プロフィール

イザク

Author:イザク
好きな物・好きな人(順不同)

昔のSF。宇宙とかロボットとかそういうSFっぽいもの。
本一般。映画一般。特撮ヒーロー。仏像。友情モノ。
西尾維新先生。舞城王太郎先生。荒木飛呂彦先生。奥泉光先生。円城塔先生。津原泰水先生。山岸涼子先生。松本大洋先生。三上骨丸先生。白鵬様。食パンちゃん。

カテゴリ

最新記事

最新コメント

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

母の遺産―新聞小説母の遺産―新聞小説
(2012/03)
水村 美苗

商品詳細を見る

明治時代に新聞に連載され、当時の日本で大ブームとなった小説、「金色夜叉」。ヨーロッパの恋愛小説を下敷きにしているこの一大ロマンに刺激され、書生との駆け落ちを決意した女が、この小説の主人公・美津紀の祖母。そして、その祖母が我儘一杯に育ててしまった一人娘が、美津紀の母。
ヨーロッパの文化や芸術に憧れ、贅沢を求め、自分のことしか考えず常に人生に対しての欲望を満たそうとする母に、若い頃から振り回される美津紀とその姉の奈津紀。やがて母は年老い、衰えてゆくが、50代になった美津紀と奈津紀の姉妹に、その介護の負担は重くのしかかり、夫との関係の悪化や体力の衰えとともに生きる気力すら奪われていく。

「早く死ねばいいのに」と思いながら母の最期を看取る、壮絶な介護の日々が前半はつづられて行きます。
読みながら、「母が重くてたまらない」という本のタイトルが頭に浮かんで消えませんでした。
母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き母が重くてたまらない―墓守娘の嘆き
(2008/04/10)
信田 さよ子

商品詳細を見る
↑凄いタイトルですw 進学も結婚も母親に支配されて苦しむ、もう若くはない娘たちのカウンセリング事例をもとに書かれた本なのですが、今、こういう母娘の関係で悩む人がすごく多いらしいのですね。

私にも老いて認知症になってしまった母がいるのですが、幸い、素直で欲がない性格のため、あれが欲しいこれが食べたいと我儘をいう事もなく、恨み言や悪口を聞かされることもないので非常に付き合いが楽で助かります。
姉夫婦と兄夫婦が近くに住んでいることもあり、老親介護ではほとんど苦労知らずなのです。
なのでこの「母の遺産」で描かれるような、生きる意欲が強くて自己中心的な母親を持ってしまった娘の苦労は想像もつかないのですが、実際に難しい母を介護している女性の目からみるとこの本は「良く言ってくれた!」「そうそう、その通り!」と言いたくなることの連続ではないでしょうか。

しかし、この我儘な母は同時に、姉妹に文学や芸術の素晴らしさを教えてくれた母でもあり、人生を美しいもので飾り、常に高尚なものを目指して生きることを教えてくれた母でもあります。
「母の遺産」という言葉は、後半、自分を裏切り若い女の元に走った夫との離婚を決意する美津紀が、今後の生活のための費用を計算する場面で出てくる言葉ではありますが、むしろ、姉妹に与えた母親の影響、ロマンチックにゴージャスに、贅沢に人生を楽しむ姿を見せつづけたこと、それを指した言葉ではないかと思えます。娘というのは、母親の生き方から強い影響を受けずにはいられず、そして母親に縛られて生きていくものなのだなあ、と・・・。

全体に、美津紀の言動があまりに現実的で、筆者の水村美苗さんの実体験も相当描かれているのではないかと思われます。
作家の林真理子が「野心のすすめ」という新書を書いて話題になりましたが、この人も人生にゴージャスな贅沢を追い求めるタイプの人なので、もし娘がいたら大変だろうなあ、とつい思ってしまいました。野心も大事だけど「身分相応」ってことも大事だよね・・・。でもやっぱり、女はいくつになってもお洒落をしたい生き物だしなあ。
私個人もシングルマザーで娘を二人育ててきたわけですが、金銭的な遺産は残せなくても、子供の頃からちょっとカルトっぽい映画や漫画をいっぱい与えて、少し変な趣味の持ち主に育ててしまったのがまあ、遺産といえば遺産なのかなあ・・・。

後半は、その母親がようやく死んだあと、これからの人生を見つめなおすために箱根のホテルに長逗留する美津紀の話ですが、このホテルの客たちがまた、いずれもワケありの人たちなのです。人間は、ただ生きていくだけでも大変なのだなあ・・・。
ホテルで母親のことを回想し、夫との関係を見つめなおす美津紀。それは自分の人生そのものを見つめなおすことでもあった。ようやく新しい一歩を踏み出せるようになり、母親のことも夫のことも、今までとは違う目で見ることが出来るようになる所で、この本は終わります。あまりに現実的で暗い内容なので、そのままで終わることはできなかったのでしょう。

「ボヴァリー夫人」というフランスの小説がたびたび作中に出てきますが、この「母の遺産」じたいが「ボヴァリー夫人」のように、ロマンチックな上流階級の恋愛に憧れた女の一生を、三代にわたって描きつづけた大河小説でもあります。ドラマチックな恋愛小説の要素と、散文的な母への恨みが混ざり合った小説ですが、どちらの要素も面白くて、読み始めたら止まりません!
美津紀と同じく、人生に疲れ始めた40~50代以上の方にオススメ。若い人は、わかんないだろうなあこういうの・・・

水村美苗さんといえば、「嵐が丘」を下敷きにした「本格小説(上下巻)」という本が本当に、私の読書歴の中でもオールタイムベスト10に入るほど面白かったので、「これぞ浪漫の香り!」という本が読みたい方にはもう、絶対のオススメです。私の勧める本の中では唯一、SFやミステリ要素のない普通の恋愛小説でもあります。

本格小説〈上〉 (新潮文庫)本格小説〈上〉 (新潮文庫)
(2005/11/27)
水村 美苗

商品詳細を見る

本格小説〈下〉 (新潮文庫)本格小説〈下〉 (新潮文庫)
(2005/11/27)
水村 美苗

商品詳細を見る
↑マジで面白いです!
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://isaac936.blog.fc2.com/tb.php/924-2a05c3aa

 BLOG TOP 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。