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イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

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近所の図書館がお休み中なので、ちょっと遠い館に足を延ばしたら、ありましたよ出物が。
奥泉光・著「地の鳥 天の魚群」(幻戯書房)。
タイトルからして、すでにゴリゴリの純文学臭が漂っています。しかも出版社が「幻戯書房」?
失礼ながら、初めて聞きました。しかも「幻戯」って、・・・胡散臭いだろー!(笑)
もうね、この本、それだけで、「ああきっと私の好みだな」ってピンと来ちゃうんですよ(笑)。

私、純文学、しかも作者が若いころ書いた青臭い作品が好きなんです(行間から立ち上ってくる、悩める文学青年の哲学系の香りに酔いしれる)。
奥泉光の初期作品はどれもいいですよ。
「ノヴァーリスの引用」「石の来歴」「蛇を殺す夜」「葦と百合」「バナールな現象」「滝」etc・・・。
最近はちょっとエンタメ路線に行っててどうかと思う時もありますが、「シューマンの指」はひさびさに奥泉光の良さが120%出た傑作中の傑作。
(彼がフルスロットルの時は、微妙にBLの香りが漂っていることが多く、そこにも魅力を感じることは正直に告白しておきましょう)

さてこの「地の鳥 天の魚群」、あとがきを読んで知ったのですが、著書が二十八歳の時にはじめて書いた処女作なのですね。
読んでる間中、「初期っぽいな」とは思っていましたが、まさか処女作とは。
奥泉光の最大の魅力、硬質で鋭利でセンシティブな文体がすでに確立されているのが驚きです。やはり才能っていうものはダイヤの原石のように、最初からそこに「在る」もんなんですね。あとは磨くだけ。
二十八歳にして書いた処女作なのに、テーマが「平凡な家族の崩壊」。
息子は新興宗教、娘は意味不明の入院、妻はオロオロ。家庭の平穏だけを願って生きてきたはずなのに・・・。
平凡な中年男が主人公の、老成したというか人生に倦み疲れたというか、そんな内容なのも興味深く、そこに時折、若書きらしい火花の散るような鮮烈なビジョンが差し挟まれて、さすがは私の愛する奥泉光先生です。
先生の文章の冴えを見ていただくべく、主人公の「石脇氏」が大学生の息子、「進」に打たれるシーンを引用してみましょう。

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―――お父さん、教えてあげましょう。本当の暴力というものをね、と進が低い声で言うと、その右手がきわめてゆっくりと眼前に近寄ってきた。大きな手のひらには実に冷え冷えとした印象があって、「青銅の手」が連想される。やがて、視界を遮る「手」が反転する蝶のように素早く閃いたと思った瞬間、機械的な正確さで石脇氏の頬をとらえていた。空白になった頭蓋の中に、馴れ馴れしく皮膚と皮膚とが擦れ合う音が響き渡り、石脇氏の身体は、あらゆる細胞が凍結してしまったかのように、その場に硬直した。
―――一時的な感情や怒りにとらわれて振う暴力なんて本当の暴力じゃないんです。目的を真に自覚した者にだけ、本当の暴力は許されるんです。と蒼白く燃え上がる冷気を含んだ声で進は言うと、再び石脇氏の頬を打った。それは先ほどの動作と寸分の狂いもなく、まるで獲物を捕獲するカメレオンの動作を、ビデオテープで繰り返し見るようであった。
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・・・カッコいいものは常にクール。
そんなことを再認識させるヒカル様の文体でございます。

このブログを読んで下さる方には、あまり関心のない本だったかもしれませんが、こんな地味な本、オレが取り上げなきゃ誰がやるんでい! そんな義侠心(?)も手伝って、長々と書かせていただきました。
でも、「奥泉光かあ・・・。読んでみようかな」って方には、やはり「シューマンの指」から入る事をオススメします! 
「このミス」でもランクインしていたし、誰が読んでも絶対に面白いです!
(ついでに言っておくと、天才少年とその友人の、友情だか憧憬だかBLだかわかんない関係を描いて激ヤバですぞ!)
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