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イザク

Author:イザク
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昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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(2013/01/11)
森山未來/高良健吾/前田敦子

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芥川賞受賞作、西村賢太の小説を映画化した作品。面白かったです!

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(2012/04/19)
西村 賢太

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西村賢太の小説がどれもそうであるように、これも自伝的要素の強い、私小説です。
主人公の北町貫太はもちろん、若き日の西村賢太自身。
中学を卒業してからすぐに、現場仕事をして一人暮らし、安月給はすぐに安酒と風俗に使い果たしてしまい、安下宿の家賃を滞納しては大家に追い出され、楽しみといえば古本屋に行って本を読むことだけ、19歳にしてすでに人生に擦り切れた、貫太という男の造形がまず面白いです。
暖かい家庭に恵まれず、中卒で一人で生きてきた貫太。粗野で下品なくせに妙に繊細なところがあり(一人称が「僕」なのも面白い)、教養もなく自尊心もない割りに変なプライドだけは高く、他人との距離の取り方を知らず、友達のつくり方すら分からない、一言で言うとロクデナシ。
若くして人生に見切りをつけ、人生をはすに構えた、このどうしようもなく屈折した男を演じた森山未來が凄い。
映画自体はただ駄目男の青春を描いているだけなのですが、とにかく森山未來の表情、姿から目が離せません。
森山未來は映画「モテキ」で嫌ったらしくひがみっぽいサブカル系草食男子を演じて絶品でしたが、がらりと違う、常識に欠けた肉体労働者の役。その、何か鈍重なくせにすぐカッとなるような、本能で生きてる動物みたいな役を演じてすごい説得力。
あらためて、いい役者だなあと思います。
去年、舞台で「ヘドウィグ・アンドアグリーインチ」(ドイツ人ドラッグクイーンの半生を描いた映画の舞台化)を演じていたというのも凄いと思いました。

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(↑この役を森山未來が!?)

原作者の西村賢太は太ってお喋りでニコニコしているタイプなので、森山未來の貫太はだいぶイメージが違うのですが、これはこれで、絶品だと思いました。
そして、森山未來は顔立ちは10人並みで全くイケメンではない(スマン・・・)のですが表情が良いのと、身体つきがしなやかで動きがキレイなんですよねー!
貫太という役はそのへんも、のろのろと鈍い動きしかしない役なので、森山未來は武器を封印された形なのですが、何かのはずみに19歳にふさわしい生き生きとした動作を見せるのがまた良いです。あと、路上の喧嘩で蹴飛ばされて、身体ごと吹っ飛んだりするのも凄い。体重、軽そう・・・(T.T)

(以下、ネタばれあり)
ストーリーは、将来への夢も展望もなくただその日その日を暮していた貫太に、同じ19歳の友人、正二(高良健吾)が出来る所からスタート。高良くんが、邪心のない好青年を爽やかに演じていて、これまたすごく良いです。好青年を爽やかに演じるのって、案外難しいのではと思います。
生まれて初めて出来た同年齢の友達。彼の協力で、前から好きだった古本屋でアルバイトをしている女子大生、康子(前田敦子)とも友達になる事ができた。3人で、ボウリングをし、真冬の海に入ってはしゃぐ。初めて体験する、青春の馬鹿騒ぎ。
この、前田敦子がまたすごく良い。ちょっと野暮ったくていかにも庶民的、でも掃き溜めに舞い降りた鶴のような、清楚な雰囲気がある。とつぜん下着姿になって海に入ったりするような、常識破りの一面も持ち合わせている。
せっかく友達が出来たのに、貫太が親しさの限度を知らず、甘えた態度に出るせいで、仲の良さは結局長くは続かない。居酒屋で、正二とその女友達に酔ってからむシーンのクズ男っぷりは凄かった。絶望し仕事場で荒れて、更にどん底の生活に落ちて行く貫太。
3年後のある日、貫太はテレビで、以前現場で怪我をして辞めていった中年の男が、歌っているのを見る。お笑い芸人としての登場ではあったが、現場仕事をしながら、歌手になるのが夢だと語っていたその男から、貫太は目が離せなくなる。
またも町中での喧嘩のあげく、下着一枚で海に向かう貫太。
と、そこに、自分を追い越して走っていく正二と康子の幻を見る。二人はあの日のように若々しく爽やかに笑って、貫太に「こっち来いよ」と誘う。
「お前ら、元気じゃんか」と笑う貫太にもようやく分かる、自分にも、煌めく青春の1ページがあったんだと。
自分の内側には、誰にも盗めない、キラキラと輝くものがあるんだと。
下宿に帰った貫太は、何かに憑りつかれたように、猛然と原稿を書き始めるのだった・・・。

原作には登場しない、正二という好青年を登場させたおかげで、非常に青春映画としての味わいが強くなったと思います。原作とはまったく違うテイストになりましたが、これはこれで好きです。ラストに救いがあるのも嬉しいです。
太宰治や坂口安吾もかくや、と思わせる、破滅型の作家の苦い青春を描いたものとしても面白いです。
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