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カラマーゾフの妹カラマーゾフの妹
(2012/08/02)
高野 史緒

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去年の、第58回江戸川乱歩賞受賞作。
まず、タイトルが凄く良いですね!
「カラマーゾフの兄弟」って、文学史上最も有名な兄弟と言っていいと思うのですが、その兄弟に妹がいた、と。
もうこれだけで、19世紀ロシアの血族のドメスティックな秘めた大ロマンの香りが漂ってくるような、うまいタイトルです。本家取りというか借景というか、文豪の力を目いっぱい借りているわけではあるんですけど。

発刊されたのが去年の秋で、時期的にも内容的にも円城塔の「屍者の帝国」に重なっていたため、当時、この2作を並べたレビューやコメントが多かったのを覚えています。
今回たまたま図書館で目についたので読んでみたのですが、いやー、これ去年「屍者の帝国」と併せて読んでたら、もっともっと面白かったような気がするわー!
同じ時代、同じ一族(しかもフィクションの中の)を取り上げているというだけでも凄いのに、この「カラマーゾフの妹」は、ドストエフスキーの偉大な文学作品「カラマーゾフの兄弟」の続編としての、人間心理を克明に描いた小説として十分すぎるほど面白く、ミステリとして、「兄弟」に書かれた細部をもとに壮大な謎解き、どんでん返しを見せてくれる本でもありかつまた、帝政ロシアを舞台にした歴史改変SF(「ディファレンス・エンジン」なんて言葉がしれっと出てきちゃったりw)でもあるという、何とも贅沢な本なのです。

「カラマーゾフの兄弟」は若い頃に読んだきりで、すごく面白かったという記憶以外、細かい所はほとんど忘れていました。意外に思われるかもしれませんが、ドストエフスキーって普通に面白いですよ。登場人物が全員キャラが濃すぎるというか変態スレスレというか、そんな奴らが次から次へと愛憎うずまく事件を連発して悩みまくり、ところどころに「人間とは?」「善悪とは?」「神とは?」みたいな問いかけもあって、ある意味中二くさい(笑)
ロシア人の名前に慣れるまでがちょっと面倒ですが、一度ハマると途中で読むのをやめられなくなるほど、中毒性が高いです。
この「妹」は、「兄弟」で語られた父親殺し事件の、更に13年後、次男のイワンがかつての事件の真犯人を再捜査する為に実家を訪れるところからスタート。確かに、「兄弟」を読んでいて「あれ?」と思う箇所はいくつかあるのですが、丁寧にそれらを伏線として生かして、鮮やかなミステリに仕上がっています。
でも個人的に一番面白かったのは、イワンの多重人格(「兄弟」でもそれっぽい描写はあった)や、アレクセイの妻リーザのヒステリー性の身体疾患など、やはりこの時代に発見された、フロイトに代表されるヨーロッパの心理学をもとにした心理描写。特に、何を言っても悪くとらえて癇癪を起すリーザが怖い~! ここまでひどくないけど、こういう面倒くさい人、いるよね~! 
イワンの助手として捜査を手伝う、青年貴族にして帝国科学アカデミーの会員、トロヤノフスキーがこのリーザを手玉に取る場面も面白い。このトロヤノフスキーという男は「兄弟」には出てこないオリシナルキャラですが、知的で爽やかでいい奴なのよ。ドストエフスキーが造形した濃ゆい人物たちの間にあって、一幅の清涼剤。しかも「ホームズ氏の近代的探偵術には特に興味があります」なんてセリフも口にしちゃう、メタ作品に更にメタ要素を持ち込む、19世紀と現代をつなぐような役どころでもあります。

そして忘れちゃならない、スチームパンクSFとしての要素。歯車でできたコンピュータの神殿とか、地下深く住む数学の天才少女とか、遊び心が満載。「兄弟」の世界とは異質すぎですが、やはりホームズの名前が出てきた時点で、もう何があっても許せちゃいますw

「屍者の帝国」と同じように、同じ時代の史実と虚構を織り交ぜた本となっており、ひとつの虚構世界に、別方向からスポットを当てた、「屍者」の姉妹本という感触すらあります。
「屍者」が何でもアリだったのに対し、「妹」は最終的に、人間の深層心理や業といったものを描いているのも好対照で、2冊あわせて読んでこの世界観にドップリひたると楽しさ倍増ではないかと思われます。

「カラマーゾフの兄弟」を読んでいないと分からないのでは、と思う方もいるでしょうが、作中で丁寧に「兄弟」の大筋や事件の詳細を書いてくれていますので、心配無用です。私も、兄弟の名前くらいしか覚えていなかったのですが十分楽しめましたww

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