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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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現代SFの到達点にして、世界水準の傑作。
↑カバーの見返しにそう書いてあります。東京創元社、大きく出ましたねw

皆勤の徒 (創元日本SF叢書)皆勤の徒 (創元日本SF叢書)
(2013/08/29)
酉島 伝法

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第二回創元SF短編賞受賞作をもとにした、連作短編集。全体を通して読むと、大きな物語が見えてくる作りになっています。
創元SF短編賞といえば、第一回の受賞作がやはり傑作と誉れの高かった「盤上の敵」。二冊並べるとこの賞の水準の高さというか、異能を発掘する審査員の眼の確かさがよくわかります。

しっかし、この本は・・・。
「読む人を選ぶ」といえば聞こえはいいですが、「一握りの人にしかわからない」と言ったほうが正確では(笑)
とにかく、作者の言語感覚がキモい半端ない。
異形の進化を遂げた未来を、独自の言語感覚で描いたSFといえばまずオールディスの「地球の長い午後」や椎名誠の「アド・バード」(←大好き!!)が思い浮かぶのですが、この「皆勤の徒」はそれらの作品が普通の小説に思えてくるほど、作者が勝手に作った造語ばかりで文章がつづられていきます。フツーの人には分かんないって(笑)。
冒頭の「序章」をちょっと引用してみますと・・・

 銀河深淵に凝った膠着円盤の安定周期軌道上に、巨(おお)しく透曇(とうどん)な球體(きゅうたい)をなす千万(ちよろず)の胞人(ほうじん)が密集し、群都(ぐんと)をなしていた。その犇(ひし)めきのなか、直径一万株を超える瓢(ひさご)型の連結胞人、<禦>(ぎょ)と<闍>(じゃ)の威容があった。

・・・以下、ずっとこの調子で続きます(笑)。
知らない言葉で知らないものを描写しないで(涙目)。
しかし、慣れとは恐ろしいもので、こんな文章でもずっと読んでいると何となく意味が少しずつ分かってきて、何が起きているのかウッスラと見えてはきます。でも、巻末に乗っている大森望さんの親切なネタばれ解説を読んでみたところ、私はこの本の内容の1/10も把握していなかったことが判明(笑)
この解説を読んでから再読すると、多分かなり風通しが良くなりそうな気がするのですが、どうも文体と作品世界全体が粘着質というがドロドロというかグロいので、再読を躊躇してしまいます。

全体は大きく4つのパートに分かれています。
何となく途中から(これはもしかして円状塔の「Self-Reference ENGINE」みたいな話なのかな?)という気配はしてきます。ある意味、近いです。
ただ、円状塔の作品世界が澄みきったサイダーだとすると、この本はドロドロに煮詰めたとんこつスープなんだよなあ・・・(T.T)
何らかの事件か事故があって、遠未来、人類は異形の進化をとげたあげく、かつての人類としての記憶をかすかに宿したまま、多くの惑星にそれぞれに適応しながら暮らしているのだな、という所までは何となくわかります。
四つの短編は、そんな世界の中で懸命に暮らす四人の物語なのですが、意外とそこにユーモアが感じられるのが面白いところ。

表題作「皆勤の徒」は、主人公が劣悪な労働条件で休むこともできす働きつづける、ブラック企業に勤めるネットカフェ難民みたいな話。それでタイトルが「皆勤の徒」だから笑わせます。かくいう私も年休を取ったことがない、皆勤の徒ですが(T.T)

「洞(うつお)の街」はうってかわって、爽やか(と言ってもいいと思う)な学園もの青春物語。友人と夜の見張りの最中に「きっと僕には見つからないよ。ふさわしい相手なんて(中略)物理的に、なんというか、性交方法が異なるんだよ」などという悩みを友人から打ち明けられたり、血餅(けっぺい)屋さんでクラスの女の子(?)と待ち合わせしたり、と、用語が異様すぎるのを除けば、けっこうやってることは今時のラノベとそう変わらない気もします(笑)

「泥海(なずみ)の浮き城」は、またまた趣きを変えて、ハードボイルド探偵もの。昆虫っぽく進化した、ヤク中アル中の主人公が消えた死体の謎を追う、ミステリ仕立て。主人公がやたらタフだったり、女に弱かったり(雌の昆虫の排卵活動時のフェロモンにひっかかって、フラフラとついていってしまったりw)、探偵もののお約束を、こんな異形の世界の中でも展開してくれているのが楽しい。

「百々似(ももじ)隊商」
最後のこの中編でようやく、世界がこうなってしまったそもそもの始まりが語られますが、やはり造語が多くて正直何が何やら(笑)
最後に大森望さんの解説を読んでようやく「そういう事だったのかー!」と納得しました。これ、SFに慣れた人でも一度で理解するのは無理なんじゃないかな・・・。
それと並行して、砂漠の只中を旅する隊商として生きることを決意する少女の、ジュブナイル異世界ファンタジーものっぽいエピソードが語られます。

・・・と、いうわけで、最後まで読むと少しずつSFらしい骨組みが感じられてくるのですが、でも本としてのタイトルがやはり「皆勤の徒」であったりするあたりにそれとないユーモアを感じてしまいますw
どんなに異形の進化を遂げても、日本人ってつい働き過ぎちゃうのネ、というかw

感想を一言でいうと、個人的には文章がキモくて好きになれず、あまり評価できませんが、こういうみっしりねっとりした世界観が好きな人には堪えられないのでは、と思います。徐々に世界の裏側が見えてくる構造も、読んでいてスリリングです。
作者自身の手による細密な挿絵も、病的な雰囲気があってキモい作品に良く合っています。
カバーの表紙絵は、何と加藤直之。暗ったい色使いで作品の雰囲気を壊さず、なおかつSFっぽいワンダーがある。さすがでございます~!
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