
衣料品会社の社長の長男として生まれ、不自由ない暮らしをしていた貴夫は5歳の時に、そのあまりの美しさから変質者に目を付けられ、一人でいた所を襲われて性器と睾丸を切り取られてしまう。男として生きるための根源を失ってしまう貴夫だったが、彼を愛する家族に見守られ、ますます美しく成長していくのだった・・・。

この出だしを聞いた時、「えっ! それは筒井康隆版の『九十九十九』ってこと!?」って、激しく期待しちゃったんですけどww
なんかそれだけ聞くと、匂い立つ総天然色のビルドゥングスロマン、って感じなんですけどやはりそこは79歳だからなのか、淡々とした墨絵のような味わいでした。

(この先はネタばれ感想なので『続きを読む』で)

まあ正直、もっと派手な小説なのかと期待していたわけですが。
貴夫の半生を枕詞や古語を駆使して語ってゆく、その文体はさすがに凝っています。
例えばこんな感じ。

実家にても銀座にても*ひとつ娘なる瑠璃が*降懸りは中学にても引き勝れ、*日並べてなりてもその*煌らかなること類を見ず。

ひとつ娘 姉妹のいない女の子。 
降懸り(ふりかかり) 容姿・動作・振る舞い。 
日並べて 日を重ねて。 
煌らか(きららか) 輝くばかりに美しい。


ちゃんと訳注でムズイ言葉を説明してくれていますww
こういう擬古文と普通の文章が混じっていますが、とにかく文章が上手い人なので、読みにくくはありません。
ただ、貴夫の半生がことのほかドラマチックでないのが意外というか・・・。
貴夫は成長するにつれ、頭脳も明晰ながら料理の才能をあらわし、男性ホルモンの欠如のせいで、他人と激しく争うような事もないままに大人になる。やがて才能を花開かせ、念願の料理店を開き繁盛させます。周囲の家族や友人もいい人ばかりで(ただ一人、弟の登希夫だけが兄に嫉妬し、手に負えない悪い子供として登場するのだが、貴夫に感化されたのか、成長するにつれ落ち着いた、男らしい男になっていく)、結婚もし子供を育てることも経験し、理想的と言っていい人生を送っていくのです。性器と睾丸を失い、思春期の性欲を経験せず、その余剰のエネルギーを冷静に料理という対象に昇華させた結果、穏やかで満ち足りた人生を送れるというのなら、男性性、男らしさって何だろう? と、ふと考えてしまいます。まあ、幸せな人生を送るために貴夫が支払った代償はあまりに大きいので、「幸せ」という言葉が使えるのかどうかさえ分かりませんが。
ただ、筒井康隆が79歳であることを考えると、「人として基本的な何かを失う代わりに得るもの」が、こうした穏やかで満ち足りた日々であるのもなんとなく納得というか。

ただ、昔のツツイを知っているものとしては、こんな魅力的な発端で始まる話なら、もっと波乱万丈、ギラギラのオデュッセイアをつい期待しちゃったわけですよ。私個人としても、最近でも「九十九十九」や「墓頭」など、異形の主人公が八面六臂の大活躍をする、滅法おもしろい本を読んでいたので、そんな本なのかと勝手に思っていたので、ちょっと肩透かしのような感じでした。
これだったら、貴夫がそこまで美しくある必要がないのでは?
絶対的な美貌ってある種の異形だと思うのですが、案外普通の人間としての幸せを普通に獲得していくのがなんだか勿体ないというか。
あと、貴夫が他人の情事、ことに不倫に協力的なのもちょっと引っかかるなあ・・・。
その手の事に理解があるからって、粋なやつだとか気が利いてるとか思わないですけどね。要するに男の願望ってことなのだろうか・・・。

フェデリコ・フェリーニはサテリコン、国松龍平は*口利根。・・・(中略)・・・SF映画はカプリコン、国松龍平は*悪利根。

口利根・・・口先の上手いこと。 悪利根・・・悪賢いこと。

↑こんな駄洒落もありましたww
「サテリコン」「カプリコン」ってとこがいかにも筒井、っていうか昭和だなァ(苦笑)


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